第31話「詩音先輩、図書室で“言葉の迷宮”を開催する」
詩音先輩、今回は“図書室で謎解き”です。
本棚の迷宮にちりばめられた言葉のかけら――文学少女、じんわり侵略中。
昼休み。校内放送が静かに響く。
「図書室にて、“言葉の迷宮”を開催中。
本棚の中に、言葉が隠れています。
すべてを見つけた者には、“心のしおり”を贈呈します」
「また始まったーー!!!」
こよりの叫びが教室に響いた。
今回の舞台は図書室。
詩音先輩は、図書室中の本棚のあちこちに、短い詩の書かれたメモを隠したらしい。
「図書室の先生もよくOK出したね……」
「むしろ『図書離れを防ぐいい機会』って大喜びだったらしいよ……」
詩音先輩が撒いた“言葉のかけら”は、全部で七つ。
・文学棚の間に貼られた一枚目の詩
「物語は、君のとなりにも棲んでいる」
・辞書の中にそっと差し込まれていた二枚目
「意味は、ページの間で眠っている」
・児童書コーナーのくまのぬいぐるみに抱かれていた三枚目
「忘れられた本にも、まだ声はある」
・歴史書の棚の裏に隠された四枚目
「過去を知ることは、未来への地図を描くこと」
・閉架書庫の前に置かれた木箱の中の五枚目
「開かない扉こそ、言葉は叩く」
・本棚の上に吊るされた六枚目
「上を見よ。本の森は、空まで続く」
・最後の七枚目は――貸出カウンターの下に忍ばせてあった。
「そして君自身が、まだ読まれていない一冊だ」
「えっ、最後だけ名言感すごい……」
図書室に集まった生徒たちは、静かに、でもどこか楽しそうに“言葉探し”をしていた。
「……なんだろう。
ただの紙切れなのに、見つけると嬉しくなるの、不思議だね」
こよりも思わず見とれてしまうほど、
図書室は、まるで“静かな冒険の森”になっていた。
そして、すべての詩を見つけたこよりのもとへ、詩音先輩が小さなしおりを差し出す。
それにはこう書かれていた。
「ページの隙間に、君のまなざしが灯りますように」
「……ねえ、これ、詩音先輩のやらかしの中で、
一番やさしいやつじゃない……?」
今日の一句(図書室ver):
「しおりとは 本に挟むより 心挟む」
次回、詩音先輩――音楽室で“言葉と音の即興ライブ”を始める!?
言葉×旋律=想像を絶する詩音ライブの幕が上がる――!




