取引【後編】
「⋯⋯過去も今も、魔王は魔王や魔族達は⋯⋯自ら攻めて来た事はありません」
「そ、それはどう言う事、ですか?」
「⋯⋯そのままの意味です。魔王は1度も人間、他種族にも自ら魔族を率いて攻撃して来た訳ではありません。これも昔、人間が適当な噂を流し、絶対的な敵として魔王を挙げたのです。この国は魔王に対抗する術、勇者召喚の秘術を手に入れた事によって⋯⋯魔王はただの被害者です」
「まじ、ですか」
「マジですよ」
「どうして、そのような事を知っているのですか?」
「⋯⋯この国には邪教徒と呼ばれている魔王崇拝教があります。その方の人から聞きました」
「信用しても良いのですか?」
「良いと思います。先程も言いました通りに勇者様方を強制命令可能の奴隷にした事例は言い伝えられています。これは魔王教から言われた事ではなく、家が代々引き継いで来ている逸話です。魔王を共通の敵にして無理矢理勇者様に戦わせる事を考えたら辻褄が会います」
「そうですか」
「なので、協力しませか?」
「もう少し考えさせてください。もう少し質問がしたいです。今、魔王は何をしていますか?」
「分かりません」
「分からない!?」
「はい。この国にある神を崇拝する教会があり、その教皇が信託として魔王が復活すると授かったようで魔王が完全復活する前に勇者様に倒させるためにすぐに召喚しております」
「今までの魔王は何人?」
「魔王は7人、今回で8人目です」
「勇者召喚は8回も行われているのか?」
「そういう事です。そして、王家は勇者の血を取り込もうとしております」
「それが、最初の話に繋がるのか⋯⋯ん?勇者の血を取り込む必要があるのか?勇者召喚するのに?」
「魔王戦は勇者様方だけが戦うのではありません。兵がきちんと派遣されます。その時に使うためです」
「⋯⋯スイカさんも過去の勇者の血を?」
「はい、そうなります」
「ちなみに魔王に別名とかは?」
「確か、⋯⋯初代魔王は謙譲と言われて、第2魔王は慈悲、第3は忍耐、第4は勤勉、第5は救恤、第6は節制、第7は純潔、だった気がします」
「なるほど」
「あと、魔王は過去の魔王の力を使えたと言われております」
「それでも勇者達は勝った、と」
「勇者様方も何故か召喚を繰り返す程に強い力を持った物が召喚されておりますから」
「なるほど」
俺はどうするべきか。
このスイカ、第2王女と協力関係を築くか?
胡桃の顔を思い出す。俺は、復讐の為なら出来ることならなんでもやってやる!
「分かった、協力する」
「⋯⋯!ありがとうございます」
スイカは手を差し伸べてくる。
「あなたは復讐のために、私は平和のために、協力関係を申し込みます」
「ああ、でも、純血はどうしたんだ?」
「そんなの二の次です!掘り返さないでください!」
「すまん」
胡桃と重ねるのは良くない気がする。良くないか。
俺はスイカの手をとる。
・スイカと協力関係になりました
・スイカの信頼度が分かるようになりました
・第2王女スイカを協力者スイカの認識に変更
・裏切りの際ログにて、裏切りスイカになります
へ〜ログってそんな事も出来るのか。
「と、そろそろ晩御飯を食べて頂かないと怪しまれますね。そう言えばあなたのお名前は?」
「俺は⋯⋯」
ログをみる。
・スイカ(5)は名前を聞いてくる
この(5)はマイナスがないからプラスと見ていいとして、これが信頼度か?好感度と同じように表示されるのな。
信頼度がマイナスでもないし、大丈夫だろう。
「俺は翔大だ」
「分かりました。それでは、私、ワタクシはメイドに戻ります。勇者翔大様、今後ともよろしくお願い致します」
「こちらこそ」
ここまで演技が出来る物なのだろうか?
⋯⋯奴隷の腕輪回避の方法を聞いて置くべきだった。
その後晩御飯を食べながらあいつらのスキルを見る。
傲慢(遥斗)
・成長速度が上がる(メリット)
・熟練速度が上がる(メリット)
・自分が有利な状況な程強くなる(メリット)
・自分が不利な状況になる程弱くなる(デメリット)
・他者に自分の能力を完全に把握さらるとメリットの性能が堕ちる(人数によって変わる)
火炎(陽真)
・火属性の魔法なら魔力を消費しなくても行使可能
・火炎その物も操れる
雷撃(春樹)
・雷を生み出し行使可能
・電気を生み出し操作可能
・身体に電気を纏わせる事が可能
遥斗の傲慢最後の項目は俺が把握したので少しは下がるだろうか?
てか、これを皆に広めれば弱体化するのではないか?
「でも、信用されないと意味がないのか?」
ログにはないが、傲慢の内容を信用してくれなかったら完全把握に入らないのではかいか?
火炎に関しては今の所打つ手無し状態だ。
火炎は持久戦を得意とするスキルなのかもしれない。
雷撃は雷は強そうだ。いや、魔法って時点で強いだろう。
電気は光属性に属するのだろうか?
まあ、いいや。
「次は風呂か」
メイド、スイカさんに案内されて風呂場に着いた。
今日から着るのはこっちで用意された制服なようだ。
今度は廊下の途中で誰かに会う事がなかったのは嬉しかった。
スキルはクラスメイト全員把握する予定でいる。
「でかい⋯⋯」
入浴場はかなりの広さがあり、豪華であった。
王族って凄いのな。
「まずはこの王城の地図が欲しいな」
この王城の全てを把握している訳では無い。
なので、この王城の地図、それとこの国(見た事ない)の地図、ここら辺りの地形が描いてある地図、あとは知識も欲しいが⋯⋯文字が読めない。
「まずは文字を読めるようにしないと」
「なら、時間を見て、ワタクシがお教えします。それと、王城の地図もワタクシが持っていきます。少し、時間が欲しいですが」
「ああ、あり、が⋯⋯とう?」
「どうかしましたか?」
「え、あ」
そこに居たのはゴスロリメイド服のスイカであった。
「なんで居るの?」
「遥斗様、2人だけなので様はいりませんね。遥斗がお友達の所に向かったのでほんの少しだけ時間が出来ました。なので、一言助言を、⋯⋯明日の奴隷の腕輪は『魔力を扱いやすくなる腕輪』と言われます。翔大さんは魔力属性の適正がありませんので、『俺には必要ない』とか『俺には勿体ない』とか言えば乗り切れると思います。私の父は無能なので。では」
そう言って入浴場から出て行った。