第13話「詩音先輩、筆箱に宇宙を詰める」
今回は、誰もが一度は気になる“筆箱”にフォーカス!
けれど詩音先輩の筆箱は、文具という名のカオス空間でした。
学校という現実に宇宙を詰め込む勇気に脱帽(そして若干の恐怖)。
昼休み。教室の隅で、こよりが悲しそうな顔をしていた。
「こよりの筆箱……チャックが壊れたぁ~……」
「おーい、また詰めすぎたんじゃないの?」
まどかが覗き込む。
「でも全部必要なんだもん~。ペン3本、色ペン6本、のり、修正テープ、定規、ミニ電卓、ミニミラー……あとプリンの絵のシール」
「シールだけ省こうよ」
さつきが冷静に言う。
「筆箱って、女子それぞれの個性出るよね~」と話していると、なぜか教室後方がざわつき始めた。
「な、なにこれ……」「えっ!? 筆箱!? えっこれ箱!?」
――そこにいたのは、もちろん夜凪詩音。
机の上に置かれたのは、金属製の小型トランクのような謎の物体。
“夜凪 詩音・詩的文具格納装置”と書かれたシールが、重厚に貼られている。
「それ……ほんとに筆箱ですか?」
まどかが恐る恐る聞くと、詩音は頷いた。
「言葉を綴る者にとって、筆箱は宇宙。
そこには詩の銀河が詰まっているのだ」
「コスモス詰めないで! ペンだけでいいの!!」
まどかの突っ込みが冴えわたる。
中を開けると――
万年筆(5本)、羽ペン、インク瓶、古びた巻物(何!?)、水晶玉サイズの消しゴム、謎の短剣型しおり、羊皮紙メモ帳…。
「これは……文房具界のRPG装備……」
さつきも引き気味。
「これだけあれば、世界征服できる気がする~」
こよりが感心してるのが一番まずい。
「必要なものを、必要なときに。そう、それが詩の旅の心得」
詩音はきらめく目で言った。
だがその瞬間、トランク型筆箱のロックが外れ、
ガシャーン!!!
中身が教室中に拡散された。
羽ペンが飛び、インク瓶がゴロゴロ転がり、羊皮紙が舞い踊る。
「銀河、爆散した――!!!」
まどかが叫んだ。
こうして、“夜凪詩音の文具銀河事件”は、先生の耳に入り、
詩音の筆箱は“持ち込みサイズ検討中”という謎の裁定を受けることとなった。
今日の一句:
「筆箱に ロマンを詰めて 爆発す」
次回はきっと、もっと静かな話になる……はず!?
ご期待ください!