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東京リバースギフテッド  作者: 黄原凛斗
厭世者たちの狂想曲
9/33

騒がしい隠れ家

2章はラストまで毎日更新でお送りします。



「あのさぁ……」


 吉田田吉と名乗った男はベッドの横の椅子に座った結依を見下ろしており、その姿は呆れと怒りが滲んでいた。声も不機嫌さを隠さない。


「俺言ったよね? ちゃんと真面目に通わないなら高校行かせるの考えるよって」

「……ハイ」


「ルフが心配なのはわかるけどさぁ……。そんでルフの希望無視して学校サボるのはどうなの? しかも最初、一人で探ろうとしたってことだよね? 怒られたかったの? もう俺が絶対叱るのわかりきってることじゃん」


 完全に悪いことをした子供が萎縮している図に罪悪感が募る。

 俺が止めておけばよかったと言われたらそのとおりで……。


「あの! 俺も結依に付き合ったから、止めなかった俺も――」


「まだおめーに聞いてねぇよ。ちょっと黙ってな」


 バッサリ低い声で切って捨てられた。

 見た目からしておそらく20代前半くらいだと思う。

 怒っているからか語調の強さに怯んでしまう。


「結依ちゃんはね、俺との約束を守らなかった。それなら俺は結依ちゃんの希望を優先する必要はない。ルフの頼みを叶えてやれないのは申し訳ないけど、きな臭い状況が続いてるし、言うこと聞いてくれないなら厳しくやるしかなくなるんだわ」


「で、でも! 田吉さんだって――」


 結依にも主張はあるのだろう。食い下がろうと声を上げたが、吉田さんの顔を見て口を閉じた。


「ね、俺心配したし、結依ちゃん探すために駆け回ったんだよ? それなのにそういうこと言うんだ」


 あくまで笑顔というていを崩さない。だがそれは見たらわかるくらいに怒りを秘めていた。声を荒らげないのが余計に怖い。


「あ、謝っとけって……」


 さすがに俺たちが悪いだろうし、謝ってから考え直してもらうほうがいいだろう。そう思って結依に耳打ちする。


 そんな緊張状態に別の緊張が走った。

 ドンッという強い打撃音。それも近く……この建物と思われる距離だ。


「あーもう、こっちが真面目な話してるときに……」


 吉田さんが呆れ、苛立ち、疲労。様々な感情が滲んだ声でぼやいたかと思えば部屋の壁が突然壊れた。

 結依はびっくりしてちょっと縮こまるが吉田さんは驚いた様子もなく「あーあ……」という声を漏らす。

 壊れた壁越しに破壊者"たち"の姿が見える。




「ほんっとすばしっこいですね! ドブネズミにでも改名でもしたら!?」



 一人は茶髪の男性。顔や雰囲気そのものはどこか大人しそうに見えるのだが現状、壁を破壊したのは立ち位置からして彼の方のようだ。

 半笑いで拳を握り直しているのが伺える。



「そっちこそ能力使いもしないで馬鹿力しやがって! 物を壊さないと生きていけないのか!」



 そしてそれと向かい合っているのは銀髪でメガネをかけた男性。銀髪といえば倉庫のあいつを思い出すがそれとは違う。カオルと名乗った銀髪が色の薄い銀だとすればこちらは青みがかった銀髪だ。

 両方とも美系だとは思うが銀髪の男性の方は少し離れたところから見ただけでもしばらく印象に残りそうな美人だと思ったほど。男相手にこんなことを思うのはさすがに初めてだ。


「失礼ですねこの通り壊さないようにもできるけど? それとお前が自分の顔が気に入らないようだから少し骨格でも変えてやろうって気遣いですけど! わかったら黙って殴られろクソ和泉!」


