<ウサギ>
マリアのようなウサギの獣人は種族として女だけしか生まれないため子供を作る相手はこちらから出向いて見つけるか、旅の男を見つけるというものになっている。そして子供が出来るにはウサギ側が相手のことを本当に気に入らないとで出来ないらしいがたとえ気に入るほどの相手だったとしても、本来その相手とはその場限りの関係でその後の関係を一切持たないのが普通なのだ。
しかし俺とマリアの関係はまるで一般的な人間同士のような関係である。マリアとしては自分と子供だけという生き方もできたはずであるが、それにもかかわらずマリアは俺と添い遂げ、サクラという娘まで生んでくれた。
「まあ、きっと変わり者同士気が合うのにゃ」
「ん?」
なんかタマルに代わりものと言われるのは納得できない気もするが褒め言葉として受け取っておこう。というよりその理論で言えばマリアと仲のいいタマルも変わり者ということになるがタマルはそこを忘れているような気がする。
「それに」
「それに、なんだ?」
「マリにゃんとハヤトにゃんの間にあと何人子供ができるか楽しみなのにゃ」
「お前なぁ・・・」
この話の流れで随分としたことをぶち込んでくる恐ろしい猫である。そして俺がそんなことを思っているのを知ってか知らずかタマルはニヤニヤしながらさらに続ける。
「マリにゃんだってハヤトにゃんが気に入らなかったらサクラにゃんを作らないのにゃ」
にゃんにゃんうるさいが確かにそれはタマルの言うとおりである。
「そもそもマリにゃんみたいなウサギ族は同じ種族に男がいない分厳しい目で相手を品定めするのにゃ」
「そのうえ本当に認めた相手じゃないと妊娠なんかしないし、あの妥協とか一切知らないマリにゃんと一度上手くいっているハヤトにゃんなら何人でも大丈夫なのにゃ」
俺よりもタマルの方がマリアとの付き合いは長いし、この世界のことも分かっている。もしタマルの言うとおりであればこれほどうれしいものは無いだろう。
「ん?なんにゃ?ハヤトにゃんにはその気がないのにゃ?」
「いや、別に・・・というよりお前に話す必要があるのか?」
「そーんなこと言っちゃって。もっとはっきりしたらどうなのにゃ。このままじゃマリにゃんがハヤトにゃんを襲っちゃうかもしれないにゃ」
「あのなぁ・・・」
まったく、タマルと話しているとこっちが恥ずかしくなってくる。
「マリにゃんだってウサギ族として、気に入った相手がその気じゃなかったら誘惑するし子供を産むために襲ってもおかしくないのにゃ。まあ、ハヤトにゃんはスケベだからウサギ族特有のマリにゃんのナイスボデーで誘惑されればきっとイチコロなのにゃ」
俺から言うことはもはや何もない。しかしタマルはマリアとのお茶会でいったいどんな話をしているのだろう。まさか俺とマリアを逆にしたような話でもしているのではないのだろうか、不安しかない。