第32話「詩音先輩、音楽室で“言葉と音の即興ライブ”を始める」
詩音先輩、今回は音楽室をライブ会場に変貌させました。
ピアノ×詩というまさかの組み合わせが、なぜか成立してしまうのがこの人のすごさ……!
放課後の音楽室。ピアノの音が、廊下にふわりと流れていた。
中を覗くと、ピアノを弾いているのは――
「って、詩音先輩だーーー!!!」
またもや登場、文学少女・夜凪詩音。
しかも今日は、音楽教師とピアノの前に並んで、なにやら真剣な面持ち。
「本日は、“即興言葉ライブ”を開催いたします」
「なにその謎イベント!?」
どうやら、先生が即興でピアノを弾き、それに合わせて詩音先輩が“即興で詩”を朗読するらしい。
「言葉と音のセッションよ。
楽譜のない、心のままの協奏曲」
「どこでそんな言い回し覚えたの……」
生徒たちはぞろぞろと集まり始め、音楽室はにわかにコンサートホール状態に。
ピアノが、軽やかに、あるいは静かに旋律を奏でるたび――
詩音先輩の声が、それに寄り添うように響く。
「風がゆく。
きみの髪を、記憶のページを、めくりながら」
「答えのない問いでも、問い続けることが、
きっと、音になる」
「あなたの沈黙には、意味がある。
だれかが、聞こうとしているから」
……音と詩が、こんなに合うなんて。
いつの間にか、こよりたちも言葉を失い、聞き入っていた。
「これ、すごいね……本当にコンサートみたい」
「なんかもう、詩音先輩が“詩”を楽器にしてる……」
演奏の終わり。
静かに一礼する詩音先輩と先生に、拍手がぱらぱらと、そしてしっかりと起こる。
「また、音楽とことばの夜会を、どこかでお届けします」
「どこかって、次どこでやるつもりなのーー!?」
とはいえ、
今日だけは誰もがちょっと、詩の“音色”に酔いしれていたのだった。
今日の一句(音楽ver):
「音よりも 静かな言葉が 心鳴らす」
次回、詩音先輩――家庭科室で“お菓子に詩を添える”スイーツ会!?
食べる前に、まず“味わう言葉”を召し上がれ!




