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カリューと魚介類の盛り合わせ

「ガウガウ!」


 俺達のパーティーにクリアと紅蓮が加わった。紅蓮はクリアの事が気に入ったらしく、傍でクリアに色々と話しかけているようだ。


「あはは! そんな事があったんだぁ!」


 クリアは楽しそうに会話をしている。

 勿論、俺達には会話の内容はさっぱり分からない。


「獣使いっていうのは、あんなに普通に動物とかと喋れるものなのか?」


 俺は素朴な疑問を口にした。


「う〜ん……結構マレなんじゃないかな。そりゃ、クリアの獣使いとして素質は凄いよ。でもあそこまで意思の疎通が可能なのは、むしろ紅蓮の知能が発達しているのが原因だろうね」


 確かに。

 紅蓮にはゾンビ馬である銀星と同じような雰囲気を感じる。銀星もやたらと知能が高いしなぁ。スケベだし。


「そういえば銀星は元気で過ごしているかのぉ」


 ジェットが思い出したように言った。

 銀星はこの大陸にある小さめの牧場に預けていた。そこで綺麗な雌馬に恋をしたようだった。あいつも懲りない奴だ。


「それにしても、クリアは結構体力あるよね」


 秋留が言った。

 確かに。

 俺達は今、港に向かって走っているのだ。クリアがいるので全力とはいかないが、それでもクリアは息切れする事もなくついてきている。

 紅蓮との会話を楽しんでいるところを見ると、まだまだ余裕がありそうだ。


「しょっちゅう探検ごっことか戦闘ごっことかを、近所の仲の良い友達としてたからかなぁ」


 クリアが言った。

 それに対して紅蓮が何か相槌を打ったようで、クリアが再び笑う。


 何気ない会話をしていた俺達だったが、さすがに人の叫び声や悲鳴が聞こえてきたときには全員の顔が緊張に引きつっていた。


「うああああっ」


 近くに街路樹に持たれかかった冒険者が傷口を抑えて呻いていた。

 その他にも負傷者があたりに散らばっている。


「やっぱり放っておけないよね」


 秋留がキョロキョロとする。


「ジェット、あのベンチでうな垂れている人を先に回復してあげて」


「おお! あの服装は司祭ですな」


 さすが秋留だ。

 司祭を先に回復してやれば、その回復した司祭が他の負傷者を助ける事が出来る。


「ブレイブ! クリア! 行くよ!」


 秋留が戦火へと突き進む。

 クリアを真ん中にして俺と秋留が左右を固めた陣形だ。


 ちなみに硬貨はたんまりと補充してきた。パルメザンに俺の武器は硬貨である事を言ったら、喜んでたんまりと重い銭袋をくれた。そのせいで若干身体が重いが全然問題ではない。


「レッド・ツイスター! 遅かったじゃないか!」


 ボロボロになったタイガーウォンが言った。

 それでも致命傷を受けていないあたりが、さすがと言ったところか。


 ざっと辺りを見渡したが、海賊の数よりも水系のモンスターの姿が多い。どうやらラムズと合流したようだ。


「ガロンを抑えろ! あいつが次期の海賊船長になるつもりだ!」


 なるほど。

 ガロンを抑えておけば、次期船長を置いて逃げるような海賊共はいないだろう。

 まぁ、治安維持協会員達が船を取られないように頑張っているのもあるだろうが。


 港は既に敵味方が入り乱れていた。これでは秋留が強力な魔法で根こそぎ吹っ飛ばす訳にはいかない。


「海からは水系モンスター、陸からは海賊か……」


 辺りを見渡して呟く。

 まずはモンスター達を何とかしないといけないな。


「クリア! いっちょ試してみるか?」


 俺はクリアの方を振り向いていった。秋留も「試してごらん」と声をかけている。


「すぅぅぅ……」


 クリアが息を大きく吸い込んだ。とりあえず耳を塞いでおこう。


「止まれ!」


 塞いでいた手を突き抜けて脳を直接揺さぶるような高い声が響いた。

 辺りのモンスターの動きが一斉に止まったが、戦っていた治安維持協会員や他の冒険者の動きまで止まってしまっている。


 獣使いの力か?

