第36話「詩音先輩、体育館で“走る詩”の授業を始める」
今回はまさかの体育コラボ回!
詩音先輩、体力テストも文芸的に変えてしまいました。これもう革命では?
「次の授業、体育だよー。走りたくないなー」
「全員、気合入れろー!今日は持久走だー!」
体育館に入ったこよりとすず、ゆい。
そこに、なぜか短パンジャージ姿の詩音先輩が――
「本日は、“走る詩”の時間です」
「体育に詩人が混ざってるのおかしいでしょ!?」
どうやら詩音先輩、体育教師と組んで新たな授業を考案したらしい。
名づけて、“走りながら思いついた言葉を詩にする”ワークアウト。
「息が切れても、心は動く。
走るという行為は、内なることばを呼び起こすのです」
「……いや、それ普通ゼーゼー言って終わるやつだから!?」
授業開始。
生徒たちはぐるぐる体育館を走らされ、途中で手渡されるのはなんと“詩メモカード”。
「苦しい時こそ、自分に浮かんだ言葉を!」
「そんな余裕ないです!!(全員の心の声)」
それでも、走り終えた後には――
「息が苦しい。でも、生きてるって感じがする」
「何も考えられない時間が、逆に大事なのかも」
「もうダメだと思ったけど、足だけは勝手に動いてた」
「……なんか、意外と詩になってる?」
詩音先輩はそれらのメモを読み上げ、体育館の真ん中でまとめ始めた。
「走ることは、心の言い訳を振り切ること。
遅くても、苦しくても、前に進んでいたあなたが、
今日のいちばんの詩でした」
体育教師もうなずく。
「この子、マジで体育にも文学持ち込んでくるな……」
運動が苦手なすずも、最後には小さな詩を残していた。
「走るの苦手。でも友だちが笑ってくれた。
それが私のゴールです」
……なんか、今日の体育、すごくあったかかった気がする。
体育館に吹く風すら、どこかやさしくなった午後。
文学少女はまたひとつ、学校の常識を走って飛び越えた。
今日の一句(体育ver):
「走るたび ことばも一緒に 汗になる」
次回、詩音先輩――図書室で“本と交換できるポエム”フェアを開催!?
貸出条件:一篇の詩を置いていってください!