 そのへんにあったティッシュの箱を掴んで茶髪の男は投げつける。それを回避したメガネの人だったが、回避したことでこちらにティッシュの箱が飛んできて俺の頭に直撃する。

 オマケにその勢いのせいで頭が壁にぶつかって二重のダメージを負った。


「そ……時葛! 大丈夫!?」


「た、多分……」


 バカみたいな勢いがついていたせいでちょっとクラクラしている。念の為頭に触れてみるが血は出ていないようだ。

 吉田さんはさっきまで俺たちと対面していたときより機嫌が悪そうに「は~~~~」と深いため息をつく。


「暴力でしか語れない真正ゴリラの癖に無駄に屁理屈こねるんじゃない! だいたいそんな形で顔を変えたいと誰が思うんだよバカ文!」


「あー今バカって言いました? バカって言いましたね!? はーもう許せない深度壱くらいは解禁しちゃおうかな――」


 言いかけた茶髪の男が急にその場で転ぶ。いつの間にか吉田さんが足払いをかけ、そのまま頭が床にぶつからないように足先で受け止めながらメガネをかけた方もいつの間にかナイフよりも小さい武器のようなもので服を床に縫い止めていた。


「お前らさ……好き放題やってここを追い出されるか、今すぐやめて反省するか選べ」


 笑顔なのにまったく笑っていない顔をした吉田さんがそのまま二人を取り押さえる。

 やけに慣れた様子で取り押さえていることから日常的に起こっていることなのだと察せられた。


「た、たっきー? いやちょっとした小競り合いじゃないか。ほら、ちゃんと壊したものは直すしさ?」


「そ、それに僕ら追い出しても田吉だって困るだろ? そんな怒らないでも……」


 争っていた二人は往生際悪く言い訳を並べようとするが、吉田さんはついに笑顔が失せる。


「悪いけど俺、マジでイライラしてんだわ。それに……」


 二人の襟首を掴んだまま俺たちの方を見て、息を大きく吐いてからとっ捕まえた二人に向かって叫んだ。


「結依ちゃんと客を巻き込んでんじゃねーよボケどもが! 識文(しきふみ)は壊したもの全部直せ! 和泉(いずみ)は診察と療術(りょうじゅつ)!」




――――――――――



 茶髪の方の男性はげんなりした様子で壊れた壁に触れながら修復している。どうやら霊術のようで、魔物に破壊されたところを直している防人衆が使っているのを見たことがあった。

