第50話「文学少女、またなんかやらかして締めてくる」
やらかし続けた文学少女・詩音先輩。
第1期最終話では、全校朝礼という真面目な舞台で、まさかの“本気の贈る詩”を披露――
まさか、感動で終わるとは……。
春の気配が漂い始めた朝。
今日の全校朝礼は、卒業生を送るセレモニーらしい。
生徒たちはぼんやりと体育館に集合し、
壇上では校長先生が、例によって長めのありがたい話をしている。
……その最中。
突然、壇の袖から現れたひとりの女子生徒。
そう――我らが詩音先輩だった。
「しっ、詩音先輩!? なにしてんの!?!?!」
「まさか……朝礼に乱入……!?」
「最終話にして校長に挑むつもりか!!?」
校長先生が一瞬だけフリーズしたその隙をついて、
詩音先輩はマイクの前に立ち、ふかぶかと一礼した。
「卒業生の皆さんへ、私から“贈る詩”をお届けします」
「今、この瞬間にしか響かない、ことばを」
ざわつく会場。教師陣もあわててマイクを切ろうとするが――
「卒業って、きっと 涙じゃなくて
背中を押す 透明な風です」
「机に残った落書きも
遅刻ギリギリで駆け込んだ教室も
小さなケンカも バカみたいな笑い声も」
「全部、ちゃんと“時間”の中で
あなたのこと、育ててました」
「だからもう、大丈夫です。
振り返らなくても、ここに
ちゃんと、あなたがいた証拠はあります」
――静まり返る体育館。
卒業生の中に、こっそり涙をぬぐう生徒もいた。
先生がようやくマイクを止めたとき、
詩音先輩はもう、ぺこりと一礼して退場しようとしていた。
「……待って、先輩! なんでそこまで、全力でやるんですか!」
こよりが叫ぶと、詩音先輩は振り返ってにっこりと笑った。
「だって、卒業生って、ちゃんと物語の主人公じゃないですか」
「せめて最終話くらい、詩で飾らなきゃって思って」
そして彼女は、教壇の影に消えていった――
まるで、物語のページを閉じるように。
……そのあと、校長先生が少しだけ目を潤ませながらこう言った。
「……あの詩を、今日の式辞ということにします」
場内、拍手。
最終話にして、まさかの感動で締めてきた文学少女。
彼女の“やらかし”は、たしかに今日、
全校生徒の胸にちゃんと刻まれたのだった。
今日の一句(卒業ver):
「最終話 やらかしじゃなく 名場面」
ご愛読ありがとうございました!
第2期『文学少女、やっぱりまたやらかしてる』、開幕準備中!




