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東京リバースギフテッド  作者: 黄原凛斗
厭世者たちの狂想曲
13/33

勉強会と白雪姫の目覚め


「バーーーーーーーーーカ!!」


 寝起きの和泉さんが不機嫌全開で少女を寝かせた部屋の前で俺と識文に端的な罵声をぶつけてくる。


「なんで昨日の今日があってそんなの拾ってくるんだか!」


「朝から大きな声出すのやめてもらえます?」


「識文さん……」


 どうしてそんな煽るようなことを言うんですか……?

 俺が言い出したようなものなので罪悪感があるのだが、識文さんが和泉さん相手だと煽ったりするせいでそれどころではない。


「だいたい田吉がいないタイミングに無断で他人を連れ込むなって言われてるだろ? そんなことも忘れたのかバカ文」

「は? なんですか? 人命救助くらい自分が責任持てば別にいいでしょうが。人としての優しさすら失いましたか? カスみ」

「お前が責任持ったところで被害を被るのは僕や田吉なんだよ!」

「少なくともたっきーはそんなことで文句言いません~」


 やめてくれ~! 俺のワガママを識文さんが被ってくれているのもあって死ぬほど居心地が悪い。

 2人にとってはいつもの小競り合いとか口喧嘩なのかもしれないが俺にとってはクソ胃が痛い場面なのだ。

 吉田さん帰ってきてくれ~!


「も〜……どしたのみんな……」


 まだ眠いのかあくびを噛み殺しながら結依がやってくる。


「あれ……食パン買いに行ったんじゃないの?」


 髪を結いながら識文さんや俺を見て不思議そうな顔をし、俺たちが本来空き部屋であるはずの場所で言い争っているからか何か怪しんでいるようだ。


「ああそれがちょっと別の事件があって行けてなくてですね……。さっき女の子を……」


「……女の子?」


「あっ……」


 識文さんが俺と結依をなぜか交互に見て変な顔をしだす。和泉さんと俺は急にどうしたという視線を送るが識文さんは話を誤魔化すように声を上げた。


「とにかく! たっきーにもさっき連絡しておいたからそれまでは和泉が診ておいてくださいよ」


「だーかーらー! なんでそうやって勝手なことするかな! だいたい僕は医者の真似事したくないって何度も言ってるだろ!」


「ねえ、女の子って何? どういうこと?」


 地獄かな。



「なーに騒いでんだ?」


 救いを求めて美砂杜でも呼んでしまうか?となりかけたタイミングで吉田さんが玄関に現れる。ちょうど帰宅したようだ。


「何何何? どういう状況? 識文から急に帰りに食パン買ってきてって連絡きたから買ってきたけど……」


 ビニール袋片手に靴を脱ぎながら俺たちを見て訝しんでいる吉田さんに全員で一斉に詰め寄る。



「ちょっと聞いてよ田吉! 識文のやつが勝手に素性も知れない子連れ込んだんだよ!? 昨日のことがあって早速アジトに人入れるとかありえないだろう!? それなのにこいつときたら開き直ってばっかりで――」

「あ、食パンありがとうたっきー。それでですね、コンビニに時葛くんと買い物行こうとしたらアジト前に女の子が倒れていたんですよ。無視しようかとも思ったんですがさすがにそれも良心が咎めるというか――」

「吉田さん! さっきから2人がずっと口喧嘩ばっかりしてて困ってるんです! 俺新入りだから下手に口挟めないっていうか正直どうしたらいいかわからないっていうか、というかどこ行ってたんですか!」

「あ、田吉さんおかえり! 食パンって分厚いやつだよね!? ちゃんと分厚いやつ買ってきてくれた!? あのねあのね、フレンチトースト作ってくれるって話だったのに綜真がね――」



「待って! わかった! わかったから一気に喋るのやめて! 聞き取れない! 順番に喋って! はい! 和泉からね!」


 4人同時に詰め寄られて吉田さんは落ち着かせるように全員を制止し、順番に喋らせて状況を確認する。

 ところで結依、なんかさっき同時に喋ってるとき綜真って言ってなかった?