 さすがにすぐには無理みたいだが徐々に修復されていく。



「どこか他に痛むところある?」

「いえ、大丈夫……です」


 和泉、と呼ばれたメガネの人はいくつかの問診をしてからぶつけたところを診たりして、次いで倉庫で傷を負った部分も確認する。

 ぶつけた頭も気分が悪くなったりはしていないし、倉庫で怪我した部分ももう痛まない。さすがにまだ少し痕が残っているが包帯を巻き直してひとまず大丈夫と告げられる。


「とりあえずは大丈夫だと思うけど念の為、痛みが出たり、気分悪くなったらこれ飲んで。何もなくてもこのあと、食後に一錠は飲むように」


 てきぱきと指示をしてから薬箱からいくつか薬をピルケースに入れて渡してくる。薬、なんの薬だろう。あとで見てみるか。

 結依が隣で「よかった……」と安堵しているのを見てこちらも安心する。


「やーっと落ち着いて話せるわ。とりあえず和泉は治療ご苦労さま」


 吉田さんが壁直しの監視を終えて戻ってくる。茶髪の方の識文と呼ばれていた男もちょっと拗ねたこどものような様子をして戻ってきた。


「僕は医者じゃないからやりたくないんだけどね……」


「しょーがねぇだろ、医者はおろか療術の使い手、少ないんだから。それと、お前ら自己紹介」


 そう言って吉田さんは俺を顎で示して喧嘩していた二人に促す。

 さきほどまでの殺伐として様子は鳴りを潜め、穏やかな空気になった。


「あ、どうも。自分は識文(しきふみ)っていいます。さっきはすいませんでした。次はちゃんとこいつに当てるので」


「僕は和泉(いずみ)。さっきは悪かったね。次はこいつに跳ね返すから」


 互いに互いを指差して謝ってはいるものの、次を予感させることを言っていて吉田さんが後ろでため息をつく。


 仲、悪いんだなぁ……。


「と、時葛綜真です。結依と同級生で……」


「同級生?」


 結依が引っ掛かりを覚えたのかわざわざ聞き返してきたので不思議に思いながら結依の方を見る。


「……え? 同級生だろ?」


「同級生以外になんかないの?」


 なぜか結依が機嫌を悪くし、思い当たることがないため戸惑う。その様子を識文さんと和泉さんは生暖かく見てくるが特になにか言うわけでもなかった。


「んで、俺が真面目な話してるときにガキみたいな喧嘩してた2人もどうせなら聞いていけ。俺今回マジでキレてっからね?」


 急に、緩くなっていた空気が再び引き締まる。

 一言置いてから取り出したのは俺と結依が持ち帰ったハッピータリスマンが入ったケース。

 その中身を見て、和泉さんは嫌悪感を顕にし、識文さんも穏やかな表情こそ崩さないが真剣そうな声で言う。


oss(アウトサイダーズ)内でも話題になっている薬物の一種。ハピタリって呼ばれたりもするアレね。随分と大量に仕入れてるじゃないですか」


「ossでもタチ悪いバカどもが一般人にこれの錠剤タイプを売りつけてるから、早いところ製造元締め上げないとこっちまで被害出るんだわ。まあ、うまく隠れてるから防人衆の方も苦戦してんだろうね」


 すでに一般人に出回っているというのは一番最初の噂の時点で覚悟していたが、そんなものをバラまいているやつらが野放しになっていて、防人衆も対応できていないという事実に動揺する。

 おそらく、俺たちがこれを回収したところで、他の場所では別の売人たちが動いているのだ。


「で、なんで結依ちゃんたちはこれ持ってんの」


「それは……取引現場に居合わせて……」

「さすがに置いていったらマズイって……俺が判断して……」


 置き去りにして誰かの手に渡ったら危険だと判断して持ってきたのだが、よく考えたら破壊すると煙が出てしまうし処理に困るのも事実。


「俺さー……俺さー……ほんっと言われなくても理解してほしかったんだけどさー……」


 心の底から、本日何度目かもわからないため息をついて、吉田さんは声を荒げた。


「半グレとはいえ! 危険な奴らと! 取り引きしてる! 反社野郎どもに! 自分から近づいたら駄目に決まってんだろ! 何? 異能あるからなんとかなると思った?」


 困った。正論過ぎて何も言い返せない。

 それは結依も同じで、俯いて黙っているしかできないようだ。


「だいたい半グレに異能者がいないと確信してたとしてもハピタリなんて扱ってるやつらがそれ使わないと思う? 一歩間違えたら適当な奴らにハピタリ使って魔物化ハイおしまい、なんてこともあり得るんだけどわかってんの?」


