第39話「詩音先輩、理科室で“詩×化学反応”の即興実験を始める」
理科室がまさかの詩ラボに!?
詩音先輩、言葉と試薬を混ぜて何かが爆発しました。たぶん心。
放課後、理科準備室の前。
こより・すず・ゆいの3人が眉間にしわを寄せていた。
「……ここ、なんかいつもより詩のにおいがしない?」
「うん。理科薬品の刺激臭と、詩音先輩の香水が混ざってる……」
「ていうか、先輩なんで理科室にいるの!?」
中をのぞくと、そこには白衣を着た詩音先輩。
なぜかゴーグルをつけて、試験管を振りながら笑っていた。
「科学と詩の融合――
それが“リアクション・ポエム実験”です」
「化学反応と詩を混ぜちゃダメでしょ!!!」
「ていうか爆発しそうなんですけど!?」
説明しよう(詩音先輩いわく)。
今日は、生徒たちの“感情のキーワード”を試薬名に見立てて混ぜ合わせ、
どんな“詩的化学反応”が起こるかを見る授業(非公式)らしい。
「例として――“孤独酸”に“笑い水”を混ぜると……」
ボフッ
試験管から泡があふれ、
詩音先輩はサッと短冊にメモを書き始めた。
「笑われてもいいと思った日、
それは自分の孤独を許せた日」
「……なんかいい感じになってるの悔しい!!」
こよりたちもやってみることに。
すずの組み合わせは「眠気亜鉛」+「音楽反応液」。
→結果:やたらスローテンポな泡と共に
「音の波に、まぶたが降伏する」
ゆいの組み合わせは「怒りヨウ素」+「友だちバッファ液」。
→結果:ちょっと爆発音
「怒ったふりして、本当は笑ってほしかったんだよ」
「ねえ、地味にみんなポエムの才能あるのやめて?」
最後にこよりが混ぜたのは――
「照れカルシウム」+「青空抽出液」。
試験管の中で、淡い水色の泡がぽこぽこと弾ける。
「青空を見上げたら、
君の名前がすぐに出てきた。
……それがちょっと悔しい午後」
「……ちょっと待って、それガチじゃない!?」
「誰!?誰を思い出したの!?」
「詩音先輩、こよりから何を引き出してるのよ!!」
実験はすべて終了。
理科室の空気は甘い香りとちょっとした爆発臭に包まれていた。
「科学も詩も、混ぜることで世界が変わるのです」
詩音先輩は満足げに、試験管を光にかざした。
その中には、確かに“心の変化”が詰まっていた――気がする。
今日の一句(化学ver):
「混ぜたらね ちょっとだけ好きが こぼれ出す」
次回、詩音先輩――美術室で“絵に添える詩”展を勝手に開催!?
キャンバスが詩人のフィールドになる回、開幕です!




