第17話 レオくん行方不明!?
布団や枕で見えないだけかと思い、ベッドまで近寄ってみるも、彼の姿はない。
「……え?」
エルナの心臓の音はどんどんうるさくなっていき、彼女の顔は青ざめていく。
(どこに行ったの!?)
ベッドのシーツをめくってみてもいない。誤って床に落ちてしまったのかと思ってベッドの下を覗いてみる。
エルナは部屋をくまなく捜索してみるが、どこにもレオはいなかった。
(どうしよう……どうしよう……)
混乱するエルナの心を大きな不安が覆い尽くしていく。
(まさか……)
窓から落ちたのではないか、と悪い予感を募らせて窓から下を覗いてみるが、レオの姿もなければ落ちた形跡もなかった。
(レオくん……!?)
動けないはずの彼がどこにいったのだろうか。
その思考が次に導き出した答えは、エルナもぞっとするようなものだった。
「まさか、誘拐……」
ここはヴァイラント公爵邸であり、護衛の数も多く警備もしっかりしている。
この短時間で外部から不審者が入り込んでレオを誘拐することは極めて難しいだろう。
しかし、エルナの心は焦りと恐怖に支配されており、そこまでの思考は追いつかなかった。
(急いでクラウス様に知らせないと!)
もしかして、彼のもとにいるのではないか。
ほんのわずかな希望を持って彼女はクラウスの部屋の扉をノックした。
「クラウス様、エルナです!」
「ああ、入れ」
エルナは急いで部屋に入ると、クラウスや部屋をきょろきょろと観察する。
彼女の尋常じゃない汗の量と青ざめた顔色を見たクラウスは、何か緊急事態が起こっているのだとすぐに理解した。
「何があった」
レオのことで頭がいっぱいだったエルナは、その言葉にハッと顔を上げた。
「クラウス様、レオくんは……」
「レオ? ここにはいないが」
彼の言葉はエルナの中にあったわずかな希望を打ち砕くのに十分だった。
(そんな……じゃあ、やっぱり誘拐……?)
エルナはクラウスに駆け寄ると、手で勢いよく机を叩いて身を乗り出して言う。
「レオくんが、いなくなったんです!」
エルナのその言葉を聞き、彼はペンを置いて顔を上げた。
「なんだと」
彼女の焦りようから発言が冗談ではないと判断したクラウスはエルナに告げる。
「状況を説明しろ」
「は、はい……キッチンへ片付けをしに行っていって戻った時には、ベッドの上にいたレオくんがいなくなっていて……あの、その……」
「落ち着け」
「でもっ! 誘拐されてたとしたら……!」
クラウスに伝えていくうちにエルナの気持ちがどんどん高ぶっていく。
不安と恐怖、焦りに襲われて彼女の肩や唇は震えて、青い瞳からは大粒の涙が溢れ出した。
「レオくんが……私のせいだ……」
彼女は両手で顔を覆って、後悔の念を呟いていく。
「私、レオくんに怒っちゃって……うまくいかないことにイライラしちゃって……それで……だから、もしかしたら私のことが嫌いになって精霊の力で出て行ってしまったのかも……そうじゃなくても誘拐されちゃったとしたら、目を離した私のせいです……」
エルナはクラウスに向かって頭を下げ続ける。
「私のせいです。申し訳ございません」
エルナの目は涙で腫れて赤くなっており、謝罪の言葉を口にするその唇は大きく震えている。
何度も何度も謝罪を続ける彼女に、クラウスが近づいていく。
(叱られる……!)
彼女はクラウスからの叱責を覚悟した。
しかし、彼の手はエルナの目尻に伸びて、その涙を優しく拭う。
「クラウス様……?」
「ここはヴァイラント家で最もセキュリティの高いエリアだ。そんなところへ外部から短時間で忍び込むのは難しいだろう。誘拐の可能性があるとすれば、内部犯、つまりこの屋敷の人間ということになるだろう」
「このお屋敷の、誰か……」
「俺の部屋やお前の部屋付近は主にキルダートとジュリエットしか近づかない。あいつらが誘拐することはないだろう。だから、確かめにいく」
「確かめに……?」
「ああ」
クラウスはエルナにそう告げると、部屋を出ようと歩き始めた。
そして、直前で振り返ってエルナに声を掛ける。
「ついてこい」
「え? は、はいっ!」
エルナは指示通り、彼について部屋を出てついていく。




