第40話「詩音先輩、美術室で“絵に添える詩”展を勝手に開催」
詩音先輩、今度は美術室で“勝手に詩展”を開催。
絵の世界に、言葉の魂を吹き込んでいきます。
昼休み、美術室の扉に貼られた紙が、こよりたちの目を引いた。
【臨時開催】
「詩を添えることで、絵は語りはじめる」展
~あなたの筆が黙っていられなくなる前に~
「うわあ……また詩音先輩、勝手に何か始めてる」
「『勝手に』がもうデフォなんよ」
「今回は美術室に手を出したか……!」
中に入ると、美術部の作品たちに手書きの詩が添えられていた。
貼られているのは、あの先輩特有のすらすら丸文字のポエム。
『冬の猫』という水彩画に――
「君はこたつに入らない、
入ってしまうと出られなくなるから」
『交差点の夜』という鉛筆画に――
「行き先を知らなくても、
赤信号だけは守っていた私たち」
「うわ……めっちゃそれっぽい!
この猫の寂しさ、3割増しくらいになってない!?」
「っていうか、美術部も許可したのかなこれ」
すると奥から美術部部長の杉浦さんが登場。
なぜかニコニコしている。
「詩音先輩に絵を“読まれた”って感じで、みんな逆に喜んでて……」
「“読まれた”って言い方怖いな!?」
「詩音先輩の詩がつくと、絵の奥にストーリーが生まれるっていうか……」
ちょうどそのとき、ひとりの美術部員が、
こよりたちが見ている前でスケッチブックを持ってきた。
「これにも何か詩、つけてください!」
「よろこんで」
詩音先輩は一瞥すると、さらさらと書きつける。
『白いイスと空の窓』
「誰も座らない場所がある、
誰かを待っているからだ」
美術部員、うっすら涙ぐんでた。
「……先輩、さすがに詩の威力強すぎるんじゃないですか?」
「絵は見るものですが、詩は感じさせるものです。
だから重ねると、どちらも一歩、深くなるんです」
その日、校内で一番静かな美術室が、
静かに“詩の展示会”の中心になっていた。
たった数行の言葉が、絵に命を与えてしまう。
それが詩音先輩の“やらかし”だった。
今日の一句(美術ver):
「色のなか 言葉ひとつが 灯をともす」
次回、詩音先輩――校内放送に乱入して、“五七五だけの昼のお知らせ”を敢行!?
俳句だけで伝わるのか!? 放送室がカオス回です!




