<幸せ生活>
寝溜めでもできるのだろうか。サクラはユキノとシノブに抱かれるようにして寝ておりマリアも俺の隣でスヤスヤと眠っている。よくあれだけ眠っていたのに眠れるものである。
そして俺は気晴らしに温泉に行くことにして一人川沿いへと来た。すると・・・。
「眠れないの?」
びっくりして振り向くとそこにはマリアが佇んでおり、月明かりに照らされたマリアはこの上なく美しく神秘的に見えた。
「どうしたの?」
「マリアの美しさに見とれてた」
「当たり前じゃない。あなたの妻なのよ」
マリアは言葉通りさも当然のように答える。強く、美しく、肝っ玉の据わった妻である。
その後俺とマリアは二人して温泉に入ったが、時間の有り余る長風呂は夫婦の仲睦まじい時間となったのである。
「―――た起きて。あなた起きて」
目が覚めると空は既に明るくなり始めていた。
「もう、私に抱きついたまま寝ちゃうんだから」
「いい抱き心地だったぞ」
マリアは俺が溺れないようにずっと抱いてくれていたようだ。
「もう帰るわよ」
そう言って立ち上がったマリアだが、それはそれで俺の目をくぎ付けにする。しなやかで美しい体つきをしたマリアはただ立っているだけで俺の目を奪う。
「もう、駄目なんだからね」
流石のマリアでもそこまでのワガママは許さない。俺の目線に気付いたマリアはそういうと俺を抱き上げて温泉から無理やり上げたのである。
・・・・・
「もう、二人とも遅いよ」
テーブルで準備をするサクラに小言を言われながら家に入るとユキノとシノブの小言も始まる。
「二人して朝に帰って」
「夜はちゃんと寝ないとダメなんだからね」
威勢のいい娘たちである。
「お父さんが眠れなかったみたいだから。今度こんなことがあったら足腰立たなくなるまで付き合ってあげて寝床から出れないようにしておくわ」
そんな解決方法でいいのかと思いつつ俺は椅子に座る。
「もう、お母さんも何でお父さんなんかと一緒になったのかな」
「私たちが生まれる前もずっとイチャイチャしてたんじゃないの」
そういえば二人はサクラと違って俺とマリアの出会いを知らなかったがこれはまた長い話である。
「―――それでね、お父さんがね、森で行き倒れになっているところを私が見つけたのよ」
「「お父さん行き倒れになってたの!」」
興味津々で聞くユキノとシノブ、微笑みながらこっちを向くマリア、二人のこれからの動向を内心楽しみにして笑みをこぼすサクラ。果たしてこの娘二人は明日からどんな小言と質問攻めをしてくるのか、この話を聞いた時のサクラ以上に忙しくなりそうだ。
・・・・・
強く、優しく、美しく。
可憐で、賢く、逞しく。
気配り上手の料理上手、
気品があって凛として。
度胸があっていたずら好きで、
俺が何をやっても敵わない。
こんな魅力的な妻と娘に囲まれて、
俺もまったく幸せな奴である。
この話はここで完結とさせていただきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。