「はーん……で、さすがに確認してると思うけどなんか術かかってたりは?」


「中に入れる前に術の有無は確認したけどなかったよ。和泉にこれから診察してもらおうと思ってる」

「まあ術がなくても警戒は必要だな……。とはいえ無関係だったらさすがに放置するのも目覚めが悪いか……」


 困ったように息を吐いてから食パンの入った袋を俺に渡すと、吉田さんはそのまま離れていく。


「入れちまった以上は腹括ろうぜ。和泉、診察頼む。俺少し仮眠取るから」


 そう言われては弱いのか、和泉さんは眉間のシワを抑えながら「わかったよ……」とだけ返して少女が寝ている部屋へと入っていく。その瞬間、結依がちらっと部屋を覗き込んでいた気がする。


「さっ、朝食作るんでしょう? ほらほら」


 識文さんに押され、結依も手を引かれてキッチンへと追いやられる。

 なんか識文さんやたらよくわからない気の使い方をしてくるな……。


 その後、朝食は結依のフレンチトーストを用意しながら和泉さんや識文さん用に目玉焼きやら昨日の残りを使いまわしたりして識文さんに「レベルの高い朝食ってこんなに感動的なんですね」などと今までの環境を思うと悲しくなるような発言を受け取ったりしていた。


「この後、時葛くんと結依ちゃんに色々教えようと思うのですが……」


 目玉焼きに塩コショウを振りかけながら識文さんはうーん、という顔で続ける。


「正直に言うと、学園みたいな環境でもないので、まずは基本の座学からになってしまいますね。本当は実技が一番ですが、今アジトにいる面々が実技の指導にあまり向いていませんし」


 向いてないというが3人とも実力高そうなのに? 霊術とか教えてほしいんだけどなぁ。


「和泉さんと吉田さんは?」


 出来上がったフレンチトーストを結依の前に置いてから尋ねる。視界の端で「ふぉぉ……!」とフレンチトーストに感動している結依が見えた。


「はっ、和泉なんてアテにしない方がいいですよ」


「僕がいないところで僕の悪口か? ったく……」


 診察が終わったのか、ちょうどダイニングにやってきた和泉さんが識文さんを軽く睨み、席につく。


「一応僕が教えるのはできなくもないけど、僕の分野は攻撃的なものより補助的な霊術が多いからね。それに、どうしても基礎をやってからじゃないと僕らのやり方は効率が悪い」


「そういうわけなのでご飯のあとに勉強会です」


 基礎……基礎かぁ。

 あれ? そういえば吉田さんのことには触れられなかったな?

 仮眠取ってるらしいから多分勉強会には参加しないんだろうけど……。

 そういえば和泉さんはともかく、吉田さんと識文さんの異能もわからずじまいだな……。


「そういえば気になってたんですけど、吉田さんや識文さんの異能ってどんなのなんですか?」


 その疑問に和泉さんも識文さんもピタりと止まる。結依は識文さんをちらりと見ながらフレンチトーストをもぐもぐして何も言わない。


「えーーーーとですね。たっきーの異能については触れないのが吉です。田吉だけに」


「まあ、プライバシーの一種だから聞かないほうが……いいよ」


 なんか2人は知ってるみたいだが結依は?と視線を向けると咀嚼して飲み込んでから結依が口を開く。


「ぶっちゃけ私は田吉さんの異能知らないよ!」


「一緒に住んでるのに!?」


「だって田吉さん秘密主義だし」


 そ、そっか……。

 あれ? 結依ってもしかして俺と同レベルの情報量なのでは?


