第34話「詩音先輩、校庭で“詩凧(したこ)”を空に飛ばす」
詩音先輩、ついに凧まで使って詩を届け始めました。
空×詩=校庭のカオス度がじわっと上がる回です。
昼休み。
こよりが中庭のベンチでパンをかじっていると、突然空に何かが舞い上がった。
「……え、凧?」
その凧には、筆で書かれた詩のような文字が――
「風の声、空の手紙。
今日も君に届きますように」
「まーた詩音先輩ーーー!!!」
校庭には、詩音先輩が風に髪をなびかせながら凧糸を握っていた。
その横では、数人の生徒たちが思い思いの「詩凧」を持ち、空を見上げている。
「今回は、“空に詩を飛ばす会”です」
「またなんかやってるーーー!!(2回目)」
凧のテーマは「風に届けたいひとこと」。
参加者たちはみんなで凧に詩や言葉を書き、それを空へと解き放つ。
風に乗って舞い上がった凧の数は、すでに十枚以上。
「君が笑ってくれる、それだけで世界は青い」
「あの日の涙、今の風に変わったよ」
「宿題やってません、空に逃げました」
「なんか最後の一個、私の心を代弁してる……!」
詩音先輩の凧は特に大きく、美しい曲線で空に舞い続けていた。
そして、彼女の凧に書かれていた詩はこうだ。
「空はひとつ。
でも、見上げる角度はみんな違う。
だからきっと、今日も誰かに届く」
「……なんか、空見て泣きそう……」
「なんで凧揚げでこんなエモくなるの!?」
気づけば校庭には、クラスも学年も関係なく、生徒たちが笑いながら空を見上げていた。
体育教師だけが遠くで、
「なんで俺の授業時間にこんな詩の祭りが……」とつぶやいていたのはご愛嬌。
空高く舞う詩凧。
今日も詩音先輩は、校内の“空気感”を詩にしてしまうのだった。
今日の一句(空ver):
「風よりも 心軽くて 空を舞う」
次回、詩音先輩――保健室で“心の処方箋”と称して詩を配り始める!?
病んでなくても癒される、謎の“文学ナース化”始動!