 見事にその通りというか、一番最初がまさにそんな流れっぽかったのですいません……と二人で呟き続ける生き物へと成り果ててしまう。


「たっきー、そろそろやめといたら? 結依ちゃんもお友達も困ってるじゃないですか」


 識文さんが呑気そうに重い空気を打ち破り、それに対して吉田さんも少し気が抜けたように答える。


「困るっていうか俺は反省してほしいんだよ」


「まあ自分もさすがに、今回の件は反省したほうがいいと思いますよ。でも反省したならほどほどに怒り切り上げなきゃ」


 味方かと思ったら別に味方ではなかった。

 いや、やったことを考えたら当然なのだが。


「結果的に無事だったからいいけど、死んだりしたら説教もできないからね。しばらく結依は田吉の言うこと、素直に聞いたほうがいい」


 和泉さんも同様で、責めるでもなく諭してくるので結依と揃って「はい……」としか言えないでいた。

 そんな俺らをよそに、そういえば、と吉田さんが急に喧嘩していた二人の方を向く。


「ところでなんで喧嘩してたのお前ら」


「あー、それがね……」






――――――――――



 ――十数分前。



「ただいまー」


 散歩から帰ってきた識文が何気なく帰宅を告げるとダイニングでテレビを見ながらおやつを食べている和泉と目が合う。


「うわ、和泉いたんですね。結依ちゃんと例の子の面倒はいいんですか」


「あの子なら治療はしたからあとは意識取り戻すの待ちだし。結依がずっと付き添ってるから僕は邪魔でしょ」


「ふーん……そうですか」


「何気なくテレビの方を見ると、ニュースで異能者に関する特集のタイミングだった」


「和泉、チャンネル変えてください」


「やだ。僕ニュース見てるから」


「知ってる顔がテレビに映るの嫌じゃないですか。あーほら、映った」


 テレビに映る防人衆の姿を見て識文は複雑そうに眉をしかめ、リモコンを奪おうと手を伸ばす。

 リモコン争奪戦となり、リモコンを取ろうとする識文からリモコンを取られないようにかわし続ける和泉。

 一分くらいそんな時間が続き、イラッとしたのか、識文が和泉の脛を蹴り飛ばす。


「いっ――!?」


「ガキみたいなことやめてください」


 そう言ってチャンネルを変えた識文はご当地グルメ特集をやっているチャンネルに切り替える。

 が、そのタイミングで和泉も識の脛をかなり強めに蹴った。


「ぎっ――!?」


「ガキはどっちだ、クソガキ」


 ピキ……と識文が静かに激怒の色を示し、和泉は「はんっ」と鼻で笑った。

 怒りで炎が出るとしたら、もうダイニング全体が燃えだす程に睨み合う二人は両者無言で広い場所に移動する。


『死ねェ!』


 お互いがもう喧嘩に慣れすぎていたせいで、何も言わずとも喧嘩しやすい位置に移動する癖がついていた。


 が、当然白熱しすぎて魔物ともそんな戦闘はしないだろうというくらい暴れ回った結果、こんなことになってしまったとさ。





――――――――――




「馬鹿?」


 事の顛末を聞いた吉田さんがガチトーンで一言。

 まあ、俺も聞いてみたら思ったよりくだらなくてびっくりしたが。


『だってこいつが!』


 当の二人が声を揃えて互いを指差す。その様子を呆れた目で見下ろす吉田さんがなんだかかわいそうになってきた。

 大人たちがぎゃあぎゃあ揉めている後ろで結依に小声で聞いてみる。


「いつもこんな感じなのか?」

「軽い喧嘩ならしょっちゅうだけど、壁壊れるくらい喧嘩するのは月イチくらい……かな」


 そりゃ吉田さんも慣れるわ。

 結依もびっくりはしても困惑とかはしてなかったのでまあ納得はする。


「はー……ただでさえ馬鹿と馬鹿とアホども揃いだってのに、問題児が1人増えるのか……」


 頭を抑えながらぶつくさと文句を口にするとようやく話は終わり、というように手を叩く。


「んじゃ、しばらくはここに住むわけだし、必要なもんあったら予算の範囲で買ってきな」


「そうですね……」





 ――あれ?




「和泉、識文。付き添い中くらいは喧嘩せずに大人になれよ。結依ちゃんは待機ね」


 当たり前のように話が進むので結依を見る。気まずそうに目をそらされてしまい、恐る恐る吉田さんに聞いてみる。


「あの、しばらく住むって……」


「ん?」


 さっきまでとは打って変わって落ち着いた様子で微笑む。


「いや、俺らのアジト知った以上帰すわけにいかねーし。それにハピタリ関連関わってるならなおさら外にやれるわけねーじゃん」


 その微笑みは決して優しいものではなく、言外に逃さないが?という圧を感じた。


「いや、そんないきなり言われても家に帰ってもいないのに――」


「時葛綜真。母親は災害による行方不明者扱い。父親は仕事で家に滅多に戻らず、兄弟もいないためほぼ一人暮らし。母方の祖父も一年前に他界。小中ともに異能の発現形跡なし。他の親族関係までは不明」