「識文さんの異能は……」


 言いかけて結依は口を閉ざす。識文さんが目の前にいるのだから本人にどうするべきか委ねているのだろう。


「うーん……自分……自分のは……まあ、そのうち説明します。異能のこと知らないとピンとこないかもしれないので」


 あんまり明かしたくないのかぼかされてしまった。でもいつかは説明するという感じはあるので、何かしらトラブルがあればしてくれるはず……。


「あ、そうだ。勉強はいいんですけど昨日の侵入者はどうするんですか?」


 すっかり忘れていたけど捕まえた2人はどうするんだろ?

 一応異能者用の拘束具をつけたらしいからまた異能で暴れることはなさそうだが。


「あの二人なら治療もした上で別室に閉じ込めてあるよ。田吉がどうするか次第かな」


「バックの黒幕についても聞かないといけませんしね」


 聞くって……本当に聞くだけなんだろうか。

 まあ気にしても仕方ないか。

 和泉さんが目玉焼きに醤油をかけながら俺も醤油を受け取って自分の目玉焼きにかける。


「さっきの子だけど、外傷はなかったし、術にかかってる感じもなかったよ。念の為食事は消化にいいものがいいね」


「なら起きたら軽く食べられるようなもの作りますね」


 お粥かうどんあたりなら大丈夫だろう。昨日の買い物で食材あるし。

 ふと、なぜか視線を感じたので振り返ると結依がじとっとした目を向けていた。


「どうした? おかわり?」


「なんでもないよ」


 なんでもないならその不貞腐れたような反応やめないか?


「痴話喧嘩は後にしてくださいねー」

「……余計なことはしないほうがいいんじゃないかな?」


 識文さんと和泉さんの言ってることがよくわからないが、結依にはまた今度フレンチトースト作るから、と言ってなんとか機嫌を戻してもらうことに成功したのであった。





――――――――――



 食後、しばらくしてリビングで識文さんが俺たちに勉強こと異能や霊術についての講義をするために集まった。

 和泉さんも一応はいるが補足程度らしく、少し離れたところでタブレットで読書中だ。


「ではそうですね……色々とたくさん教えることはありそうですが……」


 俺と結依の二人を交互に見て、識文さんはニコニコと指を立てる。


「二人とも知らないだろうけど、必要になりそうなお話にしましょう。まずは眼に関するものから」


「眼、ですか?」


「はい。眼、視る(みる)ことは異能や霊術において重要な要素になります。その最たるものが魔眼(まがん)炯眼(けいがん)と呼ばれる種類の異能です」


 まがん? けいがん?

 魔眼っていうならそれこそ漫画とかで見たことあるようなやつだろうか?


 識文さんはコピー用紙にさらさらと文字を書いて『魔眼』と『炯眼』を示す。


「見る、視るということによってその物体や人、生き物の情報を得ることができたり、弱点を見抜いたり透視能力なんかも基本的に備わっているとされています」


 魔眼の文字の横に簡単な人の絵を描いてから鑑定、透視の文字が書かれる。


「そして魔眼はこの基本的な能力に加えて、目、視ることに関係する異能を持っています。有名なのが必中能力や洗脳とかですね」


 魔眼の説明に異能発動、の文字を付けたして改めて魔眼の説明を丸で囲む。



挿絵(By みてみん)



「そういう見ることによって能力を発揮できる異能、そして見たものの情報を読み取ることができる能力を持っていることを『魔眼』って分類するんです」


 そのまま下の方にも同じような人の絵を描いてから異能発動だけを書く。


「魔眼の基本機能を持たないけれど、見ることで能力を発揮する異能だけのものは『炯眼(けいがん)』と呼ばれます」


 つまり、魔眼は多機能に加えて個人個人で能力があり、炯眼は能力一点特化ということ……かな?

