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神となった異世界人は、異世界の知識をもって世界を繁栄させる。  作者: 千寿
第二章 セントリア魔導学院編
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ゼミ見学 午後1

 午前のゼミ見学で訪れた術式ゼミはほとんどがルーン文字の話がほとんどのまま終わった。

 ゼミ見学が終わったあとも授業は続くようだが、見学に過ぎないハヤト達1年生は次の見学先のゼミへと移動することとなった。


 ハヤト達一班の午後の予定は魔法戦闘ゼミと魔道ゼミである。

 セントリア魔導学院の時間割は1コマ1時間半、午前中が2コマ、午後が3コマとなっている。

 午前のゼミ見学は二時間目に見学したことになる。


 午後のゼミ見学の初めは魔法戦闘ゼミである。

 ゼミ見学ということでわかりやすいように今回は実際の戦闘訓練を見せてくれる予定だ。

 注意事項として、服が汚れないように学院支給の戦闘服(体操服)を着用と書いてあった。



「それにしても、ティアーユ先生とナタリー?先輩の質疑応答みたいなのがほとんどだったよな。」


「あれはおもろかったなぁ、他の先輩方置いてきぼりやったで。」


「置いてきぼりってより、また始まったって感じだったね。いつもあんなふうに脱線するんじゃない?」


「確かに、見学者がいるのに脱線して二人の空間を作られると困るわね。……そろそろ始まるみたいよ」



 魔法戦闘ゼミの今日の活動場所は室内訓練棟。

 いわば体育館のような作りで、高さが3階ほど、広さがそれなりにある。

 この室内訓練棟は普段授業をしている建物を研究棟を挟んだ場所にあり、万が一があっても大丈夫なような場所に立てられている。

 室内訓練棟は1階が実技を行う訓練場で、2階が見学席、3階が教職員用のスペースとなっている。

 他には、1階に救護室や2階に更衣室、トイレと必要な設備は揃っている。

 そして、魔法を行使した戦闘訓練のための訓練場であるので訓練場の壁には防御術式が描かれている。(この防御術式は術式ゼミの3,4年生の実習として施されている。)

