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第28話 平和な日々に訪れる闇の気配

 『母の日』から数週間が経過した頃、エルナはレオとの生活を変わらず過ごしていた。


「レオくん、はいっ!」

「あいっ!」


 ボールのおもちゃで遊びながら、二人でまったりとした時間を過ごしている。

 最近はこうしてボールを返したり、投げたりとコミュニケーションもとれるようになってきており、遊びの幅がぐんと増えていた。

 これまでのお気に入りの遊びは積み木だったが、ここ数日はこの柔らかいボールをエルナと投げて遊ぶのが大好きなのである。


「いくよ、ほいっ!」

「あう~!」


 レオはエルナの投げたボールに手を伸ばすが、まだうまくとれない。

 エルナが転がったボールを拾いに行った時、丁度外からお昼の鐘の音が聞こえてきた。


「あっ! レオくん、今日もご飯食べる?」

「あうっ!」


 「ご飯」と聞いて嬉しそうに手足をバタバタさせたあと、近くのベッドにつかまると、ゆっくりとレオは立ち上がった。


(あ、今日も歩くかな?)


 レオはここ数日の成長によって、つかまり立ちするようになってきていた。

 ベッドの縁を必死に掴みながら、一歩一歩エルナへと着実に歩みを進めていく。


「レオくん、頑張れ!」

「うう……あう……」


 ゆっくりではあるがちょっとずつ前で進み、エルナの腕の中まであと少し。

 そして、ようやく彼女のもとまで一歩となった時、レオは彼女に向かって飛び込んだ。


「おわっ! レオくん、頑張ったね~!」

「きゃはははっ!」


 嬉しそうに身体を揺らしては、エルナに抱き着いて嬉しそうな声を上げる。


(ほんと、子どもの成長って早いんだな……)


 人間の子どもとは少し成長過程や成長速度は異なるが、愛情の大きさは変わらない。


「ああ、もうっ! 今日も可愛いんだからっ!」


「あうっ!」


 レオの頭を撫でて抱っこすると、そのままブランコのように揺らして遊んでみる。


「きゃはあははっ!」

「それ~! びゅ~ん!」


 レオを横向きに抱っこして部屋中をぐるぐる回ってみると、レオはこの上なく嬉しそうな声を上げている。


「鳥さんより早いぞ~!」

「あう~!」


 空を飛んでいく鳥のようにふわんふわんとレオを上げたり下げたりして、動かしてみる。


(結構しんどくなってきたな……)


 人間の子どもよりも精霊の子どもの体重は軽い。

 しかし、それでもずっと抱っこや上下運動をしていると腕にかなりの負担がかかる。


「はい、終わり~」

「ぶうっ!」

「怒っても駄目で~す! ほら、大好きなヨーグルトあるよ!」

「あうっ!?」


 抱っこをやめたことに抗議していたレオだったが、ヨーグルトがあると聞いて一気に機嫌がよくなった。

 自らハイハイして自分の椅子のところへ向かうと、早くの座らせろとエルナにせがむ。


「はいはい、ちょっと待ってね~」


 椅子につかまり立ちしているレオを抱き上げると、椅子に座らせた。

 そして、ヨーグルトにスプーンを入れると、レオに尋ねてみる。


「今日は自分で食べる?」

「ううん」


 スプーンを持たせようとしてみるも、今日は甘えたい気分らしく、それを押し戻して顔を背けた。


「あら、珍しい」


 エルナは持ってきていたいちごジャムとひとすくいヨーグルトに混ぜると、レオに一口運ぶ。


「あむ……うきゃっ!」

「美味しいね!」


 やはりジャムの中でもいちごジャムが特に好きらしく、これを混ぜた時はとびきりの笑顔を見せる。

 一口、もう一口とどんどん食べていき、あっという間になくなってしまう。


「はい、終わり~」

「うう~」


 まだ食べたそうにしているが、あまり多くやりすぎないようにしている。


(前にいっぱいあげたら、吐いちゃったんだよね……)


 人間の子どもと同じで一定量しか食事はできないらしく、多く食べすぎると吐き戻してしまうことが分かっていた。

 レオの場合はクラウスからの魔力供給もあるので、食事はあげすぎないように注意している。

 桃のジュースを飲んでいる途中に、レオの目がとろんとしてきた。


(あれ……眠たいのかな……?)


 レオは食事を気に入っているため、途中で眠ることは少ない。

 しかし、今日は直前でたくさん遊んでいたこともあり着かれていたのだろう。

 桃のジュースを大事そうに持ってうとうとと目をつぶりながら、頭が揺れ始めた。


(今日は朝からだいぶ遊んでたもんね)


 レオの場合は食事を無理に取らせる必要もないので、エルナはじっとレオの様子を見守ることにした。


 やがて、数分後──。

 コップに口をつけながら、そのままこくりこくりとし出して、ついに眠ってしまった。

 エルナは起こさないようにそっとコップをレオからとって、抱っこをする。


「あう……」


 その振動で少し起きるが、またすぐに眠る。

 静かにレオの背中をポンポンと優しい一定のリズムで叩くと、エルナの肩に顔を載せて気持ちよさそうに寝息を始めた。


(そっとベッドに連れていこう)


 エルナはそのままベッドまで向かうと、ゆっくりとレオを降ろした。


「あうっ!」


 レオが声を上げてエルナの服をぎゅっと握った。


(いますよ~ここにいますよ~)


 そうやって思いを込めながら、とんとんと叩くと再び眠りにつき始める。

 そして、ベッドに完全に寝かせると、そのまま布団をかぶせた。


「ふう……」


 エルナは肩を回して、うんと背伸びをした。


(なんだか私も眠くなってきたな……)


 一緒に隣で寝ようとした時、部屋がノックされた。


(あれ、誰だろう……)


 この時間はジュリエットもメイド長の仕事で宿舎のほうにおり、部屋にやって来ることは少ない。

 それにキルダートもクラウスの世話をしているため、向こうの部屋にいるはずだ。


 いったい誰だろうかと疑問に思いながら、扉を開けると、そこにはリリアがいた。


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