<親子三人>
目が覚めると右にはマリアが、左にはサクラが、そして俺の腹の上にはサクラの足が乗っかっていた。
何度か見た天井や壁、どうやらここはタマルがいる治癒魔法師の館に併設している病棟のようだ。どうやら丸々眠っていたのか窓の外では朝日が空を染めていて町も少しずつ騒がしくなってきている。
そんな時、俺は少しだけ開く部屋のドアからこちらを覗き込む視線に気が付いた。大して距離があるわけでもないのに額に手を当てて覗き込む猫耳はタマルである。
そして俺が目を覚ましたのに気が付いたのか、勝ち誇った顔をして手を波打つようにウネウネと動かしているのは「すべてはにゃあの腕のおかげにゃ」とでも言っているのだろう。
その後、俺としてはせっかく眠っている二人起こしたくはなかったので、あのドア前にいるタマルは夢だということにして再び眠ることにした。
・・・・・
パタン
ドアの閉じる音で俺は再び目を覚ました。横を見ればドアの方を見るマリアがいて、俺が目を覚ましたのに気が付くとベッドの端に腰を下ろす。
「おはよう、あなた」
「ああ、おはよう」
「サクラはたった今帰っちゃたわ」
あのドアの閉まる音はサクラが出ていった音だったようだ。だが、そんなことはどうでもいい。こうして再びマリアと出会えたのであればやることは一つだ。俺はマリアを抱き寄せキスをしてマリアもそれに応える。
「サクラは大丈夫だったか?」
「全然大丈夫よ」
俺はさらにマリアを強く抱きしめるが、マリアは小さな声でこうつぶやいた。
「そろそろあの子も来ると思うから」
そしてマリアの言葉を合図にしたかのように外からサクラの声がした。
「とうっ!」
窓枠に触れもせずに地上から二階の窓をくぐり抜けたサクラは体操選手のような着地を決める。窓の外から俺の声を聞いたサクラが文字通り飛び込んできたのだ。
「おはようお父さん!」
異色種は目立つ上、場合によっては戦いを挑まれることがる。そんな事情からフードの付きの毛皮を来ているサクラであるが、一気にそれを脱ぎ払うと俺のもとに飛び込んできた。そして俺たち三人は親子三人で抱き合った。この二人のためならいくらでも無茶をする甲斐があるというものだ