表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

珍能像 その2

本作はフィクションです。

登場する人物、団体、事件などはすべて架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

また、一部に宗教的なモチーフが登場しますが、特定の宗教・信仰を肯定または否定する意図はありません。


物語には一部、暴力的・性的な要素や、精神的に不安を感じる場面が含まれることがあります。ご自身のペースでお楽しみいただければ幸いです。

 冷田(ひえだ)とかいう男に連れられて、歩く。

 とはいっても、この遅い歩きで3分くらいだから、それほど遠くないだろう。

 凍傷に侵された脚の痛みは、不思議と和らいでいた。


 猫崎(ねこざき) (ゆい)が私の方を振り返って嬉しそうに言う。

「じゃじゃーん!ほら、あたしじゃなくて、あんたが好きそうなのがあるよ~」


 重い足取りで着いたのは、町役場前の…()()だった。

 別に好きじゃないし。そういう発想に至るあんたが気持ちわるい。名称は知らないけど、どこからどう見ても()()だ。女子高校生の私よりも、男子中学生が好きそう。


 そういえば、このキモいオブジェを近くで見たことなんてなかった。

 神聖?とは真逆の、確かな禍々しさを感じる。人が寄り付かないだろうな、と容易に想像がつく。


「俺も前に来たことあるんだけどよぉ、()()…だよな、これ。なあ、カ()()()チンの日下(くさか) 萌々奈(ももな)さんよぉ!」

 寒いギャグとともに、冷田(ひえだ)は再び私に強烈な冷気を浴びせる。あまりの寒さにその場にへたり込んでしまった。

「ハハッ!またあっくん寒~いダジャレ言ってる!そんな寒いのも、あたし大好きだからね!」


 猫崎(ねこざき) (ゆい)は上機嫌になった。

「あっくんはね、この()()像の近くで、氷?の超能力を手に入れたんだよね!なんかウケるよね~」

 猫崎(ねこざき)が私の頬を人差し指でつついて続ける。

「でも、アンタみたいなデマ女は、ダメだよ。あっくんみたいな素敵な人じゃないと。」


 いつまで勘違いしてんのよ。私がデマ流すなんて、そんな陰湿なことするわけないでしょ。


 私、日下(くさか) 萌々奈(ももな)は、高校でも性格が良い子として知られているし、学級委員としての人望も多少はある。うっすら疎まれている猫崎(ねこざき) (ゆい)とも、私はクラスでは仲良くやってきた。表面上は。


「だから!聞いて!私はそんな嘘言いふらしてない!」


 (せき)を切るように叫んだ。


「はぁ?こいつこの期に及んでまだ…あっくん、頼むわ。殺しちゃダメだからね。」

 また一段と冷気が強くなった。





 僕、伊勢(いせ) 健之助(けんのすけ)は、道路を挟んで珍能像(ちんのうぞう)が見えるところに来た。珍能像(ちんのうぞう)の傍で、奇妙な3人組を見つけた。

 まず高校生くらいの、金髪ショートヘアの高慢そうな少女と、角刈りで青いレザージャケットを着た、ガラの悪い男がいる。そしてその男には、赤み掛かった黒髪の、ピンクのベストを着た少女が腕を押さえられて、虚ろな目をしてへたり込んでいる。


 見るからにヤバい状況じゃないか。それに、周囲の空気が冷やされて霧が見える。今は真夏なのに。

 多分、あの男が最近あった凍結現象の犯人だろう。未知の特殊能力…ああ、「権能(けんのう)」というのか。いや、そもそも僕はなぜそんなことを知っている?

 とにかく、正直怖い。だが、恐怖よりも先に体が動いていた。ひたすら走る。


「あの、一体どなたですか?私たち、今忙しいのでぇ。」

 高慢そうな女に見つかった。一目で苦手なタイプだとわかる。

「状況はよくわかりませんが、やめませんか?彼女、危険な状態ですよ」

 僕が言ったところ、冷気を発している男が

「それも()()()。クリーム()()()。」

 と同調した。よっぽどクリームソーダが飲みたかったのだろう。こんな時にふざけやがって。

 高慢そうな女の子が、その男を一瞥(いちべつ)した。

「あっくん、なにそれ寒~い。とにかく、私たちはこいつに理解(わか)らせないといけないんですぅ。警察よびますよ。」

 呼ばれて困るのは君の方じゃないか、と内心思いつつ、凍えている少女に目をやった。

「お、お心遣い、ありが、と…ござい、ます、でも、ほんと、だいじょぶ…ですから。お引き取り、願います…」

 丁寧な口ぶりで目を逸らす。僕は身を屈め、そんな少女の耳元に近づいた。

「あ、おいおい何やってんだお前は」

 少女の近くにいる男が僕の方に触れ、制止しようとする。


 その時、僕の口をついて出たのは、自分でも思いもよらない言葉だった。

「…今、君の欲しいものはなんだ。君は一体どんな人なんだ。つらいだろうが立つんだ、立ってその像に触れるんだ。」

 僕は言い終えると、少女の手を取って立ち上がらせるやいなや、男を力いっぱい押さえつけた。


 おぼつかない足取りで、少女は一心不乱にその像へ駆け寄った。

いざ構想段階のお話を書き起こしてみると、話が意外に長くなってしまいます。すみません。

チ…もとい珍能像(ちんのうぞう)の下で、無実の罪によって追いつめられる高校生の萌々奈(ももな)と、そこに居合わせた大学生の健之助(けんのすけ)。この出会いから、二人は壮大な戦いに巻き込まれていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