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異世界幸せ生活  作者: osagi
第二
13/41

<育つサクラ>

 退院した俺の生活は普段通りの幸せな生活へと戻っていた。変わったことと言えばマリアがサクラのために短剣を買い与え、森に行くのを許可したことである。


 あの俺とサクラが獣に襲われた日、マリアは町の鍛冶屋でサクラの短剣を注文していたのだ。7歳という年齢的には半人前となったサクラを森へ連れていくのと同時に短剣を与えることにしていたのだという。マリアの短剣よりも少し大きいが、サクラは自分よりも大きくなるし力もある。そして短剣という肌身離さず持つことになる武器はから使い慣れていた方がいいのだそうだ。


 そして、短剣と森へ行くことの許可を同時に得たサクラの喜びようは言葉では表しようがなかったようだ。うれしさのあまり家の周囲をぐるぐる走り回り、しまいには屋根にまで飛び乗ったのである。


 「それじゃあお父さん行ってくるね」

 「二人とも気をつけてな」

 「大丈夫よ。私が付いてるから」


 それから数日して二人が森へ行く日、ルーナは俺の護衛を兼ねて留守番でマリアとサクラの二人で森の中へと行くことになった。まだ子供であるサクラは体に対して大きい狩猟刀を上手く扱えないので見学だけになるだろうがそれでも狩人としての成長をしていくことになるだろう。


 だが、サクラに教え込んでいくのは狩りだけではないのである。



・・・・・



 対人戦。今までは狩人としての技術やウサギの獣人としての技術を中心に教え込んできたマリアであるが、サクラが森に行くようになったのと同時に人間や獣人相手との戦いを今まで以上に教え込むようになったのだ。


 ただの冒険者ならまだしも、異色種ともなればいくらでも戦い挑んでくる輩がいる。そんな奴らから身を守り生き延びていくためにもこれは絶対に必要な技術なのだという。


 「ほら、立ちなさいサクラ」


 そしてマリアの対人戦の特訓は厳しく、サクラの体には打撲や擦り傷といったケガが増えていくのは避けられない。幸いあの程度のケガであれば薬草をすりつぶして塗れば一晩で傷跡も残らず治るようなものなので今の内から用意しておこう。


 しかし、体力も腕力も身体能力的に見ればサクラは既にマリアと同等かそれ以上なのだが、経験やテクニック、体格差もあるのだろうがサクラはマリアの足元にも及ばない。最近は少しずつサクラが負けるまでの時間が長くなっていっているような気もするがその程度でしかないのだ。


 そのうえ、サクラの攻撃は当たりそうで当たらない。


 サクラが木刀を縦に振り下ろせば、それを避けて振り下ろされたばかりの木刀を踏み台としてサクラの頭に膝蹴りを放ち、横に振ればマリアは自分の木刀で受け流して背後に回り込んだうえに手刀を叩きこむ。


 またサクラが木刀を突けば、マリアはサクラの木刀を巻き込みながら振り上げてがら空きになった腹に拳を食らわし、またある時は同じように巻き込んで木刀を振り下げ、胴体に蹴りを食らわせる。


 サクラが当たる直前に身を引くなどしていることからダメージを最小限にとどめているが、それを見極めて マリアのどの攻撃もマリアが手加減していることを考えるとかなりの技術である。


 「はあ、はあ」


 そしてサクラの体力の消耗は激しいものだ。先ほども言った通り体力や力はサクラの方は既に上回っているはずなのだが、マリアはまだまだ体力がある一方、サクラはヘトヘトだ。おそらくダメージを食らっていることもあるのだろうが、無駄な動きが多いせいで消耗しているのだろう。


 サクラ自身の戦い方はサクラ自身が見つけていくしかない。マリアはそう言っていたが追い込まれていくサクラが一体どこまで成長できるだろうか、親としては気になるばかりである。



・・・・・



 「ちょっと休みましょうか」

 「・・・はーい」


 ヘトヘトになったサクラが家に入ってくると、俺はマリアとサクラのためにエクンという果物から作ったジュースを用意する。そのままではたただ酸っぱい果汁なのだが、砂糖と水を加えると疲労回復のジュースとして飲むことができるのだ。


 「まだまだマリアには勝てそうにないな」

 「お母さんが強すぎるの」


 確かにマリアは強い、強すぎるほどだ。


 サクラが防御に回ったとしてもいとも簡単にマリアには負けてしまう。

 マリアが木剣を振り下ろしてそれをサクラが受け止めようとするとそれはいつの間にか突きへと変わり、マリアが突いてサクラがそれを避ければいつの間にか横なぎへと変わっている。


 「あとは経験を積んでいくだけよ。防御、避け、攻撃、そしてそれらを組み合わせて仕掛けてきた相手を返り討ちにする。これができれば十分だわ」

 「えー!そんなに!?」


 ジュースを一生懸命の飲むサクラはマリアの言葉に声を上げる。


 「そうね・・・サクラが一通りの流れを見つけ出すには相手はあなたにやってもらっても大丈夫かしら」

 「お父さんに?」

 「おいおい、無茶を言うなよ」


 木でできているとはいえ実の娘に武器を振り下ろすというのはさすがに気が引ける。


 「お父さん相手だったら私も大丈夫だよ」


 ケガをしないから大丈夫だという意味なのだろうが、お互いの信頼関係からくるものではなく俺が相手ならば当たることはないというサクラの自信から来ていることは明らかである。だが、サクラが冒険者として生き延びるため必要であるというならばやらない理由はない。はっきり言ってどこまで出来るのかわからないが、もしやるときは俺も本気でやらせてもらうことにしよう。


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