 また、説明によると炯眼はピンキリだが魔眼は基本的に情報を視る、『鑑定』という能力があるためどこに言っても重宝されるらしく、全体で言えばそう多くないため、魔眼が必要な仕事は人手不足になりやすい役職でもあるらしい。


「本当は魔眼持ちのメンバーに時葛くんを見てもらうのが君の異能の訓練のためにも一番なんですが、ちょうど別件でここを離れていまして……。まあそのうち戻るでしょうからそれまでは能力を見極めるのは後にして知識面と霊術をカバーしましょうか」


「それならお前より僕がやったほうがいいと思うけど」


 まだ自分の能力については詳しく知ることできないか……と思っていると和泉さんがなにげなく発言したことにより、識文さんが舌打ちする。


「はっ、自分の方が成績上位者常連だったからって調子乗ってませんか?」

「なんだよ、僻みか?」


 またギスりそうなので揉める前に話題をそらそう。


「2人とも学校で一緒だったんですか?」


 言い方からして学生の頃の話っぽいし、俺と同年代の頃のことならなにか参考になることがあるかもしれない。


「ああ、ほら。高校生になると異能者って指定の学園に進学するって決まってるじゃないですか」


 そういえばそんな決まりだった気がする。俺は一般人だと思っていたので縁がなかったが、覚醒したことで本来なら申請した上で転校するのが普通らしい。


「あれで自分と和泉は1年だけ在学期間が被っていまして」


「へ~。じゃあ先輩後輩なんですね。吉田さんも一緒だったんですか?」


「え? いや、たっきーは全然関係ないですね。というか仮にそうだったとしてもたっきーとの年齢差じゃ自分たちと在学期間被りませんし」


 てっきりこの集まりが学生時代の友人やらの集まりかと思っていたが違うようだ。

 ということは吉田さんもしかして思ったより年上なんだろうか?


「でも確かにたっきーがあそこ通ってたらどうなのか気になりますね」


「ああいう環境で伸びるタイプかと言われると微妙そうだしね」


「ossの筆頭が今更大学通えるわけないもんね」


 ん? 異能者向けの大学もあるんだ?


「にしてももうすぐたっきーも19かー。あっという間ですね」


 一瞬、脳が理解できずに聞き流しかける。


「…………ん?」


「ん?」


「誰が何歳ですか?」


 19歳って言ったら俺らと3つくらいしか変わらないってことになるんだが……。


「たっきー今年で19歳ですよ?」


「嘘ですよね!?」

「嘘でしょ!?」


 おい待て結依。なんでお前まで驚いてんだ。


「誕生日がもう少し先だったはずなので今18ってことなりますね」


「……あの、識文さんと和泉さんっていくつですか?」


 そういえば全然パーソナルな情報を知らないまま世話になっていた。完全に忘れていた。


「え? ああ、自分は今は24歳です。誕生日きたら25ですが」


「僕は22。もうすぐ23」


「識文さんが上なんですか!?」


 なぜだろう。なんとなく識文さんのほうが年下だと思いこんでいた。いや本当になんでだろう……。


「そんなに驚くことかな……?」


「年齢も今じゃ異能者にとっては色々意味があるからわざわざ言うことでもないかなーと思っていたんですよね。特にたっきー、自分の年齢を理由になめられるの嫌いだし」


 指折り数えるような仕草をする識文さんは気になることを口にする。


「年齢に意味?」


「ほら、20年前から異能者が増えたって話はわかりますよね?」


 20年前の異能者増加やら18年前の災害やら……色々あったはずだがあまり記憶力に自信が無い。


「20歳以上は血統由来の異能者が多く、それより下は血統によらない突然異能者に覚醒した子が多いんです」


「一応20代くらいならギリギリ覚醒者が増えた影響で若い世代が連鎖反応起こして、血統由来ではない異能者がそこそこいるから厳密には30歳以下のほうがいいかもしれないね」


「もちろん、20歳以下でも血統由来の子はいます。ですが近年はどうしても異能家系ではない異能者が増加傾向にあるそうですね」


 異能者にも色々とあるんだなぁ……。多分詳しく知ろうとすればするほどもっと詳しい事情やら情報があるのだろう。


「おっと、話がすっかりそれてしまいました。魔眼や炯眼についてはまあそこまで数が多いものではありませんが、注意しないと強力なので魔眼だとわかったら相手の視界から外れるようにしましょうね」


