第23話「詩音先輩、抽象画に魂を塗る」
今回は文学少女が美術室に侵攻!
言葉を失うような絵画と、タイトルで逆に言葉を増やしてくる新感覚アート爆誕です。
「今日は美術の授業で自由制作です」
美術教師・葉山先生の声に、教室がゆるくざわめいた。
「うわぁ〜、自由って逆に困るやつ……」
「私、またリンゴ描いちゃいそう……」
そんな中、ひとりだけ目を輝かせて立ち上がった少女がいた。
「来たわね……キャンバスという白詩!!」
詩音先輩だった。
「え、美術得意なんですか……?」とこよりが訊くと、
「絵画とは、言葉を持たぬ詩――
すなわち、沈黙が語る文学よ」
「もうその時点で意味がわからない!!」
詩音先輩は筆を持ち、すっと絵の具に浸す。
最初に塗られたのは――真っ黒な線。
そこに青、赤、金、銀……と、次々に謎の色がぶつかり合う。
「え、これ……戦争? 爆発? 夢の中……?」
「ていうか、タイトル何にするつもりなんだろ……?」
完成した詩音先輩の作品は、黒と赤がうねり、中央に金色の点が浮かぶ、
いかにも**“深読みしてほしそうな絵”**だった。
そして提出された作品タイトルは――
『混沌の内臓に宿る月』
「タイトルが不穏すぎる!!!!」
「内臓って何!? 月ってどこに!?!?」
葉山先生がしばらく沈黙したあと、静かに言った。
「……うん、これは……その、自由な発想だね……」
「先生、困ってる〜〜〜!!」
放課後、美術室の片隅で。
詩音先輩がぽつりとこよりたちに言う。
「言葉で描けない感情って、あるでしょ?
それが、私の中で爆発して絵になったの」
「う、うん……なんか……うん……」
まどかがそっとつぶやいた。
「こうしてまた一つ……我が校の展示がカオスになるわけだね……」
今日の一句(美術ver):
「抽象画 意味はないけど 意味がある」
次回、詩音先輩――家庭科の授業で料理にポエムを添える!?
食べる前に詠む、それが詩音スタイル!