 地面は固い砂、天井はそれなりの高さがあるので崩れたり破壊される時は仕方がないと割り切っているらしい。

 入口と見学席にはティアーユ先生含む術式の専門家が特殊な魔法陣を敷くことで壁がなくとも、ある程度までは魔法を防いでくれるらしい。

 ただし、訓練用の武具や生物は通り抜けるので注意が必要とのこと。


 もし、万が一が起きた場合は同建物に残りふたつある訓練場を使うだけなので、手加減無用と張り紙があったことを補足しておく。

 普通は破壊しないようにと言うのではないだろうか……。




「よし、見学の1年も来ているようだし早速始めるか!」



 三時間目が始まる合図のチャイムが鳴り、魔法戦闘ゼミの先生が全員揃っていることに満足しながら活き活きと授業を始める。



「では今日は見学者もいることだし、バシッと分かりやすく()り合おうじゃないか!」


「「「おう!!!」」」



 体育会系という言葉が可愛く聞こえそうな、血の気の多い人達が()り合おうという号令に最高の笑顔で喜んでいる。


 最早ハヤトは引いている。

 それはもう「あ、これはダメだ」と、アイシャの乾いた笑い声すら聞こえる。



「よし!まずは各自準備運動を済ませたものから武具を装備し、整列!五分以内に済ませること!」



 なんともざっくらばんというか、実践的というのか。

 しかし、本人たちは当たり前のように準備運動をすませ、スピーディーに武具を装備していく。

 よく見ると防具には術式が施されており、なるべく大きな怪我をしないように配慮されているのが分かる。

 とは言っても、全く怪我をしないという訳では無いので生傷は耐えなさそうだ。

 それもあるのか、魔法戦闘ゼミには女子が数える程しかいない。

 中には入るゼミ間違ってない?と思ってしまう人も混じっている。



「よし、全員揃ったな。では早速、一組ずつ組手をしてもらう。ペアはできる限り実力が同じものと組むように」



「おいおい、あのちっちゃい女の先輩誰とやってもぶっ飛ばされそうだが大丈夫なのか?」



 コウキが心配するのは無理もなく、1番小さく強さを感じさせない女生徒が1人混じっているからだ。

 そんな心配を他所に、ペアはどんどんと決まっていく。



「そうだな、最後までペアが決まらなかった3人がクリスの相手をすること。」



「いや、待てよ……。」


「どうしたんだエリス?」


「父上から聞いたことがある。セントリアに魔道士候補がいると。名はクリスティーナ、幼い頃から自身よりも巨大な猪や熊を倒したことから、大物喰い(ビッグイーター)と呼ばれる少女がいると。」


「おいおい、それがあの子だって言うのか……?」


「もしかしなくてもそうかもしれないよ。現に3対1でやるみたいだ。」


「まじかよ……」


「まさか、学院生だったとは思わなかったわ。」



 エリスから話されるまさかの正体にざわついている見学席に、魔法戦闘ゼミ主任のグレンは満足していた。


 それもそのはずで、クリス(クリスティーナ)は2年生以上に取っては知っていて当たり前の存在だが、1年生は知らない。大して強くないと侮っていたやつが、実は一番強いとわかった時の表情ときたら胸のつっかえが取れたようにスッキリとする。

 それと同時に、力の差に絶望するのではなく、目標や向上心を高めてくれればなお嬉しい。願わくば、彼女に匹敵する者が現れることを。


 グレンにとってはクリスティーナの実力を示すと同時に、彼女が満足出来る相手を探す目的がある。


 グレンや何人かの教員は、入学当時からクリスティーナの実力に気づいていたが、多くのものは気づかなかった。

 そして、クリスティーナの容姿が幼く見え、当時の身長が150cmと小さいことから何かとからかわれたり、時に嫌がらせを受けたりと苦労していた。

 それでも、力で解決することなく、力を誇示することなく耐えきる姿を見たグレンは2年に進級を機に自らが主任を務める魔法戦闘ゼミへと勧誘した。

 それからは単純で、実力と協調性が求められる魔法戦闘ゼミでグレン自らが組手を申し出ることでクリスティーナの実力を知らしめた。

 噂は広がり、その後すぐに嫌がらせなどはぴたっと止み、クリスティーナは実力を隠すことをやめた。

 本人曰く、実力を隠さなければ人から嫌われるという恐怖心があったようで、入試試験でも手加減していたらしい。



「そろそろ学院の頂点を見せてやれ。」



 そうグレンが指示を出すと、クリスティーナと覚悟を決めた3人の男子学生が訓練場中央へと歩み出る。


 クリスティーナを3人が囲むように立ち、構えたところでグレンから開始の合図がかかる。



「始め!」



 合図とともに駆け出したのは数的有利な3人組。

 僅かにタイミングをずらして、3方向から攻め寄る。

 初手から全力なのか、1番初めに動いたのは槍を持った生徒。

 火属性の魔法で身体能力を上げ、最速で槍を突く。

 2人目はそれに僅かに遅れる形で飛び上がり、上段から剣を振り下ろす。

 3人目は弓を使うようで、魔法で構築した矢を弓に番え狙い撃つ。

 タイミングをずらしているとはいえ、その間わずか一秒ほど。

 普通ならばこれで詰みなのだが、クリスティーナは違った。

 3人の攻撃が直撃する直前に炎の竜巻がクリスティーナを中心に現れ、槍の軌道をずらし、飛び上がり空中にいる生徒を弾き、放たれた魔法の矢を燃やし尽くした。

 炎の竜巻は程なくして消え、それと同時に中心にいたはずのクリスティーナの姿も見えなくなっていた。



「何!?」



 コウキは信じられないものを見たように思わず立ち、覗き込んだ。


 そして全員が目にする。

 消して目で追えないはずの速度なのに、何故か動きが分かる。


 炎の竜巻の中から姿を消したと思っていたクリスティーナは、炎の竜巻によって軌道をずらされた男子学生の腕をつかみ、空中で弾かれた男子学生に向けて投げる。2人は余計な怪我をしないために武器を投げ捨て、空中でぶつかりながらも何とか受身をとる。