 ただ単に急にデカイ音がしたから、ビックリして全員動きを止めただけではないだろうか。

 暫くすると思い出したかのように、そこら中で戦闘が再開された。


「何か微妙だよ」


 クリアがショボンとする。


 まずはラムズを何とかしよう。俺達はラムズの姿を探した。しかし見つからない。探している間にも俺達の姿に気付いたモンスター達が襲い掛かってくる。

 とりあえず近づいてきていた半魚人を倒した。


「ファイヤーバレット!」


 秋留も魔法で応戦する。

 紅蓮も近づいてきた悪海賊の足首に噛み付いて役に立っている。クリアは秋留の腰にしがみ付いてビクビクしている。


「これだけ多くのモンスターが操られているからね。近くにいるはずだよ、ラムズは!」


 秋留が背中に装備しているマントが鋭い刃物になって、近づいて来たモンスターを八つ裂きにした。


 俺は辺りを注意深く見渡した。

 あいつは目立たないからなぁ。ガロンは敵に囲まれながらも戦っているのが目立つ。そのすぐ隣にはボックスとか呼ばれていた荷物持ちもいる。


 全然見つからない。

 俺は諦めかけて視線を海へと移した。


「いた!」


 ラムズは海に浮いていた。その足元にはタトールの姿が見える。しかし攻撃が届きそうな距離ではない。


「あそこまで届く魔法もあるけど、簡単に避けられそうだよね」


 俺達の存在に気付いたのか、ラムズがニヤリと笑った。

 勿論距離があるため、その仕草に気付いたのは俺だけだと思うが……。


 ラムズが指を掲げた。

 それが合図だったのだろうか。後方から猛獣の雄叫びが聞こえてきた。


「がるるるる……」


 カリューだ。

 ラムズが俺達のために戦力を温存していたようだ。しかも傷がほとんど塞がっている。カリューが獣へと変化していったプロセスの過程で、自然治癒能力も高くなってしまったのだろう。最早人間だったとは全く思えない。


「ガウガウ!」


 紅蓮が吼えるが、カリューの雄叫びによりすっかり戦意を喪失してしまったようだ。紅蓮はクリアの影に隠れた。


 カリューが飛び掛かってくる。

 俺は両銃のトリガを引いた。弾層には銅硬貨がフルに入っている。

 カリューは野生の勘で硬貨を難なくかわすと、俺の両手に食らい付こうとしてきた。


「がるっ」


 カリューの腹が裂けて真っ赤な血が辺りに散った。

 ブラドーがカリューを攻撃したようだ。しかし体勢を立て直したカリューが今度は秋留の方を睨み付ける。


 俺は再び銃のトリガを引く。

 次は牽制ではなくカリューの避ける方向を予測して硬貨をぶっ放した。一発は外れたがもう一発はカリューの後ろ足に命中した。


 カリューも俺と秋留のラブラブペアには勝てないようだな。


 にちゃっとした音が聞こえた。タコの足が秋留の足に絡み付いている。


「ブラドー!」


 秋留が叫ぶと、ブラドーが鋭い刃となってタコの足を切り裂いた。

 見ると周りにモンスター達が集まってきている。


 どうやら戦況が悪くなったとみたラムズが増援を送ってきたようだ。様々な海のモンスターやら水系のモンスターが俺達の周りに集合しつつある。


 とりあえずネカーのトリガを引いて、近づいてきていた虹タコの脳天を吹き飛ばした。真っ黒な墨が辺りに散らばり地面を黒く汚した。


「!」


 カリューが俺の脚に噛み付いていた。至近距離からネカーをぶっ放したが、長く噛み付いている程馬鹿ではないようだ。発射された硬貨はあっさりとカリューに避けられ、地面を軽くえぐっただけだった。


「ちっ! モンスターが増えてきたせいで気配を感じるのが難しくなってきたぞ」


 秋留も小さく頷いた。


「どりゃああ!」


 ジェットがモンスターを薙ぎ倒しながら俺達に近づこうとするが、数には勝てないようだ。少し離れた場所で必死にレイピアを振るっている。


「またしてもキリがないな!」


 目の前まで飛んできた飛魚のようなモンスターを短剣で三枚に下ろした。三枚に下ろしたからといってこの場で食べるつもりではない。


「獣使いっていうのは凄いんだな!」


 次に襲ってきた武装した半魚人の首を短剣で切り裂いて叫ぶ。

 秋留が首を振りながら反論する。


「有り得ない! これだけのモンスターを操る能力は普通の獣使いにはないはずだよ!」


 ナマコのようなモンスターを、魔法の杖で秋留が気持ち悪そうに向こうへ押しやっている。


「ぐうっ!」


 強烈な一撃を短剣で弾く。手が痺れて感覚がなくなった。


 この強烈な攻撃はカリューか!

 あの野郎、雑魚の攻撃に混じって巧みに攻撃してきやがる! ラムズがいるとこんなにも変わるものか?


「そういえばっ」


 飛んできた黒い銛を咄嗟に掴む。下手に避けると俺と秋留の真ん中で震えているクリアに当たりかねないからな。


「ラムズが牢屋に閉じ込められている時も、モンスターが操られている風じゃなかったか?」


 今度は膝蹴りで近づいて来たカリューを弾き返す。

 俺の膝や肘には鉄板が入っているため威力はそれなりのものだ。


「あ……」


 秋留が俺の台詞に一瞬硬直する。


「危ない!」


 俺はネカーをぶっ放して秋留に攻撃を仕掛けてきた貝殻のようなモンスターを吹き飛ばした。


「ぼ〜っとしたら危ないって!」


「そっか……」


 再び近づいて来たナメクジのようなモンスターはブラドーが薙ぎ払う。


「タトールがモンスターを操っているんだ!」

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