第16話「詩音先輩、短歌に溺れる」
今回のテーマは「短歌」!
詩音先輩が短歌という“重厚な5段構え”に挑戦した結果、またも文学が暴走。
提出課題でここまで厚みを持たせる人、なかなかいません。
「はい、注目~! 今回の国語の課題は、短歌を一首詠んで提出でーす!」
担任の先生の明るい声に、教室が微妙にざわついた。
なぜなら生徒たちは知っている――夜凪詩音がいることを。
「これ……詩音先輩に出させていいの?」
まどかが小声で言う。
「いや、出さないと余計に暴走する気がする」
さつきが冷静に返す。
「むしろ、普通の短歌に落ち着いてくれたらいいな~」
こよりは希望的観測を口にしたが――その希望は秒で砕かれた。
次の日。教卓に出された詩音の短歌に、先生が目を丸くして言った。
「……え、なんかこれ……序文ついてるんだけど」
【提出短歌】
『我、短歌道を歩むにあたり』
―序文より抜粋―
五・七・五・七・七……それは詩の五重奏。
想いは五段に折られてもなお、伝えきれぬほど膨らみ、
私はこの狭間に宇宙を見る。
短歌:
《昼下がり 開かぬロッカー その理由を
知らぬままにも 時は進みぬ》
「なんか……シリアス……」
まどかが言う。
「『その理由を知らぬままにも』って、深刻すぎない!? 開かないだけだよね!?」
こよりが動揺している。
「詩音先輩、ロッカー開かないだけで時間の流れを実感してる……」
さつきが頭を抱えた。
そして、その後も詩音先輩は自主的に短歌シリーズを投稿し続けた。
《テスト前 鉛筆削れず 絶望し
心に灯る 謎の闘志よ》
《冬の朝 ストーブの前に 集まれば
友情よりも 熱がまぶしい》
「なんか共感できるけど! でもなんか重い!!」
「やっぱり詩音先輩が短歌やると、全部ドラマになるなぁ……」
その後、先生は詩音の短歌だけをまとめた**『短歌・夜凪詩音抄』**を作成、
学級文集とは別冊で配布されるという異例の展開に。
ちなみに、詩音は大喜びしていた。
今日の一句(いや五句?)
「短歌とは 五段階で 心燃え」
次回、詩音先輩がついに――合唱祭に文学で殴りこむ!?
音楽と詩が交差するとき、またもカオスの予感!




