5.神聖なる死体同盟
地下迷宮から持ち帰った5匹のゴブリンは、防具の魔法防護性能をテストするためのものだったんだ。
この防具のアイデアを出したのは、聖属性の先生のイリーナ先生。彼女は聖属性の防御術系を専攻してる人で、布を織るときに金色の糸で魔法陣を織り込んで、それを服に仕立てて魔力を注入したら、魔法ダメージを軽減できるんじゃないかって考えたんだって。
服はゴブリンにとってちょっと大きかったけど、まあテスト用だし、ちょちょっと安全ピンで留めてから始めたよ。
最初の一着は、本当に効果があるかどうかの確認用。同じように先輩が、さっき地下迷宮で使ったのと同じ火球魔法を放ったんだけど……今回はゴブリン、灰にならなかった!焦げてたけど、ちょうどいい感じのミディアムレアって感じ?
「成功したっぽい?」
みんながゴブリンの状態を確認してる間に、私は二匹目のゴブリンを操作して服を着せてみた。
実は、服を着るって結構難しい動作なんだよね。腕を曲げて、頭を穴に通して……って、繊細な動きが必要でさ。ゴブリンを立たせて、他の人が着せるって、できるかな~って思ったけど、まあ、ショーウィンドウのマネキンに服を着せるみたいな感じだった。
「ゴブリンちゃん、おてて上げられる?」
フィオナ先輩がゴブリンに服を着せながら、私に指示を出してくれて、もうほんと優しいの。ゴブリンにまで“ちゃん”付けするなんて……あぁぁ!私もフィオナ先輩に服着せてもらいたいっ!「フェリシアちゃん♡」とか呼ばれたら、もう、わたし死んでもいい~~~!
だいぶ時間かかったけど、ようやく着せ終わって、次のテスト。今回はもっと弱い魔法を使って、防護効果が徐々に落ちたりするのか、あと定期的に魔力を注がなきゃいけないのかを調べるの。
最初の火球は耐えた。でも二発目で腕とか出てるところがちょっと焦げて、三発目で左腕がなくなって、四発目ではもう限界だったよ。
じゃあ、毎回攻撃受けるたびに魔力を注ぎ込んだらどうなるのかな?ってことで、わざと聖属性じゃない人に魔力を注がせてみたんだ。もしそれでも効果あるなら、冒険者や兵士が自分で魔力を注ぐだけで、魔法防護できるってことになるし。
ここまでは順調だったんだけど、最後の一匹をテストするとき、私がちょっとミスっちゃって、魔法陣の端っこを折っちゃったの。それで陣が機能しなくなって、火球一発でゴブリンが灰に……。
ゴブリンちゃん~~~~~っ!!かわいそうにぃぃぃ~~~~っ!その勇敢な犠牲、絶対に忘れないからねっ!!
「魔法陣が折れただけで機能しないなら、兵士の装備には不向きですね」
兵士って普通、その上に鎧を着るから、絶対その重みで魔法陣が潰れちゃうんだよね。
「外側に着せるのは?」
「無理です。剣で切られたら魔法陣が壊れます」
「となると、冒険者の後衛向け?」
まあ、不可能じゃないけど、使う人はすっごく減るよね。特に軍隊っていう一番のお得意様を失うのは……
「時間が経てば金糸が退色して、魔法陣が機能しなくなることもある」
「自然摩耗もあるし……」
「修理で効果を取り戻せる?」
「それはできません」
「となると……」
「使用可能期間の目安は?」
「1年、長くて2年。冒険者が使うことを考えたら、2年超えるのは現実的じゃないですね」
「製作コストを考慮すると……」
まあいいや、販売とかそーゆーのは、学生の私が考えることじゃないし。
だってこれは現実なんだよ?異世界ファンタジーじゃないんだからさ……。