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ミリスの説得により、あまり話したがらないダリアとそれを良しとするハヤトは話し合いをすることになった。
命を預ける仲間として、ミリスの言っていることは正しいので二人が否定しきれなかったからだ。
三人は組合にある部屋を借り、そこで話し合うことにした。
「はい、じゃあ言い出しっぺの私から改めて自己紹介するわね?私はミリスよ、家名は今はもうないわ。昔は子爵家の末娘だったけど、私は家を出たわ。ダリアとは王立魔法学院で知り合ってその時に冒険者として活動を始めたわ。ダリアとはその時に仲良くなったわね。卒業後は一度冒険者家業を休んだけど、その後は冒険者を続けて二年前に組合員になったわ。貴族をやめて十年は経つから、そこら辺のしがらみはないと思ってくれていいわ。得意魔法は火系統で戦闘スタイルは近接が得意よ。」
ミリスは二十代ながら冒険者歴十年以上のベテランで、冒険者としての能力も高く、元貴族であることから礼儀作法は完璧、どんな相手にも物怖じしない姿勢から上位冒険者に限りなく近い中位冒険者として活動していた。
二十四歳になった時にこのままでは結婚はおろか、恋人すら出来ないと思い組合員に転向。
その時にオオヅチ支店の組合長から冒険者を続けるように説得されたが、意思は固く、王都の組合長に推薦される形で王都勤務へとなった。
組合員としての主な仕事は試験官。
新たに冒険者になろうとする新人の実力を見極め、時に諦めさせる仕事だ。
あとは雑務を手伝ったり、男を見定め……冒険者としての実力を見定めたり、時に冒険者志望の新人にイタズラをして組合長に怒られる。
あとは今回のように、組合長からの指示で変わった仕事も引き受けている。
「はい、次はハヤトくんね。」
「はい、異世界の地球という星にある日本と言う国から来ました。経緯とか、こっちに来ることになった理由とかはまだ思い出せないので中途半端な知識と記憶しかないです。名前もまだ思い出せないので、こっちではハヤトと名乗っています。以前、ドレアスで暫く居たのでこの世界のある程度のざっくりとした歴史とかは分かります。基本的に療養生活だったので本当にちょっとだけしか知りません。魔法は光と闇以外なら適性があるので使えます。魔法による後方支援がメインです。ダリアとはドレアスにいた時にドールさんに護衛兼案内役として紹介され、そのまま今も護衛として一緒にいます。」
細くするとすれば、ダリアは自らの意思でハヤトの護衛となったため、ドールが何かと理由をつけてハヤトに護衛兼案内役として紹介されている。
この事実を知るものはごく僅かで、周りの騎士からは特別任務だの、選考試験のひとつだのと噂されている。
「これくらいかな……?以上です。」
「おっけーよ。はい、次はダリアね。」
「分かりました……。私の名前はダリア・ソルティア・ホーガンズ。建国当時から北方の大都市ソルティアを守護するホーガンズ家の一族です。今は双子の姉が十一騎士に任命されたことで父上が爵位を譲り、辺境伯になっています。得意武器はこれといってありません、大抵の武器ならそこそこに使えます。魔法も同じようなものなので、器用貧乏なのです。」
ダリアの言うそこそことは、その道を極めたものよりは劣るが、下手な使い手より巧みに武器を操る。
訓練したことがないものは無理だが、ある程度の修練を積んでいれば使えるようになる。器用貧乏というより、オールマイティーと言った方が正しい。
これといった決め手がないのは確かだが、その分弱点がないとも言える。魔法に関しては発動スピードが若干遅く、かと言って威力は普通なので近接戦の補助や、相手の隙をついたり、作る程度にしか実践では役に立たない、いわゆる魔法戦士擬きのようなものだ。
だがしかし、騎士としての実力は高く、騎士団内で役職には着いていないが、次期十一騎士候補と目されているほどだ。この国でいえばかなりの強さにあたり、それを知る騎士達からは羨望の眼差しで見られている。
本人からすれば特にこだわりは無いが、双子として比較され続けてきたことに対してコンプレックスはある。槍術が国内随一とされる姉とこれといって突出したものがない妹、次第に親の期待は姉に寄り、それを察したダリアはただのダリアと名乗りドレアス領で騎士として仕えることにした。
魔素の森と隣接するドレアス領はその土地柄、魔獣との戦闘が多く一芸に秀でるよりも多芸の方が役に立つ。
ドレアス騎士団長は別格であるものの、ダリアにとっては自らの力を伸ばせる場所であった。
そして気づけば、ソルティア・ホーガンズの娘としてではなく、ただのダリアとして次期十一騎士と目されるまでになった。
「ですので、私はあくまでただのダリアとしてここにいます。姉も今更出ていった私のことは気にかけていないでしょうし、父上も私のことは忘れているでしょう。」
「ダリアは本当にそれでいいの?」
「もう十年も前に決めて出てきました、それに今こうしてハヤト様と共に行動ができています。不満も後悔もひとつもありません。私を必要とする誰かが、私を認めてくださればそれでいいのです。」
「そっか……、ダリアがそれでいいならそうするけど。」
「そこら辺はあまり気にしちゃダメよ。ダリアもそれくらいはなんとも思ってないし、ソルティアに行くことも多分ないから。あそこは帝国との前線基地みたいなもんだし、人殺しの戦争に参加はしたくないでしょ?」
「うっ……、それは絶対に行かないね。もし魔法で人を殺しでもしたら、実感が湧かなくて感覚が麻痺しそう。」
「それがわかっているなら大丈夫そうね。あそこでは対人戦重視の土地柄だからね、そっち系の冒険者は傭兵としてソルティアに流れたりするもんよ。」
「ですから、私がソルティアに帰っても役には立たないのです。私の能力は騎士と言うより冒険者よりなので。それに、騎士として見返す前に、姉は届かないところまで上り詰めましたので。」
「生まれが違えば、かなり上位の冒険者になれるくらいの実力はあるんだけどね。あの時誘っても断られたから私は諦めたけど。」
二人は魔法学院時代に小遣い稼ぎと称して、冒険者活動をし、実践訓練をしていた。
一年という期間だけだったが、ミリスはダリアの才能を見抜いていたと言える。
「あとね、ハヤトくん。ひとついい?」
「なんですか?ミリスさん。」
「その、ミリスさんてのやめない?同じ歳のダリアは呼び捨てで私だけさん付けって、同じパーティーメンバーとして距離を感じるのだけど。」
ついでに、ミリスは最近の不満をぶつけた。




