表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神となった異世界人は、異世界の知識をもって世界を繁栄させる。  作者: 千寿
第一章 異世界の国エルドラ王国編
40/71

共喰い

 それは廃坑の奥深くに居た。


 魔素溜りであるオオヅチ近辺の鉱山、そこにある今は使われなくなった廃坑で発生した。

 (コア)は濃密すぎる魔素に寄って直接確認できず、ただそこにあるとはっきり分かるほどの存在感を放つ。

 ゆっくりとだが、確実に周囲の魔素を取り込み、自らの糧とする。

 結果として、廃坑内の魔素濃度が下がり他の魔物の発生が減ることとなる。

 これだけならば対して変化は起きないのだが、ソレは近くに来た魔物を喰らっていた。

 自らはあまり動かず、魔素の吸収をする。

 しかし、近づくものが居れば例外なく糧とする。

 そうすることでより自身の力を上げ、来たるべき時に備える。

 今はもう自身ですら確認することが叶わぬ、核に刻まれた一種の使命に従うように。



「(ギギュゥ……)」


「(グガガガ)」



 鳴き声とは理解し難い意識に直接訴えかけてくるような音が静寂の中、響く。

 より強力な個体となる為に、餌を求めて。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 鉱山麓



 ガイルは首脳部が出した決定(万が一に備えての騎士団の大規模派遣)の速さと、思い切りの良さに感心せざる得なかった。

 ガイルはミハイルと同じ副団長という立場ではあるが、ミハイルのように首脳部と顔を合わせて話すこともなければ、(まつりごと)に関わりを持とうとしなかったからだ。

 ガイルの座右の銘の『騎士とは、民の為であり領地の為ではない。』を体現するべく、副団長となってからもできる限り現場に立ち、民との交流を欠かさない。

 若きもの達が憧れ、目指すべき騎士の姿とも言える。

 例え国の頭が変わろうとも、新たな体制になろうとも、ガイルは己を貫き、騎士たらんとす。



「ガイル副団長、街から派遣されてきた混成騎士団、その第一陣の到着が完了致しました。第二陣は明日の昼頃、到着予定とのこと。ミハイル副団長は手薄になる街に残り、今回の件の全権をガイル副団長に委ねると伝言を預かっております。」


「うむ、あいわかった。到着直ぐで申し訳ないが中隊長を集めてくれ、廃坑の詳しい地図を見つけたゆえ色々と話し合いたい。」


「かしこまりました。ただちに集めてまいります。」



 五分もしないうちに来た第一陣の部隊長、計十人。

 それとガイルと共に来ていた二人を混じえ、これからの事を話合う。



「今回の件は、廃坑と狭く通常の戦術が使えん。故に中隊単位で動いてもらうことになる。今現在、冒険者に依頼し騎士を二個小隊を廃坑の調査へと向かわせている。これを何度か繰り返し、異変の正体を探るつもりだ。」



 現在、調査に向かっているのは狭い場所でも立ち回れる術を持つ騎士を選抜し、そこに伝令と冒険者を混成し廃坑へと送り込んだ。

 だいたい、ひとチーム六人程になるように数を調整し、現在八箇所を調査中。

 スピード優先と伝えてあるので、そろそろ戻ってきてもおかしくない時間だ。



「む、なんだか外が騒がしいな。」



 ザワザワとする人声は、会議を執り行っている天幕に段々と近ずいてくる。



「会議中申し訳ありません。しかし、至急ガイル副団長にお伝えしたいことがあるとのこと!」


「構わん、申せ。」


「では、俺の方から言わせてもらう。」



 伝令の後ろに居た冒険者は壮年の男が天幕に入り話を始める。



「確か、調査に向かった冒険者チームのリーダーだったな?」


「あぁ、その件だ。俺の仲間がさっき戻って来たんだが、とてもじゃないが話せないんでな、俺が変わりに来た。」


「して、伝えたいこととは?」


「異変の正体を見つけた。」



 冒険者の男は悔しながらに話を続ける。



「恐らく異形型だ、それもかなり力をつけてやがる。」



 仲間を死地に向かわせたことに対する後悔の目。



「一緒に居た騎士は時間を稼ぐといって俺の仲間を逃がしてくれたが、それでも直ぐに追いつかれた。限界まで魔法を使い続けてボロボロになりながら逃げてきた。騎士が易々と魔物を逃がすわけがねぇ、殺られたと見てまず間違いないだろう。」


「そうか、奴らは騎士らしく……。それで、追ってきた魔物は?異形型だとすればここもすぐに危ういが。」


「いや、それは今のところ大丈夫だ。何故か外までは追いかけてこなかったらしい。逃げることに必死だったらしいからどこまで追われていたのかも分からんらしいがな……。」



 アレは異形型だと、息が絶え絶えになりながら必死に訴えてきた魔法使いの仲間がいい加減なことを言うわけが無いことを冒険者は知っている。



「いや、信じよう。仮に異形型だとして、過去にも数度しか見つかっていないものだ、型にはめて考えるのは愚行だろう。ひとまず厳戒態勢を引く、無事逃げ延びてくれた者には休息を、他のものは各自戦闘準備を行ってくれ。」



 冒険者の男の目が、力いっぱい握られた拳が、ガイルには真実を語っていると思わせた。

 恐らく犠牲になった騎士には申し訳ないと思うが、今は何より行動に移さねばならない。

 彼らが身を呈して託した情報を有効に活用せねば、それこそ彼らに対する侮辱。

 冒険者を労い、いつでも動けるように指示を出す。

(もはや緊急事態なので指揮系統統一化のためとガイルは判断し、冒険者の男もそれに従った為、ガイルが指揮することになった。)



「集まってもらった中隊長達には申し訳ないが、大隊編成で行く。」



 これよりは緊急事態、己が命だけを考えているようでは助かる命も助からないだろう。



「全騎士に告ぐ!調査に向かった冒険者より、異形型と思わしき強力な個体と接敵!現在位置は不明!ただちに防御陣地を構築し、大隊長の指示に従え!」



 天幕から出たガイルはその場で叫び、指示をだす。

 例え異形型ではなかったとしても、騎士があっという間に殺られるレベルの魔物が発生していると言うだけで問題である。

 それに、実際に接敵した冒険者がいる以上、信じぬ訳にもいかない。


 日も落ち始め、辺りは暗くなり始めている。

 鎧の擦れる音に指示を飛ばす大声、魔術具の設置など騎士達は例外なく、忙しなく動く。


 過去には小国をも滅ぼしたと言われる異形型、その存在が確かであるならば何としてでも討伐しなければならない。


 例え、ここにいる全員が犠牲になろうとも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