第37話「詩音先輩、図書室で“本と交換できるポエム”フェアを開催」
詩音先輩、今度は図書室に進出!
「本とポエムの物々交換」という誰も思いつかない施策をやってのけました。
昼休み、静まり返った図書室。
本を探しにきたこよりたちは、入口に立てられた奇妙な立て札を見つける。
「本を借りたい方は、ポエム一篇をお納めください」
「……え、通行料的なやつ??」
「また詩音先輩でしょ!?」
予想通り、カウンターには詩音先輩。
司書の先生も半笑いで見守っている。
「本にはことばが詰まっています。
なら、借りる際にもことばで返礼を――それが“詩の交換制度”です」
「本屋じゃないからね!?これ図書室だからね!?」
ルールはこうだ。
好きな本を借りるには、その本を読んで感じたこと、あるいは今の心情を短いポエムにして提出する。
すでにカウンターの横には、“返礼ポエムBOX”が設置されていた。
中をのぞくと、たくさんの生徒たちの詩が集まっていた。
『星の王子さま』
「たいせつなものは、閉じたページのなかにまだ光ってた」
『走れメロス』
「走る理由は愛だった。
……でも私は体育が嫌いです(泣)」
『保健の教科書』
「心も身体も、ときどき読み直したくなる」
「地味にセンスあるの多くて悔しいんだけど!?」
詩音先輩は、集まった詩を読んではうなずき、時々ニッコリ。
「皆さんの“ことば”は、きっとまた別の誰かが読む物語の鍵になります。
言葉は循環するんです。ページのように」
こよりも渋々、好きな絵本を借りるため、詩を書いて提出した。
『ぐりとぐら』
「たまごのカステラ、思い出はふわふわの味」
「……よし、借りていいわ。これは良ポエム」
「なんで詩音先輩にジャッジされなきゃいけないの!?」
図書室はその日、ほんのり静かで、やさしい笑いに包まれていた。
文字の海の中で、誰かの詩がまた新しい物語を開く――
今日も文学少女は、静かな嵐を本のあいだに起こしていた。
今日の一句(図書室ver):
「読むたびに ことばと心が 貸し借り中」
次回、詩音先輩――屋上で“雲の名前に詩をつける”空想天気予報回!
雲ひとつで校内が詩的にざわつく!? 空の詩人、現る!




