第21話「詩音先輩、進路調査票に詩を添える」
進路調査票、という現実の重さに、詩音先輩の文学が正面からぶつかる回です。
普通は悩む欄すら、彼女にかかればポエム欄に早変わり。
ある日、教室に配られた一枚の紙。
――進路調査票である。
「はぁ〜、もうそんな時期かぁ……」
こよりがため息まじりに鉛筆を走らせる。
「進学するか、就職するか、なんか選択って責任重いよねぇ」
まどかが現実逃避気味に言いながらちらっと隣を見る。
すると、詩音先輩の席では――
「将来の夢:詩で世界を再構築する」
「希望進路:文学惑星への片道切符」
「いやいやいやいやいやいや!!」
「せめて現実の大学とか書いてぇぇぇえ!!」
「進路とは、“進む路”。誰がそれを現実に限ると決めた?」
「先生だよ!!」
先生がチェックのために回ってきたとき、
詩音先輩は自信満々にこう提出した。
《夜凪詩音 進路調査票》
将来の夢:
「詩を風に乗せて、宇宙の果てまで届ける者になりたい」
希望進路:
「感性学科・夢追い専攻(※本人の創作)」
自己PR欄:
「幼少より詩に目覚め、鉛筆と共に育ちました。
“真っ白な履歴書、それはこれから書く詩の余白”」
「この人、履歴書すら詩にする気満々だよ!?」
だが、先生ももう何度目かの“詩音案件”とあって、
ため息をつきながらもこう言った。
「……まぁ、一応“進む意思”はあるとみなすわ」
「あるんですか!? これ、詩のほうが先を進んでません!?」
放課後。こよりたちが帰ろうとしたとき、
詩音先輩が校門の前で空を見上げながらぽつりとつぶやく。
「未来は白紙……だが、それは最も美しい詩の一行目」
「……なんか、うまいこと言われた気がする!!」
今日の一句(進路ver):
「夢を書く 用紙の端に 風が吹く」
次回、詩音先輩――放送委員会に乗っ取り参戦!?
朝の校内放送が、いきなり詩で始まったら……?




