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神となった異世界人は、異世界の知識をもって世界を繁栄させる。  作者: 千寿
第二章 セントリア魔導学院編
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学院との契約

ブクマありがとうございます。

良ければ評価(☆)や感想よろしくお願いします。

 

「は、はい……。」


「何も咎めたりする訳では無い、本当に話をしたいだけなのだ。」



 入学試験が終わり、宿に帰れると思ったハヤトには悲しい現実が待っていた。

 それもそうだ、重力魔法とは現代魔法史においての五大難問として有名だからだ。



 1,魔法による重力操作をし自由自在に飛行する、飛行魔法。


 2,時空を超え物資を保存出し入れする、アイテムボックス。


 3,空間を点と点で結び、瞬間を持って移動する瞬間移動魔法。


 4,世界をも超える転移魔法。


 5,生命を創造する、研究すら禁忌とされている生命創造魔法。


 以上5つが現代魔法史の五大難問である。


 上4つは統一歴以降に現れた異世界人の知識を元に、開発実験を繰り返しているが現状、

 唯一、発動まで漕ぎ着けたのは重力魔法のみ。それも使い勝手の悪い魔法としかなっていない。


 5つ目の生命創造魔法に関しては統一歴が始まる以前からの禁忌とされていて、世界を崩壊に導こうとした邪神が最も得意としていた魔法と記録されている。

 尚、邪神は光の英雄とその仲間達との死闘の末、討ち取られたと記録されている。



 しばらくして、ハヤトはライデンに案内され別室に来ていた。



「すまないな。だが、ハヤト殿が使用した重力魔法に関して幾つか聞きたいことがあった。」


「あの魔法、ですか?」


「ああ。分かっている通り、重力魔法とは現代魔法史の五大難問の内の一つだ。我がセントリア魔導学院も英知を結集して研究しているが、未だに実用化には至っていない。人を飛ばすことは出来ても、それ以降が出来ない。我々としても、きっかけとして新しい知識や考えが欲しい。勿論、ただでとは言わない。」


「待ってください。その話は試験担当の教員の人に言いました。僕の使った魔法は、決して実用化は無理だと。」


「む、あいつか……。あいつは少し特殊だ、我々が聞きたいのはその魔法の実用化ではなく、飛行魔法を完成させるための新たな切り口が欲しいだけだ。」


「そうですか……。でも、何が聞きたいんですか?もうほとんどのことは研究され尽くしてると思いますが?」


「あの魔法はどのような効果があるものだ?原理は?想像したイメージは?」



 見かけによらず研究者なのか、矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。



「ま、待ってください。順番に答えますから!」


「む……、すまない。ではまず、あれはどう言った現象を発現させるものなのだ?」


「あれは、核とした物に吸収というか、引き寄せると言うか。」


「引き寄せたものはどうなる?」


「単純にいえば、粉々にあるんじゃないですかね。ひとつ言えることは、一度吸い込まれれば出ることは不可能と言うことです。」


「不可能……か。仮にアレを今回作ったものより巨大にするとどうなる?」


「下手をすればこの世界が引き寄せられ、崩壊するかもしれません。第一、極小サイズでも制御が難しいので不可能だと思いますけど。」


「一言で言えは、アレはなんだ?」


「ブラックホール、近づくもの全てを呑み尽くす重力場。世界の、宇宙の果てにあると言われている光すら届かぬ虚空。」


「宇宙……、ハヤト殿は異界の者か?」


「……そうです。」


「なるほど、これで合点がいった。王国にも困ったものだ、初めからそうだと言ってくれれば良かったものを……。」


「……何かまずいですか?」


「いや、むしろ喜ばしい事だ。異世界人が魔導学院へと来る。それは少なからず、魔法史の進歩を意味する。君には是非、魔導学院において魔法研究を専攻して欲しい。」


「それは、断ってもいいですか?」


「何故……と言うより、どうしてだ?歴史に名を残す機会とも言える。」


「単純にそこまで興味がないからですかね?この世界にあまり不満はありませんし、しがらみの中で研究なんて息が詰まりそうなので。」


「……そうか。我々学院は生徒の意思を尊重する立場、強制はしない。では、こういうのはどうだろうか。」



 ライデンが提示したのは条件付きの契約。


 1,学院は魔法研究において、ハヤト個人に予算内からの支援をする。

 2,ハヤトは学院の支援を受けた魔法開発において、学院対する情報提供を行うこと。

 3,またそれによる情報提供料として内容を査定後、学院はハヤトに情報提供料を支払う。

 4,基本的な縛りは無いが、学院卒業までに3種類の魔法開発を行なうこと。

 5,これらの契約が守られる限り、学院はハヤト個人に対し学費の免除、及び研究室の提供を行うものとする。

 6,契約内容の変更又は破棄は、双方の合意の元話し合いにて行われる。この話し合いに関し、学院側はハヤトに対して強制脅迫等は一切禁じるものとする。

 ただし、ハヤトは学院から支援を受けている場合において、一定の成果を出さなければならない。

 7,上記すべての内容を、救世の光の神の名において誓うものとする。



 要約するなら、学院は支援をするから魔法開発をして情報提供をしてくれというもの。

 基本的にはハヤトの自由意志を尊重し、ハヤトが拒めば契約は破棄できるものとなっている。

 最後の一文は、この世界において最も尊き名に誓い、約束を違えないようにする最上位の文言である。

 これを破ったものは、汚名と不名誉に身を穢される。

 商人たちは信頼の証として多用する言葉でもある。



「こういう条件ならばどうだろうか。異世界人である君の発想や着眼点があれば決して難しい条件ではないはず。」


「仮に、仮に魔法開発をしたとして、その魔法がどころが無いものだったらどうなるんです?そちら側は一方的に損するだけですよ?」


「それはないと考えている。これは脅しではないが、セントリア魔導学院はセントリア魔導国と世界各国の支援により運営されている世界最高峰の研究機関でもある。支援を得るためだけの何の役にも立たない魔法を発表したとしても、世界中を敵に回す様なもの。汎用性はなくともいいが、何か一つでも役に立つものでないと認められない。これは君がこれから学院で過ごすにおいての心地良さと、学院から出たあとの周囲の反応に関わると言ってもいい。とてもじゃないが、君がそこまで愚かだとは思えない。」


「僕を信じてるってことですか?」


「端的に言えばそうなるか。だがそれだけでは無い、異世界人の殆どは律儀だ。中には無茶苦茶な奴もいるが、そんなものはここに来る前に弾かれる。」


「……なるほど。それならさっきの条件で受けてもいいですよ。その代わり、必要な資料とかあれば見せてくれるんですよね?」


「あぁ、それは問題ない。中には簡単に見せられないものも存在するが、実績を重ねれば見れるようになろうだろう。」


「そうか、それは良かった。では後日、契約書を渡そう。先に言っておくが、君はもう我がセントリア魔導学院への入学は決まった。次会うときは、一生徒として扱うが、問題は?」


「ありませんし、その方が気が楽でいいです。」


「うむ、それは助かる。我々も教師でもあるからな、体裁と言うものがある。是非とも君には、学院で活躍して欲しいと思っている。今日は引き止めて悪かった、他のみんなと同様に受付にて住居の場所だけ教えておいて欲しい。」



 ハヤトは宿に帰るため、ライデンは先程の契約内容を上と確認するために部屋を出て、別れた。


 ハヤトはそのまま玄関の受付まで戻ると、宿の場所を報告し、茜色に染まる街並みを眺めながら帰った。

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