<元気な子うさぎ>
ネットやゲームといった娯楽が一切ない生活ではあるが、ここでの時代は楽しさで溢れている。なぜなら夫婦生活、子供の成長一つ一つがうれしく楽しい出来事なのだ。
二人が生まれてから三年経ち、ついこの間までカゴの中で眠るか手足を動かすだけだったユキノとシノブは少しずつ言葉を発するようになり、乳離れをしたかと思うとモリモリと食べ、立ち上がったかと思うと歩き出し、今では家の周りを走り回るまでになった。
またサクラに至ってはまだ成人ではないものの10歳になるとマリアよりも大きくなり、今では一人で大物を仕留めることができる立派な狩人である。そして対人戦の特訓ではマリアの攻撃を避けることができるようになったが、攻撃を当てることができないので勝負のつかないことが多くなりサクラはまだマリアには勝てない。
「サクラもだいぶ大きくなったな」
「やっぱり私よりも大きくなったわね」
「耳を立てたら俺以上だからな」
「もしかしたらユキノとシノブも同じぐらい大きくなるかもしれないわよ」
果たしてサクラが大きくなるのは異色種だからなのか、それとも俺とマリアの愛情が大きく育てたのかわからない。俺たちにとってサクラは初めての子供だし比較できる対象もないのだ。
「もしかしたらそうかもしれないな。二人ともよく寝て、よく食べて、よく走る。サクラと同じだ」
「これからが楽しみね」
・・・・・
だが、元気な子供とは付き合う親が大変なものである。
「お父さん、何隠してるの」
「いいや、何も」
サクラの少し怒ったような問いに俺はそう答えるがマリアがすぐにそれを否定する。
「一気に心臓の音が早くなったわよ。嘘をついても私たちにはすぐにわかるんだからね」
実はさっきからずっと足が痛いのである。昼食になりユキノをサクラが、シノブを俺が家に連れ帰ることになったのだが、走り回るシノブを捕まえたときに転んでしまい石にぶつけた時から痛くて仕方がないのだ。
「もう、隠したって駄目。ほら座って。歩き方と呼吸の仕方で痛みを我慢してるのなんかバレバレよ」
大人しく座るとマリアは俺の脚を診る。どうやら打撲で済んでいたようでマリアの治療を受けることになった。
「もう、これからケガをしたらすぐに言うのよ」
「・・・」
グニッ!
「わかりました」
マリアに太ももをつねられ俺はすぐさま返答した。アメの使い方だけでなくムチの使い方も心得てるマリアである。