第35話「詩音先輩、保健室で“心の処方箋”を配り始める」
詩音先輩、今度は保健室で“心の処方箋”を配り始めました。
病んでなくても来たくなる、保健室史上最も癒し特化な回です。
「頭が痛い……テスト勉強のせいで完全に脳がオーバーヒート……」
こよりが保健室のドアを開けると、そこにいたのは――
「ようこそ。
本日は、心の処方箋をお配りしております」
「詩音先輩、なにやってんのーー!?」
保健の先生の隣に立つ詩音先輩。
白衣姿で、処方箋ならぬ「詩方箋」を手に持っていた。
「身体だけでなく、心にも“ちょっとした手当て”が必要ですから」
「いや、それを詩でやるの!?」
ベッドで寝ている生徒、ただぼーっとしに来た生徒、
みんな詩音先輩から一枚のカードを受け取っている。
こよりにも渡された、その“詩方箋”には、こう書かれていた。
「疲れたときは、立ち止まっていい。
花も風も、止まってる君をちゃんと見ている」
「え、なんか癒された……」
別の生徒が受け取ったカードには、
「泣きたいときは、泣いてください。
それは水やりと同じです。心に、やさしく」
そして、たまたま通りかかった体育会系男子には、
「今日も君の声が、空に響いてた。
それだけで、なんだか嬉しい」
「お、おれ!? 俺のこと書かれてる!? え、尊い……」
生徒たちはひとり、またひとりと詩方箋を手に取り、
笑顔で保健室を後にしていく。
保健の先生がぽつり。
「こんなに人が来たの、インフル流行ったとき以来だわ」
「風邪より詩のほうが伝染力あるってどういうこと……」
こよりは帰り際、ふと詩音先輩に尋ねた。
「詩音先輩、あなたは疲れたとき、どうしてるの?」
すると、彼女は窓の外を見ながら、やさしく微笑んだ。
「風の音に、耳を澄ませます。
それだけで少し、“わたし”が戻ってきますから」
……それ、めちゃくちゃ詩人らしい回復法!!
こうして今日も、文学少女は誰かの心をそっと包みながら、
保健室に“優しい嵐”を巻き起こしていた。
今日の一句(保健ver):
「心にも 包帯よりも ことば貼る」
次回、詩音先輩――体育館で“走る詩”の授業を提案!?
走って転んでポエムが生まれる、謎のスポーツ文芸革命!




