特進クラス自己紹介
全ての情報は書ききれなかったです。
その都度その都度ちょい足ししていくので、情報を補完して言ってもらえればと……。
「私はエリス・アル・フォン・エアリス。歳は16、風の国、エアリスより参った。同じ学び舎で過ごす学友として、エリスと呼んで欲しい。特技は槍術と風魔法だ、以後よろしく頼む。」
番号順に始まった自己紹介は首席であるエリスから行われた。
エリスは長いエメラルドグリーンのポニーテールが特徴だ。目も髪と同じ色で、とても綺麗だ。
特技が槍術とあって、身体は引き締まりどことなく目鼻もシュッとしているように感じる。
自身の現れなのか物怖じしないのか、堂々とした自己紹介にハヤトは感心した。
「では次は俺の番だね。俺はタケミカヅチ・コウキ、異世界人タケミカヅチの末裔の一人さ。歳は18とこの中では一番上になるけど、気にせず接して欲しい。俺の特技は大盾術、いずれは王国の英雄と言われる守護騎士ヘルメスと並べるように精進したいと思う。」
日本人らしい……名前のタケミカヅチ・コウキは過去の異世界人の末裔らしい。
間違いなく日本人だろうし、わざわざ神の名前を持ってきているということはきっと、それなりのオタクだったのだろう。
まさか、ここでヘルメスの名前が出てくるとは思っていなかったハヤトは、何故か他人事にも関わらずビクッと反応してしまった。
その瞬間、コウキと目が合った気がするがきっと気がするだけだ。
「俺はエリュシオン・スカーレッドだ。歳なんて関係ねえ、さっきの2人にだって殴り合いだってんなら負ける気もしねぇ。俺はいずれ最強となる男だ、よく覚えておけ。」
相変わらずというか、そういう性格というか、俺様なエリュシオンはこの教室の中で一番小さいのを気にしているのだろう。
歳や喧嘩の強さを誇示しているようにしか見えない。
実際、第三席ということはこの中で三番目に強いということだが、本当の強さとはそうじゃないと思う。
「おい、次はお前の番だ。」
何故か、エリュシオンはハヤトに自己紹介を急かす。
「(こういうのは苦手だな……)僕はハヤトと言います。ついこの間17になりました。得意魔法という程のものはありませんが、大体それとなく使えます。訳あって常識に疎いことがあるかもしれませんが、暖かい目で見ていただければと思います。」
ハヤトを見る目は興味、嫌悪、好奇と様々だが、今はエリュシオンの視線が痛い。
内心、なにか気に触るようなことしたっけ?
と、ソワソワしてたまらない。
「はい、じゃあ次はうちやな。うちはアイシャ・ウィル・コルニクス。花の17歳や。ここに来たのは面倒な家から離れたかったから、順位とかそんなんはどうでもいいけど……そうでも無い人が多いみたいやね。まぁ、みんなよろしゅうな!」
アイシャはどことなく故郷を感じさせる雰囲気というか、喋り方というか、方言というか……。
関西にいても何ら違和感のなさそうな女子だ。
言わなくても分かるだろうが、名前とのギャップが凄すぎて脳での処理が追いつかない。
栗色のウェーブのかかった髪はどことなくお嬢様を匂わせる。
アイシャの次は何故か二人同時に立った。
最初は意味がわからなかったが、よく見ると納得出来た。
「私はイルミナ・ハイラント」「私はエルミナ・ハイラント」
「私が姉で」「私が妹」
「特技は、入れ替わり。」「入れ替わると親でも分からなくなる?」
「見分けつかないと不便だろうから、目印がある。」「赤のリボンがイルミナ、青のリボンがエルミナ。」
オレンジ色の髪を赤のリボンで左側でサイドテールにしているのが姉のイルミナ、青のリボンで右側でサイドテールにしているのが妹のエルミナらしい。
特技と言っている入れ替わりをしていたらこの時点で分からないし、何より声もかなり似ているし背丈も一緒。
ほんのわずかだが、姉の方が目がキリッとしていて、妹は垂れ気味……だと思う。
このほんのわずかな違いを目印にしなければ、リボンがない彼女らを見分けることは出来ないだろう。
そもそも隣に並んでいないと、この僅かな違いすら分からないだろう。
「俺の前にそんなインパクトの強い自己紹介されると困るんだよなぁ……、ただでさえ影薄いって言われるのに……。」
ハイラント双子の自己紹介にボヤきながら、不憫そうな男子が自己紹介をする。
彼はサム・グリフ、18歳。
身長体重も平均くらいで、短めに揃えられた髪は清潔感を表しているが影が薄い。
双子の自己紹介のインパクトが強かったのは事実だが、それを差し引いてもきっと彼は影が薄いのだろう。
是非とも、頑張って欲しい。
次はリーブ・ストロング17歳。
黒髪の短髪に鍛えられた筋肉と、恵まれた身長。
だが決してムキムキの肉ダルマという訳ではなく、引き締める所は引き締め、隆起させるところは隆起させているだけだ。
実践的な身体の筋肉が膨張したと言えばわかりやすいのだろうか……?
