第26話「詩音先輩、文化祭で一人詩劇を企画する」
詩音先輩の文化祭は、まさかの“全詩台詞”演劇。
理解できるかどうかではなく、心が揺れたら勝ち――そんな空気、なんかズルい!
文化祭の準備が始まり、各クラスが模擬店や展示の企画を立てていた。
「うちのクラスはカフェでいいんじゃない?」
「テーマは“映え”! パフェとドリンクに全振りしよう!」
そんな中――黒板の前に、黒マントを羽織った人影が立った。
「……みなさま、ご静聴を。わたくし、夜凪詩音は提案があります」
「で、出たーー!! 詩音先輩の爆弾提案!!!」
「我がクラスは、“詩劇”をやるべきです」
「何その聞いたことないジャンル!?」
詩音先輩いわく、
詩劇とは――すべての台詞が詩で構成された演劇らしい。
「つまり、普通の演劇じゃないってことだよね……?」
「じゃあどんな感じになるの?」
すると、詩音先輩がその場で即興の導入部を披露した。
「この教室は舞台。私は、風に追われる影。
あなたは――まだ言葉を知らない観客。
さあ、“心”の幕をあげましょう……」
「観客が置いてけぼりになる未来しか見えない!!」
にもかかわらず、生徒たちはなぜか乗り気になっていく。
「意外と新しくてアリじゃない?」
「むしろ攻めててウケるかも!」
かくして、演目は《一人詩劇『孤独の中で光る君へ』》に決定。
出演者:夜凪詩音(ただ一人)
「え、一人芝居!?!? どこまでも詩音先輩劇場!?!?」
本番当日。
薄暗い舞台、音楽もBGMもなし。
ただ、詩音先輩の声だけが静かに響く。
「孤独とは、他人が去った静けさではない。
自分の声に、耳を塞いだ瞬間。
でも私は、君を信じている。
この“詩”が届くと、信じている」
会場――静寂。だが誰も帰らない。
「なにこの空気……意味わからないのに……なぜか……泣きそう……」
「こんなの、詩音先輩にしかできないよ……!」
拍手は、最初ひとり。
けれど、それは徐々に広がって――やがて全員に。
「……なんだこの謎感動!?」
こよりたちは肩をすくめて笑う。
「ま、文化祭だし。これぐらいブッ飛んでる方が、詩音先輩らしいよね」
今日の一句(文化祭ver):
「詩を聞き 意味はわからぬ でも泣ける」
次回、詩音先輩――校内新聞のインタビューで校長に詩をぶつける!?
広報活動のはずが、まさかの思想バトル勃発!




