第10話「詩音先輩、アンケートに本気出す」
今回は学校アンケートがテーマ。
でも詩音先輩が書くと、それはもはや“芸術作品”に!?
選択式の限界を超えた詩的アンケートにご注目!
放課後、ホームルームの終わりに配られた一枚のプリント。
それは生徒会主催の「学校生活に関するアンケート」だった。
「ふつうに『食堂の味』『授業満足度』とか、選択肢に○つけるだけのやつだよね」
まどかがプリントを眺めながら言う。
「これは特に問題なさそう」
さつきもさっと記入を始めた。
「“購買の品ぞろえ”のところに、こよりは『プリン強化希望』って書く~」
こよりもゆるく参加。
――そんな中、静かに机に向かって何かを描きはじめる影がひとつ。
「……あ、あれは……まさか」
3人の視線の先には、夜凪詩音。
手にしたアンケートの余白を、もはや小論文レベルの筆致で埋めていた。
「学校生活というものは、内なる詩の育成環境としていかにあるべきか。私はここに問う……」
呟きながら、書く、書く、書き続ける。
「詩音先輩、それ、選択式だよ!? □の中にポエム入れる人初めて見たよ!?」
まどかが思わず立ち上がる。
「授業満足度に“風が教えてくれた”って……何の科目!? 教科書読んで!!」
さつきがツッコむ。
「購買の品ぞろえは“宇宙の可能性”って書いてある~。ふわっとしてるぅ~」
こよりがふわっとコメント。
詩音は「真実はアンケートの枠に収まらない」と呟いて提出した。
その後、生徒会からのお知らせ掲示板には、こう書かれていた。
【ご協力ありがとうございました】
一部、芸術的すぎるご意見がありましたが、概ね集計できました。
さらに小さな文字で追記が。
※夜凪さんの分は、別紙として職員室に展示予定です
「なんかもう……新しいジャンル開拓してない?」
まどかが呆れて言った。
「これは……“詩的意見書”だね」
さつきが眼鏡をくいっと上げた。
「たぶん展示見に行く人いるよ~」
こよりは嬉しそうに言った。
こうしてまた一日、詩音先輩の“やらかし”が伝説となったのだった。
今日の一句:
「チェック欄 □の中にも 詩は咲く」
普通の学校イベントも、詩音先輩の手にかかれば“やらかし”に早変わり。
次回もお楽しみに!