 その間にも2射目を番える男子学生に向け、そのまま円を描くように走り距離を詰める。

 慌てて放たれた魔法の矢は難なくかわされ、ボディーブローが直撃する。

 そして、勝負あったと言わんばかりに停止し周りを見渡す。



「そこまで!」



 これ以上は無理だと判断したグレンにより、クリスティーナ達の組手は終了した。

 クリスティーナに対処された3人は慣れているのか、そもそも頑丈なのか腹部や腕などを抑えてはいるが立ち上がり、他のゼミ生の元へと戻っていく。



「おいおい、一体何が起こったって言うんだよ……。」


「少なくとも、相手をした3人は弱くはない。槍の一突きに関しても無駄がなく、かなりの実力があることは分かる。」



 同じ槍使いとしてエリスは分析する。



「ほんま恐ろしい人やわ。一瞬すぎてわからんはずやのに、何故か動きが分かってもうたで。」


「確かに、あれは動きが分かってもかわせないわね。上から見ているから動きが分かっただけかもしれないし……。ハヤトはどう思う?」


「間違ってたら申し訳ないけど、多分一連の動きは魔法じゃないかな。だから見えないはずなのに、動きが分かったりしたんじゃないかなって。」


「それが魔法とどう関係あるんだ?」



 コウキの疑問にエリスとアイシャも頷く。



「簡単な話、魔法使えるものなら個人差はあるけど魔法の兆候や形跡とか何となく感知できるでしょ?だからあの一連の動きが魔法だとすれば、なんとなく次の動き、つまり魔法がどこに来るのか分かってしまうってこと。」


「あー、そういう事か。なんかしっくり来たわ。」


「それと、これは完全な予想だけどあの円のような動きは多分黄金比だね。」


「黄金比?」


「うん。あの動きを見た時に思ったんだけど、なんか綺麗だなって。それで考えついたのがさっきの動き全てが魔法だということ。黄金比は外に行くほど間隔が広くなっていく。最初にいた場所が起点だとすると、小さな回転が重なって炎の竜巻になったとする。炎の竜巻が消えた時にクリスティーナ先輩の姿が見えなかったことから既に竜巻の外に居て、槍使いの先輩を遠心力で投げ飛ばした。そして、そのままの流れで円を描いて弓の先輩にって。」


「確かに、理由がなければわざわざ円を描いて移動することはない……。距離でいえば直線の方が無駄がないわけだから。」


「ほんま、ハヤトはんはようそんなこと考えつくわ。うちなんか何が起こったか理解するだけで精一杯やったのに。」


「実はどっかの国の元戦闘員とかじゃないよな?」



 ハヤトの考察に三者三様の反応があり、コウキの反応は少し外れているが……。

 優秀な学院生らしく、自分ならどう対応するか考え始めた。


 結果として、エリスは動かれる前に仕留め、コウキは盾で受け止める。ハヤトとアイシャが対応不能と答えを出した。

第四席


異世界人ハヤト(本名:?????)

ドレアスで発見された時が16歳、現在は17歳。

一年ほど経つが未だ記憶は完全に戻らず、本人もあまり期待していない。

異世界人の特徴としての才能があり、魔法の適性が非常に高い。

光属性以外ならほとんど使える。

たまに本当に17歳か疑いたくなる言動や落ち着きさを持っている。

学院では異世界人であることを公表していない。

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