第29話「詩音先輩、保健室で“癒しの詩”セラピーを始める」
今回は保健室で“詩の処方”。
静かな詩音先輩のやらかしが、今回はじんわり効く系でした。
体育のあと、軽く転んで膝をすりむいたこよりは、保健室へ。
「すみませ〜ん、ちょっと消毒だけお願いしま〜す……」
がらりと扉を開けると、そこには白衣の保健室の先生と――
「……深呼吸して、心の扉を開けてください。
この言葉が、あなたの痛みに寄り添うように――」
「詩音先輩またいるーーーっ!!?」
しかもベッドの隣には、やや顔色の悪い男子生徒。
「頭が痛いって来たら、詩音先輩が詩で治してくれるって言い出して……」
「詩は薬。副作用は多いけど、時に効能もあるのよ」
「こえええ!! 詩を副作用って自覚してるぅぅ!!」
保健室の先生は、苦笑しながら説明した。
「実はね、最近“癒しの言葉を聞くだけで落ち着く”って子が増えてて……
それで、夜凪さんに協力してもらってるのよ」
「つまり、詩によるカウンセリング!?」
詩音先輩はスケッチブックを開き、静かに詩を紡ぐ。
「風の音を聴いて。
それは世界の呼吸。
焦らなくていい。眠るように、生きていけばいい」
……なんか、効いてるっぽい。
男子生徒「あ、頭痛、ちょっとマシになったかも……」
こより「え、ほんとに!?」
詩音先輩はにこりと微笑む。
「人は、“わかってもらえた”と思うだけで、少し元気になれるのよ」
「なにその正論、詩人のくせにやけに実用的!?」
しかも――
その日から保健室の前に、「癒しの詩・受付中」の小さな立て札が立ち、
訪れた生徒たちが順番に「詩セラピー」を受けていくように。
「うわ、なんか本格的に始まっちゃったよ……」
だが、帰り道。
「……今日の詩、なんかすごく沁みた」
「“焦らなくていい”って、誰かに言われたかったのかも」
そんな声が、あちこちから聞こえてきた。
「……やっぱ詩音先輩って、ただのヤバい人じゃないのかも」
いや、やっぱりヤバいけど。
でも、ちょっとだけ優しいヤバさなのかもしれない。
今日の一句(保健室ver):
「副作用 あるけど効くよ 詩セラピー」
次回、詩音先輩――美術部に乗り込み、“言葉の絵”を描き始める!?
筆じゃなくて詩で描く、キャンバスに広がる“謎の世界”とは!




