<埃と誇り>
俺の頭の上に乗っかる綿ゴミを見つけたユキノとシノブ。
「お母さん、お父さんの頭に埃が乗ってるよ」「乗ってるよ」
「お父さんは誇り高い男だから」
すべてはマリアのこの冗談からだった。
「取っちゃった」
「お父さんの誇り取っちゃった」
二人とも大変なことをしてしまったというような予想外の反応に俺とサクラは噴き出す。
「ははは、そう来たか」
「大丈夫よ、それぐらいでなくなるようなものじゃないわ。もう、戻さなくても大丈夫だから」
二人が俺の頭に戻した綿ゴミをマリアは取って捨てる。あんなことを真に受けてしまうなんてまったく可愛いものである。
しかし、本当の事件が起こったのは翌日の朝のことであった。
・・・・・
「二人ともお父さんを起こしてきて」
ドア越しにマリアの声が聞こえ二人の入ってくる音がする。しかし今日はすぐに俺を起こしに来ないで何かをやっているようだ。俺はそのウトウトした状態のまま半分寝た状態となる。
「ほらお父さん起きて!」
「早く来るの!」
突如としてユキノとシノブの口撃が始まった。仕方なく起きると俺は二人に手を引かれてリビングへと行く。そしてそんな俺の様子を見たマリアとサクラは驚きの声を上げた。
「どうしたのお父さん!」
「頭が埃だらけよ」
「え?」
頭を払えばこれでもかというほど頭から埃が落ちてくる。
「昨日お父さんの誇り取っちゃったからいっぱい乗せておいたの」
「二人で部屋中から誇りを集めたんだよ」
誇りと言い張っているが実際には埃である。だがこればっかりはどうしても怒れない。
仕方がないとあきらめる俺、笑うマリアと笑うサクラ、二人の笑い声で成功したと喜ぶユキノとシノブ。
可愛い二人の可愛い事件は家族の明るい笑い声で終結したのであった。