魔導国へ
二章始まります。
(数字に関して統一が無かったことに気がついたのでボチボチ治していきます。漢数字だけでは無理があるので)
エルドラ王国からは、王都から魔導機関車に乗り、王国西側にある食の都オオゲツ経由。
そして今、ハヤトとダリアを乗せた魔導機関車は海の上を走っていた。
正確には、海の上に建てられた巨大な橋を渡っている。
魔導国までは、王都エルドラドから魔導機関車で約三日。
エルドラ王国を出るのに一日半ほどかかる。
エルドラ王国を出たあとは海上を走り、一度島へと上陸、補給を済ませさらに海峡を渡って魔導国セントリアとなる。
途中の島とは、魔導国から各大国に貸し付けられている土地であり、一定数の兵力を駐留させなければならない。
これらは全部で五つあり、世界の中央足る魔導国セントリアを囲うようにして用意されている。
東の大国、騎士国エルドラ。
北西の大国、帝国バルドール。
南西の大国、神樹国ユグドレア。
南東の大国、ノールット。
東の大国である騎士国エルドラは言うまでもなく、兵士がおらず国軍の全てが騎士となる国。
北西の大国である帝国バルドールは、北大陸と言われる位置にあり、同じ大陸にあるエルドラとの小競り合いが絶えない。実力主義の国である。
南西の大国、神樹国ユグドレアは神樹ユグドラシルを有す国で、自然豊かな国である。
また、海があるとはいえ帝国に比較的近い距離に存在する小国連合ガネールの設立、運営に力を貸している。
南東の大国ノールットは、学問の国と言われ単純に学問を学び極めるのであればこの国と言われている。
ノールットは大陸と言うより巨大な島である。
そして、隣接する場所に永久中立国スイベルンがあり、貴重な資料や研究成果などの相互保管管理同盟を結んでいる。
そのため、争いごとに無縁でとても穏やかな国としても有名である。
ざっくりとした地理はこのようになっている。
まだ他にも大陸や、島などもあるが今はまだいいだろう。
現在、魔導機関車は海の上を走っている。
エルドラ王国を出る前に、窓のないタイプから窓のあるタイプへと乗り換えが行われており、景色を見ることが出来る。
また、座席も個室が少なく、自由席が半数を占める。
なので夜になると停車し、乗客は各々宿に泊まることになる。
その間、点検や補給を済ませ朝の出発に備える。
勿論、ハヤトとダリアは自由席の一角に座っている。
対面は誰も座っておらず、車内に圧迫感はない。
「こっちで初めて海を見たけど、海しかないね。」
「海洋国家や海岸沿いにそんでいなければそうそう見ることは無いですからね。」
「大陸の国ってこんな感じだったんだなぁ……。僕がいたのは島国だったから、その気になればすぐ海を見に行けたからね。」
「それは、大変ですね。島国となると統治が大変だと聞きます。」
「そんなことは無かったと思うけど、確かに他国がしつこく干渉してきたりはしてたかなぁ?」
「どこの世界でも変わらないものですね。」
「人が人である限りは避けられないことだよね。というか島とか全然ないんだね、綺麗に大地が別れてるというか……。」
「それは、この世界が光の英雄によって統一された頃に当時の土の魔導士によって、ある程度の大地の整理がなされたそうです。」
「大地を整理?動かしたってこと?」
「はい、そうです。当時は今よりも人口が少なく、文明も劣っていたので、人の手が届かない島などを一つにまとめたりしたそうですよ。ですのでこの世界の島はかなり大きいものになります。」
「話を聞くだけでも魔導士の規格外さが分かるね、それ。」
「その世界の理の一端を担う存在ですから、我々のようなただの人間と比べる存在ではありませんよ。」
「さすがに比べたりはしないよ……。」
「ですが、ハヤト様ならば世界有数の実力になるとは思います。魔導学院で学び、身に付けることでそれは確実なものへとなっていくでしょう。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
合計三日間の移動を終え、二人は魔導国へと入った。
魔導機関車は国境で一度停止し、検問員による来国の理由と身分証の確認が行われた。
今回の乗客のほとんどが魔導学院への入学を希望するもので身分もしっかりしているものがほとんどだ。
差ほど時間がかかることも無く、再び魔導機関車は動き出す。
ハヤト達が超えた国境は東海岸に当たる場所で、魔導学院がある内陸へはさらに半日程度かかる。
世界最高の魔法機関とあって、学院の敷地は広く、森や湖、山や崖もある。
あらゆる事態を想定した訓練ができるようになっている。
学院は広大な土地と優秀な研究者や教授、各国からの寄付金や講師の派遣。
それらによって世界最高の教育機関となっている。
つまり、世界中から国を代表する秀才、天才たちが集まり競い合う。
ある種の代理戦争、というよりマウントの取り合いとも言える。
そして、魔導学院に毎年入学できるのはたった百人。
世界中から集まって、それでもなお百人しか入学を許されない。
しかもこれは最大数であって、年によっては極端な話十人ということも有り得る。
実際、過去には僅か六十人ほどしか入学できなかった年があり、不作の年と揶揄されている。
そして、各国は毎年入学者を一人でも多く出すために必死になっている。
ライバル国よりも一人でも多く、仮想敵国よりも一人多く、と。
入学者が多ければ多いほど、その国は教育や環境、そして才能に恵まれている証拠となり得る。
自らの国を先進的であると、各国に知らしめるためにはどうしても気になる数字だ。
「無事、魔導国に入国できたけどまだ半日も移動しないといけないのか。」
「周りが海に囲まれているとはいえ、大陸扱いですからかなりの大きさにはなります。大体、王国の五分の一くらいの大きさになります。」
「確かに島というより大陸か、下手な小国よりも大きいことになるね。」
「それに、三年に一度開催される五大会議が行われる場所であり、議長国ですから。」
五大会議とは、世界の理を司る五人の魔導士が一堂に会する集まりである。
正確には魔導士本人ではなく、正式な代理人や後見人が来る場合もある。
原則として、魔導士本人が来なければならない。
五大会議では、国際法の見直しや訂正。対魔獣魔物の現状報告、今後の方針の決定。
世界を動かすことが出来る会議とでも言えばいいのだろうか。
実際、魔導国は世界を取りまとめる立場にある国であるし、五人の魔導士は世界の際を護る役目を担っている世界最強の戦力、これらがまとまれば世界は簡単に滅ぼされてしまう。
世界を動かそうと思えば力ずくで行えてしまうが、そうならない為の会議である。
「そんな話もあったなぁ……、それだけ世界のパワーバランスがしっかりしてるんだよね。」
「魔導士は一人で国を堕とせると言われていますから、魔導士同士が睨み合い、協力し合うことで近郊が保たれています。それに、魔導士は司る理から大きく外れる事は出来ませんので。」
「理に引っ張られる、だっけ?」
「はい。正確には、『理に背けない』ですが。」
「大きすぎる力には制限があるって言うことかな?この世界はよく出来てるね。」