少なくとも、このクラスの誰よりも体がでかいのでついつい視線が向いてしまう。
一人、リーブの筋肉に見とれている人がいるが見なかったことにしておこう。
少し、目がやばかった……。
「私はエリーゼと申します。家名はありません。未だ15と修行の身ではありますが、こうして皆様と出会い、学べることを嬉しく思います。」
筋肉……リーブの次はエリーゼという少女。
15歳とまだ幼さを感じるが、それを思わせない立ち振る舞い。
おっとりとしているようで、それでいて周りをしっかりと観察している。
透き通るような水色の髪は肩にかからない程度の長さ。
瞳は水色と金色が重なったような、不思議な色合いだ。
まさに、聖女と拝みたくなるような美少女。
まだ幼さが若干残るが、それでもエリスと肩を並べるほどの美少女っぷり。
それに性格を表すような態度や雰囲気、話し方。
もしこれが猫被りだとしたら、今見惚れてる人は人間不信になりかねない。
第十席となるエリーゼ以降は特に何も無く自己紹介が進んで行った。
ひとつあるとしたら、第十三席のミラー・スカーレッドだろう。
その名の通り第三席のエリュシオンの3歳上の姉であるようで、挨拶一番にエリュシオンを叱りつけていた。
エリュシオンは公然で叱られるとは思ってなかったようで、ぎょっとした表情をしていたのが忘れられない。
いくら実力差があったとしても、姉には勝てないようだ。
それ以外は特出することはないが、第十四席のシルビア・アーネットと第十八席のマリー・ガーネットがとても仲がいいと言うことだろう。
元々、親同士が仲良く治める領地も近いため一番の親友だそうだ。
家名が似ているが、親族と言うわけではないらしい。
決して血縁関係がないとは言いきれないのか貴族社会ではあるのだが……。
残りは十一席のアルフレッド。
ハヤトと同じく家名はなく、幼少期から魔法の師匠に鍛えられ、見事学院へトップ入学した努力家である。
十二席のテロス・ボトムンドは代々、魔法の名士を輩出し続けてきた大家の人間らしい。
物心ついた時から期待され、結果を求められ、様々なプレッシャーを浴びてきた。
その甲斐あってかこうして特進クラスにいるのだが、重圧を受け続けてきたせいか人の目を気にする節がある。
十五席のゼペット・ガルブレロは代々騎士の家系らしいのだが、他の兄弟と違って体格に恵まれず、かと言って体力や筋力がある訳でもなく家を追い出された過去を持つらしい。
ゼペットはいつか見返してやる。と、独学で魔法や魔術を学び、晴れて入学することが出来た。
将来は魔道具士になることだそうだ。
家族を見返すという当初の目的は最早、どうでも良くなったと笑っていた。
十六席のソロ・スパーニャは刀術を主とした、魔法近接を得意としている。
とある流派の麒麟児と称されており、修行の一環として魔導学院に入学してきた。
このとある流派というのは、関係者以外に言ってはならない会則があり、禁を破れば破門の後、両腕を切断されるという。
なんとも恐ろしい流派かと思いきや、会則さえ守っていれば大体は許されるらしい。
十七席はダムエル。
ハヤト、エリーゼ、アルフレッドと続く家名の無い人間。
通常、家名の無い者は特進クラスに入れることが滅多になく、今年はそういう意味での豊作の年と言われている。
彼は貴族や有名な魔法士に育てられた訳ではなく、冴えない旅の魔法士から教えを受けた農民である。
その旅の魔法士はダムエルの才能に否やダムエルの親を説得し、自信の持てる伝手を使い魔導学院へ送り込んだ。
ダムエルは結果として送り出してくれた親や、魔法士に恩を返すため学院で魔法を学び、恩返しをしたいと言っていた。
十九席はネヴァン・イスト。
彼は氷界イクスにある小国出身で、イクス出身の学院生は約50年振りと教員の中では話題でもちきりらしい。
本人はそんな自覚はないようで、国を少しでも豊かにするための魔法研究が目的のようだ。
土地柄なのか、得意魔法は水魔法の氷だそうだ。
最後の二十席、ニーナ・スイリューはスイリュー拳法の跡取り娘。
スイリュー拳法はそこそこ有名らしく、教室内でも何人かは声を上げていた。
ニーナのスイリュー拳法の軽い説明を聞く限り、日本の合気道に似ていることがわかった。
詳しい違いなどはハヤトにわかるわけが無いので、どうとは言えないのだが。
女子の武闘家?拳法家らしくと言っていいのだろうか、青い髪はギリギリ後ろで結べるくらいの長さと、邪魔にならないとオシャレできるの間を取った感じだ。
このクラスにいる全員が全員、ただものでは無い。
それはそのはず、このセントリア魔導学院ましてや特進クラスともなれば秀才天才が集うクラス。
最低でも何か一つ秀でているものを持っているのが当たり前とも言える。
性格や人間性が少し歪んでいても、才能や能力は疑う余地がなく、それぞれの目的や意思は違えど魔の道を往く者。
ハヤトは人知れず、何かが起こる予感に内心ワクワクが止まらない。
何故、ワクワクが止まらないのか、ハヤト自身が理解出来てはいないが、今はまだその事に気付けていない。
ナマエカンガエルノツカレタ