第30話「詩音先輩、美術部で“言葉の絵”を描き始める」
詩音先輩、美術部をもジャック!
“絵を描かずに絵を描く”という、逆転の発想でやらかしました。
放課後、美術室。
油絵の具のにおいと静かな音楽が流れる中、美術部員たちがキャンバスに向かっていた。
そこへ――
「こんにちは、詩の者です」
「いや、なにその自己紹介ーーーッ!!」
突如現れた詩音先輩、白いエプロンを身につけ、スケッチブック片手にど真ん中のイーゼルへ。
「今日は、“詩で絵を描く”という挑戦をしに来ました」
「え、筆は? 絵の具は? キャンバスは?」
「わたくしの筆は“言葉”、絵の具は“心”。
キャンバスは――みんなの想像力です」
「抽象的すぎて何もわからんーー!!」
それでも、なぜか美術部の顧問・秋山先生は乗り気だった。
「いいじゃないか。芸術ってのは、境界を壊すところから始まるものだよ」
「え!? 校長に続いて美術の先生も詩音先輩派!?」
そして始まる“ライブ詩画”。
詩音先輩はスケッチブックに向かって、次々に言葉を綴る。
「青という色は、孤独じゃない。
実はそれ、誰かに会いたい気持ちの裏返し」
「赤は怒りじゃない。情熱。伝えきれなかった好きの残像」
「白は空白ではなく、“これから”で満ちている」
その言葉を聞きながら、美術部員たちは、それぞれのキャンバスに筆を走らせる。
色も形も違うのに、なぜかどの作品もどこか詩音先輩の詩を映しているようだった。
こよりたちも見学に来て、ぽつり。
「なんか……詩って、“描かれる”んだね……」
「ていうか、詩音先輩が来ると、部活動がだいたいアートになるのすごくない?」
ちなみに、詩音先輩本人の“完成作品”は――
画用紙に、こう一行だけ書かれていた。
「この白さに、あなたは何色を感じますか?」
「いや描いてないじゃん!!
キャンバスにただの“問い”投げてるだけじゃん!!」
しかしそれすら、見た人をざわつかせ、考えさせる。
――それが、詩音流アート。
今日の一句(芸術ver):
「描かずとも 伝わる世界が ここにある」
次回、詩音先輩――図書室で“言葉の迷宮”を開催!?
図書室の棚を舞台に始まる、“言葉を辿る宝探し”!