 反論を封殺するようにスラスラとこちらの家庭事情を並べ立てる様子に一気に血の気が引いた。完全に把握されている。これが敵に回ったらと思うと……。


「で、あってるな? 悪いけど、お前が寝てる間にとっくに調べてんだわ」


 そう言って投げ飛ばしてきたのは俺の通学用のカバン。

 投げ渡されたので慌てて受け取るが、そのまま吉田さんが俺の生徒手帳をヒラヒラ見せつけてくる。


「ま、俺にこうやって全部すっぱ抜かれてるようじゃどのみち放り出したら防人衆に見つかって流れでここバラされかねないし。命が助かった分の不自由とでも思っときな」


「田吉さん! でも私のせいなんだし時葛だって――」

「綜真な」


 結依、全然名前で呼ばないじゃん。

 一瞬で囲い込まれたのはびっくりしたがどのみち異能者になって申告したら結依と離れるのは間違いないし、そもそも俺としてはこの場所や人たちが結依の居場所として正しいのかもわからない。

 ならむしろ、そのまま居座れというのなら様子を見るのはこちらとしても願ったりだが、学校に行けないのもそうだし、一度は家に戻っておきたい。


「とりあえずわかったんですけど、さすがに一度も家に戻らないのは困るんで、すぐじゃなくてもいいから一度だけ家に戻らせてくれません? 誰か付き添ってもらってもいいので。そっちだって、急に親父が帰ってきて通報される方が厄介でしょ」


 どこで仕事をしているのか知らないが全然連絡がつかない父親だ。本当に急にふらっと帰ってくることもある。調べているならそれも知っているだろうと吉田さんに向けて交渉すると「しゃーねぇな……」と呟いて頭を掻いた。


「わーったよ。でもすぐは無理だわ。情勢とか色々見てから判断するから今日は買い物以外大人しくしとけ」


「あ、じゃあ結依も一緒に買物連れて行っていいですか?」


「時葛!?」

「綜真ね」


 通るかは微妙だがまた知らない間になにか起こるのも困るのでできれば一緒に行動したい。他の人が付き添うならまだ文句は言われないだろう。


「は~……ちゃっかりしてんな。ま、いいだろ。結依ちゃんも1人でおとなしくさせるのはかわいそうだし、デートしてこいよ」


「あ、いいですね。ありがとうございます」


「ちょっと時葛!」

「綜真だって」

「それはもうわかってるってば!」


 さすがに勝手に話を進めたからか結依が怒っている。といっても、怒り方が本気のものではなく、自分を無視されて拗ねている子供みたいだ。


「あんた納得するの早くない!? 学校行けなくていいの? ここのことだってまだよくわかってないのに!」


 と、言われても拒否する選択肢があるのかというとなさそうだし、だったら素直に世話になっておいたほうがいいだろう。もしかしたら異能についてや霊術についても知ることができるかもしれないし。


「ま、この街についてはあとで出かけるついでに詳しく見ればいいよ」


 そう言って、閉じていたカーテンを開けて俺に見るように促す。

 もう痛みはないが傷もないのに傷を庇うようゆっくり立ち上がり、窓の外を見た。



「ようこそ第二江東市へ(・・・・・・)



 海の一部を埋め立てて作られたそれは、かつて大災害の影響で住む場所が減少したゆえの措置として作られた出島。

 元江東区(こうとうく)の管轄として扱われていたそれはいつしか独立し、無法者の集まる独立した一般人にとっては危険な街。

 災害の跡地に近いことから魔物の出現数も高いはずのそこはギラギラとした電光によって激しい主張をする繁華街となっていた。



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