 総括するように改めて言うと、ふと和泉さんが「んー?」と振り返る。


「どうかしました?」


「いや、さっきの子が起きたっぽい」


 さっきの子、というとあの倒れていた少女のことだろう。

 食事のこともあるし、一旦勉強会は中断させてもらおう。



――――――――――



 和泉さんから少女の目覚めを聞いて、用意しておいたうどんのつゆに溶き卵や生姜を入れ、仕上げにネギを軽く乗せて持っていく。


 少女はベッドには座っているものの、そわそわとした様子であちこちに視線を向けていた。

 白い髪に、ぱっちりとした黒い目。恐らく大半の男は美少女だと思うことだろう。細身で儚げな雰囲気が見ただけで伝わってくる。

 そんな彼女が俺の姿に気づいてハッとし、不安そうに見上げてくる。


「あ、あの……ここは……?」


「気がついたみたいでよかった。あじ……家の前に倒れてたから救護したんだけど……」


 診察とかは和泉さんがやったので俺はなにもしてないのだが、込み入ったことをわざわざ説明してもわからないだろう。

 机にうどんを乗せたトレーを置いてから少女に向き直る。


「えーっと、名前とか、どこから来たとかそういうの言える?」


「…………りんご……です」


「え?」


 りんご、と聞いて思わず首を傾げてしまう。いきなりどうしたんだ?


雪平鈴檎(ゆきひらりんご)……雪が(たいら)のゆきひらで鈴と赤い林檎(りんご)()でりんごです……」


 ああ、名前だったのか。りんごだけだと果物を連想してしまって気づくのが遅れてしまった。

 そのまま顔を背けられてしまい、どうしたものか……と悩む。話をしたくないということなんだろうか。

 仕方ないので「食べれそうならこれ食べな」と机に置いたうどんを指して部屋から出ようとする。


「あ、あの……ち、ちがうんです……」


 が、なぜか引き止められ振り返ると、鈴檎はこちらを向いて俯きがちだった顔をあげる。


「同年代の男のとお話するの、はじめてで……」


 色白だからか、真っ赤になるとわかりやすく、薔薇色の頬を両手で挟んで恥ずかしそうに目をそらしてあわあわとしている。

 その様子にどこか「こんな子が身近にいたら引っかかってしまいそうだな」なんて考えてしまった。


「その……あの……ありがとうございます……あなたのお名前は……?」


「俺? 俺は時葛綜真」


 恥ずかしがり屋なんだろうか、顔をあげてからも目が合わなくなる。


「そうま、くん……ですか」


 そうま、そうまくん……と噛み締めるように呟くと不安そうだった顔にようやく笑みが浮かぶ。


「その……またあとでお話してくれませんか……?」


「うん? それは別にいいけど」


 なんだったら今でも――と思ったがどうせなら和泉さんに診てもらったりするべきだろうし後のほうがいいかもしれない。


「じゃあ食べ終わったら机に置いといてくれ。あとで取りに行く」


 飲み物を一緒に置いて部屋から出ると、すぐ近くに結依が腕を組んで待ち構えていた。


「……」


「あれ、結依?」


 まさかいると思ってなくて面食らったが、なにかあるんだろうか。


「どうしたんだよ」


「べっつにー。それより今夜、寝る前にホットミルク作ってよ。甘くして」


「別にいいけど甘いのってお前……」


「何?」


「太るぞ」


 心からの親切のつもりだった。

 だというのに背中をバチンと叩かれ、大きな音が響いたのは言うまでもない。






 バチンという音をリビングで聞いた識文と和泉はタブレットを見たりしながら呟く。


「痴話喧嘩、始まっちゃいそうですね」


「だから余計なことするなって言ったのに……」


 馬に蹴られたくはないので2人は触れないことにした。






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