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神となった異世界人は、異世界の知識をもって世界を繁栄させる。  作者: 千寿
第一章 異世界の国エルドラ王国編
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喰らう者

遅れて申し訳ないです。

内なる敵(腹痛)と格闘してました。

 ソレは、食事中に近づく異物に気づいた。

 餌にした同族よりも濃度が薄く、ソレにとっては対して興味を持つことはなかった。

 魔素を取り込み、それに釣られてくる同族も喰らう。


 通常の魔物は自然に空いた魔素溜りの間欠のような穴から漏れる魔素を取り込み発生、成長する。

 ソレはその間欠から漏れ出す以上に、魔素をす吸い上げる。

 当然、他に場所から漏れ出すはずの魔素も吸い上げているわけで、他のもの魔物がそこに集まってくるのは自然である。


 ソレは己の器がそろそろ限界になろうとした頃、魔素の濃度が薄い何かがこちらに向かってくるのを感じた。

 このまま寄ってくるならいつものように喰らい、逃げるなら本能のまま狩るだけ。

 結果としてひとつ逃すことになったが、魔素は器の八〜九割は満たされている。

 この膨大な魔素に酔いしれ、このまま多くの反応を感じ取るまま狩りつくそうと動き出す。


 廃坑から出ると、今まで感じ取れなかった反応が沢山あり、中には餌にしていた魔物よりも濃い存在を感じ取れた。



「グガグ……」



 今までいた魔素溜りと、反応は薄いが数えれないほどの量がある方か、何度か振り返りながらソレは動き出す。


 視覚聴覚嗅覚味覚痛覚、五感と呼ばれるものは本来持ち合わせていない魔物。

 しかし、数名とはいえニンゲンを喰らったソレは自らの異変に混乱していた。

 そもそも(コア)と魔素のみで構成される魔物に思考などは無く、本能で動く()でしかない。

 何かを考えていること自体が異常であり、ソレは思考出来るからこそ気づかない。

 だが、確実にソレは()から()へと変質していく。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 派遣された騎士団は、今回の総指揮者であるガイルの号令で防御陣地を構築し終えていた。

 時刻は八時を回って、空も完全に暗くなっている。

 陣地の周囲と内は魔術具によって明るさを保ち、鉱山の廃坑までの道には落とし穴などの即席の罠をいくつか用意した。

 罠にかかれば魔道具と魔術具を使い、集中攻撃を。

 たとえ罠にかからなくとも、本来の作戦通りに動くだけだ。

 今回の陣形は、王国が対帝国の為に考案され実際に使われているもの。

 前衛を大盾部隊で壁を作り、大盾に施された術式を同時展開することで鉄壁の守りとなる。

 相手の突進及び攻撃を受け止め、その隙に反撃を行う。

 騎士団による集団防御と面攻撃、役割を決めることで一人ひとりの負担を少なくする事で単純化をはかる。

 五年前の改革時にこの戦術が採用され、それ以来使われている定石である。



 参謀たちと天幕に控えるガイルは、異質な気配に気付いた。

 何かは分からないが、確かに不快な気配。

 まるで全てを否定され、侮辱されているかのような不快さ。



「不快な気配がするな……。」


「異形型、ですか?」


「恐らくはな。今までこんな気配を感じたことも無い、十中八九そうだろう。」


「では、我々も向かいますか?」


「いや、お前たちはここに残り全体の把握と対応を、俺は前線に出る。アレは普通の人間では太刀打ちできないレベルだ。」


「それ程に、ですか。」


「使えるものは全て使え、王都と周辺の領地へ緊急の連絡を、最低でも十一騎士ランクの戦力が必要だろう。我らは何としても住民が避難する時間を稼ぐ、冒険者組合にも緊急事態につき徴兵命令を発動。これ以上のことはミハイル副団長かミコト様が判断するだろう。」


「通信の魔道具を使いますか?」


「当たり前だ、一分一秒足りとも無駄にできん。お前たちにはしばらく無給で働いてもらうことになるな。」


「副団長も上手いことをおっしゃる。我々のはした金で大勢の命が救われるなら騎士の本望でしょう。ただちに各方面に緊急の連絡を入れたいと思います。」



 通信の魔道具は各魔道具に刻まれたナンバーを指定することで、情報量×距離の魔力を消費することで指定したナンバーの魔道具に任意の情報を送ることが出来る。しかし、平常に使えるほど魔力消費は少なくない。よって緊急時の連絡をメインに使われる。



 ガイルの指示により全体の指揮権を委任された参謀たちは各自が成すべきことを、優先度が高い順にこなしていく。

 街には魔道具による緊急連絡と早馬による伝令。

 現在展開済みの混成騎士団の現状把握と有効打の検証。

 以下に被害を押え、住民を避難させ応援を待つ。

 ガイルの懸念が本当に起これば十一騎士が複数人動くことになる。これは国難とも言える事態である。

 しかも、タイミングの悪いことにその一人であるオオヅチ・ミコトは領地を離れている。

 しかし、嘆いている時間はない。

 こうしている間も異形型はこちらに向かってきているのだから。




 ガイルは参謀たちに指揮権を委任した後、天幕をあとにして前線へと向かった。



「ガイル副団長、どうされました?」



 天幕の入口を警備していた騎士は、急いで前線に向かうガイルに話しかける。



「異形型がこちらに向けて動き出したようだ、お前たちは伝令として参謀たちと共に控えておれ。」


「異形型が!わ、わかりました。」


「では俺は行くぞ」



 天幕から前線までは急げば一分もかからない。

 これは人数が少ないのと、異形型が相手の場合広範囲を守ることは出来ないための処置である。

 防御を厚くし、戦力を集中的に運用することで被害を最低限に抑えるのが狙いだ。

 冒険者は数は少ないながら騎士団の後方に控え、遊撃隊としての役割を与えられている。

 ハヤト達も遊撃隊として組み込まれ、初撃の魔法攻撃の為に準備に取り掛かっている。



「皆の者、聞け!廃坑の方から何やら不快な気配がこちらに向かってきている。俺はこれを変異種の異形型と断定する。事は国難である!我らが騎士団の使命はここの死守!街と王都、周辺の領地には通信の魔道具によって既に連絡をしている頃だ。だが、応援は期待するな。オオヅチを守るは我らが使命!我らがこの地で異形型を食い止め、血を流し続ける限り、我々が守るべき民の流す涙が減ると思え!旅の冒険者には申し訳ないが、緊急事態につき死地に付き合って貰うことになった。無事生き延びた暁には、オオヅチ騎士団が飲みきれんほどの酒と宴を準備することを誓おう!」



「「「「「オオォ!!!!」」」」」



 騎士は決意の目を、冒険者は生き延びた先の事を考える。


 程なくしてソレは姿を見せる。


 周囲を黒い(もや)を漂わせ、闇夜に紛れるように。

 近づき、魔術具の明かりに当たることで形がはっきりと分かるようになる。

 人のようなシルエットだが複数の腕がある。

 目や口といった顔のパーツはないはずなのに視線を感じ、何やら声のようなものが聴こえる。


 言葉には聞こえない声が戦場に響く。



「グガ?ガゴォーー!!!!」



「「「「「ッ!!!!」」」」」



「大盾隊、集団防御術式最大出力!一挙手一堂を見逃すな!!」



 魔物の叫び声に怯む騎士と冒険者にガイルは喝を入れる。

 自らもを鼓舞する為に。

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