<強く美しく>
昼食後、俺とマリアは後片付けも終わって二人仲良く椅子を並べて窓の外を見ていた。窓の外ではユキノとシノブがそれぞれ木刀を持って打ち合っているのだ。
「二人とも元気だな」
「二人とも狩りをしながら生きていくには十分だもの、あとはサクラのように強くなるだけよ」
「そういうもんなのか?」
ユキノとシノブも10歳になり、サクラと同じようにもうマリアよりも大きくなっている。だがあの二人はサクラのように旅に出ることはない。そう考えれば今の狩りができるだけでも十分だと思うのだが・・・。
「今そんな必要ないのにって思ったでしょ」
マリアは俺の心の中でも見えるのだろうか、マリアは俺の思っていたことを言い当てるとさらに続ける。
「私たちウサギの獣人は強く美しく生きるものなの」
「強く美しくか、あの二人だってマリア以上じゃないがすでになかなかなものじゃないか?」
「あら、自分の娘たちに鼻の下伸ばしてるの」
「なんだ嫉妬してるのか」
いつも通りの会話を交わしながら、いつも俺が負ける言い合いが続く。
「いいえ。私が育てた私達の子供たちですもの、どこに出しても恥ずかしくないし、いずれ私以上になるのは当然だから別に嫉妬なんかしないわ」
「そうか」
「でも、まだ私以上じゃないから私以上になってから手を出してね」
「そもそも手なんか出さないよ。それにあの二人が今のマリア以上になったって俺はマリアだけを見ているよ」
そう言って俺はマリアの腰に手を回す。ここまで来るとただの本心である。
「あら、ユキノが私と同じぐらいの身長の時にどっちかわからないでユキノを抱いていたのに?」
「ふあぁ!いや!そんな!」
俺は驚きのあまり声を上げるが、マリアは笑いながら俺の様子を楽しんでいる。
「冗談よ、冗談。もしそんなことがあったら私がユキノから奪い返してるわ」
「もう、お母さん!変なこといわないでよ!」
まったく、冷や冷やさせられるものである。そしてこちらの話を盗み聞きしながら打ち合っていたユキノは俺と同じようにマリアの嘘に引っかかりシノブに一本取られた。
「まったく、そんなことで負けるなんてまだまだよ」
マリアがそう言ってユキノとシノブの打ち合いは続く。するとマリアは俺に寄りかかり俺の腰へ手を回す。
「強く美しく生きるというのはね。自分自身と大切な人を守れることも言うのよ」
「それならマリアは最強だな」
「ええそうよ。私は最強なの」
そう言い切った瞬間、マリアは俺逃がさないと言わんばかりに俺の腰を強く引き寄せたのである。