第12話「詩音先輩、自己紹介をやりなおす」
今回は“自己紹介”という超基本イベント!
ですが、詩音先輩がやるとただの名乗りじゃ済みません。
言葉と世界観が飛び交う、予測不能の3分間にご期待ください。
ある日のLHR。
担任の松井先生が言った。
「新年度に向けて、来週から“自己紹介ウィーク”をやります! みんな、あらためてクラスメイトを知ろう!」
「え、今さら自己紹介?」
まどかが首をかしげる。
「ほら、席替えもしたし、改めてってことでしょ」
さつきが冷静に分析。
「じゃあ、私は“白鳥こより! プリンとピンクが好きで~す!”って感じで!」
こよりは早くもノリノリ。
そして数日後。ついにやってきた自己紹介当日。
「それじゃあ、前の席から順番に~」
ざわざわとした教室。順々に自己紹介が進み――
「次、夜凪さん」
――空気が、変わった。
夜凪詩音は静かに立ち上がり、深く息を吸い込んだ。
「我が名は夜凪詩音――
この世界に降り立ちし、言葉の狩人。
夢を紡ぎ、現を詠み、無から詩を掬う者なり」
「出た! 自己紹介でファンタジー入れてくるタイプ!!」
まどかが即座にツッコミを入れる。
「座右の銘は、“ページをめくれ、そこに詩がある”」
「血液型は“詩型”」
「趣味は“言葉を溺れさせること”」
「だめだこれ、完全に通常クラスのテンションじゃない!」
さつきも困惑。
「えーと、夜凪さん、もうちょっと普通に――」
松井先生が止めに入ろうとした瞬間、
「私は、普通の“ふ”の字にも、詩を感じます」
詩音、真顔。
「だれか彼女に常識という名の辞書を投げて!」
まどかが叫んだ。
「詩のページで受け止めよう~」
こよりも便乗。
結局、夜凪詩音の自己紹介は予定時間を3分オーバー。
プリントに記入された“自己紹介の感想”欄には、多くの生徒がこう記した。
「よくわかんなかったけど、すごかったです」
こうして、夜凪詩音の**“詩的自己紹介爆弾”**は、クラスの記憶に深く刻まれたのだった。
今日の一句:
「名乗りすら 舞台に変える 詩の力」
自己紹介で世界観を広げる才能(迷惑)も、詩音先輩ならでは。
次回もお楽しみに!