第7話「購買戦争と、詩的なパンの選び方」
今回は、購買で繰り広げられるパン争奪戦!
でもそこに、詩音先輩の“詩的介入”が!?
食べ物にも詩は宿る…らしいです。
お昼休み、チャイムが鳴ると同時に、教室から人々がなだれ出る。
さくら坂高校名物、購買パン争奪戦の幕開けである。
「今日は絶対、焼きそばパンを勝ち取る!」
佐倉まどかは拳を握りしめ、やる気満々。
「私はカレーパンがあればそれで…」
風見さつきは淡々とした表情。
「こよりはあんぱんが好き〜」
白鳥こよりはのんびり構えていた。
三人が購買に向かおうとした、その時。
――購買前に、謎の行列ができていた。
「……え? 詩音先輩!?」
そこにいたのは、購買の前で手作りの詩を掲げる夜凪詩音だった。
「パンを選ぶにも、心の指針が要るだろう? 各パンに詩を添えてみた」
見れば、全てのパン棚の上に、短冊のような詩が吊るされている。
焼きそばパン――
「混ざり合う 味と情熱 ひとときの宴」
あんぱん――
「甘き想い 君のほほえみ 粒あんに似て」
メロンパン――
「宇宙の模様 かための希望を 君に贈る」
「購買前でポエム解説してる場合じゃないでしょ!」
さつきがツッコむ。
「というか、焼きそばパンあと2個しかないよ!!」
まどかが焦る。
「急がないとあんぱんも…!」
こよりがすでに小走りで列に向かう。
そのとき、購買のおばちゃんが困ったように言った。
「なんかねぇ、詩のせいでパンを選ぶのに時間かかっちゃって。進まないのよ」
「詩に悩んでる間に売り切れるとは、これもまた一興……」
詩音が遠くを見るように言う。
「いやいやいや!!」
三人組が揃ってツッコむのだった。
なんやかんやで、こよりは最後のあんぱんをゲット。
さつきは意外と人気のなかった枝豆チーズパンを選び、
まどかは……焼きそばパンを詩音先輩と半分こする羽目に。
「詩の味も、分け合うことで深まるのさ」
詩音が静かに言った。
「いや、普通に一個食べたかったよ私は…!」
今日の一句:
「焼きそばに 詩を添えたら 腹が減る」
ポエムとパンと笑いの午後。次回もお楽しみに!