第28話「詩音先輩、朝の校内放送を詩でジャックする」
朝の放送×詩=最初はカオス、だんだんクセになる。
詩音先輩、もはや生活インフラになりつつあります。
ある日の朝、校内放送のスピーカーから、いつものBGMが流れる――
……はずだった。
しかしその日、スピーカーから流れてきたのは、
「おはよう。今日も世界は、君の知らないページをめくる」
「……あれ? え、誰??」
「……え、これ、詩音先輩の声じゃない!?!?」
そう、放送室を“合法的”に借りて、詩音先輩が朝の詩朗読をしていたのだ。
「遅刻に追われる足音も、眠気に沈むまぶたも、
すべては今日という舞台の、第一幕――
さあ、ページを開け、君だけの物語を」
「……詩音先輩、校内放送で一人ポエム劇場やってるうぅ!!」
一方、放送室では――
「本日は特別に、“朝の一詩”をお届けしております」
と、まるでNHKのラジオ番組のようなテンションで、落ち着き払う詩音先輩。
隣にいた放送委員・井ノ原さんが震え声でつぶやいた。
「こ、これ……ほんとにアリなの……? いつから放送委員に詩人枠なんて……」
詩音先輩は答える。
「言葉とは、目覚ましよりも強いエネルギー。
脳を揺らすには、詩が一番よ」
「揺れるのは脳というより精神なんだけど!!」
その日から、なぜか“朝の一詩”が数日続くことに。
生徒たちの反応はというと――
「今日の詩、意外とよかったな。朝のテンションに合ってるかも」
「聞き逃すとちょっと損した気分になるの、なんでだろう……」
「昨日の“君の靴紐は人生の伏線”ってやつ、地味に好きだったわ」
徐々に、校内で謎の中毒性を持ちはじめる“詩音放送”。
そして今日の詩は――
「傘を忘れても、言葉を持て。
雨は君を濡らしても、詩は心を守ってくれる」
「いや、傘は持てよ!!!」
とはいえ、誰もがちょっとだけ、朝の放送を楽しみにしはじめていた。
こよりは、教室でぽつりとつぶやく。
「……たぶん、詩音先輩って、
“空気を乱して空気にする”天才なんだよね……」
今日の一句(放送ver):
「詩を聞き 始業チャイムに 哲学を」
次回、詩音先輩――保健室で“癒しの詩”セラピーを始める!?
病は気から、詩もまた気から――!?




