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異世界幸せ生活  作者: osagi
第三
16/41

<父親式特訓>

 まっすぐに振り下ろされた木刀をサクラは体を少し動かしただけで簡単に避け、次の瞬間には俺の首元にサクラの木刀が付きつけられている。そして木刀を横に振ればサクラは受け流して自らの頭上を通過させ、勢いで俺はサクラに対して後ろ向きになる。


 「うーん。なんでお母さん相手だとできないのかな」

 「マリアがすごすぎるだけだろう」


 思いっきり力一杯木刀を振るのと本気で木刀を振るのは似ているようで違う。これが当たったらただでは済まないというものであっても、サクラなら当たることはないと思えれば何度でも振れる。しかし、ケガをしてもかまわないとして思いっきり振るなんて俺にはできない。


 そしてそんなこと俺の娘として生きてきたサクラにはすでにお見通しである。そのため今回の特訓はサクラの提案通りに俺がサクラに言われたとおりに武器を振るうといったものになっており、木刀や槍に見立てた木の棒、石斧などサクラはそれぞれの受け止め方や受け流し方を研究しているのだ。


 「でもお母さんにできるってことは、ほかに人にもできるってことだし私にもできるってことだよね」

 「そうなるな」

 「もしかしたらお母さんより強い人だっているかもしれなって、そう考えたらお母さんよりも強くならなくちゃね」


 マリアと二人っきりの時に話したことなのだが、サクラはまだマリアには勝てないがそこら辺にいる冒険者相手であれば難なく倒せる程度の実力を身につけているそうだ。しかし、一流の冒険者ともなるとどうなるかわからない。そのため、マリアはサクラが自分に負けることが無くなるまで旅に出すつもりはないそうである。


 そしてマリアが強すぎるため俺にはわからないがサクラもマリアの技術と経験を受け継ぎそれなりに強くなっているのだという。敵の攻撃にカウンターを返したりカウンターを返される前に追撃したりするといったマリアの技術や経験を受け継いでいるそうだ。


 ではなぜそこまで受け継いでいてサクラはマリアに勝てないかということなのだが、カウンターにカウンターを返すなどサクラはまだマリアから受け継いだ先の戦い方をまだ知らないのだという。もちろんこれはマリアも知らないことでありサクラ自身が見つけていくしかないのだそうだ。幸いマリアもそれを一緒に見つけてあげようとしているし、二人分の力があればさらに強くなることができるだろう。


 「それじゃあお父さん。次は体術の練習をするよ」

 「体術?俺でか?」

 「お父さんとの体格差がある今のうちに自分よりも大きい相手との戦い方を練習しておきなさいってお母さんが言ってた」


 体術といえば「手足は最後の武器」としてマリアがサクラに教え込んでいるものである。確かに大人と子供の体格差を利用するのであれば今のうちしかないだろう。それから俺はサクラに受け身のやり方を教えられサクラの特訓が始まる。


 「それじゃあ行くよお父さん」

 「おし!来い!」


 一気に距離を詰めたサクラは俺の腰のベルトと胸元の服を掴むと盛大な背負い投げを決め、すぐさま俺の手首を取って馬乗りになり組み敷く。


 「どう?」

 「結構強烈だな」

 「本当だったら石とか固そうな地面を狙って頭から地面に落とすし、足を引っかけて押し倒したり引き倒したりもするんだよ」


 武器がない状態で相手を倒すための体術、最後の武器としては実に十分すぎるほどの威力を持った技である。そしてしばらくすると次は打撃技の練習だ。サクラは俺の正面に立つと俺の首を掴むように手を添える。


 「次は首か」

 「首を正面から突けばしばらくはまともに呼吸ができなくなるけど狙うのが難しいんだよね」

 「よく知ってるな」

 「そりゃあ狩りの時は一気に首を切り落とすか、首を的確に刺すんだもん。。ちゃんと首の弱点と狙われたときの危険性はわかってるつもりだよ」


 本当に当てはしないが手や足で首元を狙ってくる突きは身を引きそうになるほど怖いものである。しかしサクラを全面的に信頼し最後まで俺は的に徹した。



・・・・・



 「zzz」


 特訓の途中に俺の腕の中で眠ってしまったサクラ。俺が相手とは言え、いや俺が相手だからこそケガをさせないように寸止めさせたり威力を抑えたりとかなり気を遣っていたのだろう。


サクラが寝落ちする前―――


 「それじゃあ次は寝込みを襲われたときの特訓をするよ」


 サクラがそう言った瞬間、俺はサクラに足を払われて地面へと転がされる。


 「もし旅で一緒に野宿をしている人に襲われても返り討ちにできるぐらいじゃないと安心して寝られないもん」


 マリアがサクラに執拗に教え込んでいるものがもう一つある。それは簡単に他人を信用するなということだ。


 サクラのような異色種は普通よりも高い能力を有しているが、逆を言えばそれを討ち取れば力を示すことができる。しかもそんな奴らに討ち取る過程は関係がない。それとなく近づいて寝込みを襲えばいいのだ。正面から戦って倒したと嘘をついてもそれがバレる可能性は無いのである。


 「それじゃあお父さん。痛かったら言ってね」


 それから俺はサクラに添い寝していたり、馬乗りになっていたり、お互い抱き合っていたりしていた状態から様々な寝技をかけられた。


 特に体の柔らかいサクラは馬乗りになっている俺の後ろから足を延ばし、俺の目の前で足を交差させて俺を後ろに押し倒すことすらできる。そのうえ両足の胴締めや三角絞めは人並外れた脚力からすればそのまま押しつぶすことも可能なほどの力を持っており逃れることは不可能なのだ。


 だが俺とサクラは他人ではなく信頼できる家族である。いつまでも技をかけないと思ったらいつの間にか寝落ちしていたサクラを俺はこのまま寝かしておくことにした。


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