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神となった異世界人は、異世界の知識をもって世界を繁栄させる。  作者: 千寿
第一章 異世界の国エルドラ王国編
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地下鉄道蒸気機関車

 ボォォォ!という音と共に、ゆっくりと列車は動き出した。


 午前十時半、王都エルドラ発南方方面行き。


 速度は次第に早くなり駆動音が激しくなる。

 外の景色を見れることも無く、窓すらないのでどれくらいのスピードが出てるのかは分からないが、馬車の三倍速いということはそれなりに出ているのだろう。


 蒸気機関車は地下のトンネルの中を走るため、音が響きうるさい。

 列車の外装や内装にも音を反射させたり、吸収する素材使い、できる限りの防音吸音をしているがこれでは眠れる気がしない。

 個室レベルになるとこの音もさして気にしない程に軽減されるらしい。


 ダリアとミリス曰く、深夜走行になると客車に施された魔法陣により寝れる程度には音が軽減するという。


 客車自体が魔術具になっていて、補給する街や都市で魔力も補給するようだ。

 魔法が使える冒険者や、その地を治める魔力を持つ貴族や代官の仕事である。

 冒険者からすれば魔力を補充するだけで、安全に収入を得られると人気の依頼らしい。


 最高速度になったのだろうか、揺れはするものの安定する走りになった頃、車内アナウンスが流れた。



「当列車は最高速度に達し、走りが安定しましたのでご自由にお(くつろ)ぎください。食堂車によるお食事に関してはあと一時間ほどお待ちの上、ご利用願いますようよろしくお願い申し上げます。尚、ドリンクに関しては只今より御提供させて頂きますので、給仕スタッフまでお声がけ下さい。」



 どうやら料理に関しては、今から調理に取り掛かるようだ。

 特に用事はないので、ハヤト達は思い思いの時間を過ごす。


 ミリスは食堂車に行くために部屋を出て行き、ダリアは武具の手入れや持ち物の確認。

 ハヤトは最早、癖になっている魔力訓練をしながら考えつく魔法を羊皮紙に書き起こしていた。

 魔法文字や魔法式を理解出来ていれば、魔法陣を書き起すことが出来、道具と素材があれは魔道具、魔術具を作ることはできるのだが、残念ながらその知識も、物もない。

 ただ単に、使えるかもしれないと考えついた魔法を忘れないようにメモをしているのだ。


 そうしているうちに二時間ほど経ったのだろう、痺れを切らしたミリスが昼食の催促に来た。


 列車で出される料理は有名らしく、そこら辺の下手な高級宿より美味しいという。

 食材は停車駅でこの地で取れた新鮮なものを取り寄せ、その場でメニューが決まる。

 料理が出てくる直前までなにが出てくるのかが分からないのだ。


 しかも、今回は三日分の食事券があるので昼と夜はコース立てになっている。


(個室の場合、希望すれば部屋まで料理を運んでくれる。)


 数年前、冒険者として列車に乗った時は乗車券が高い為、料理は一番安いものを食べてたらしい。

 料理のランクは細かく分けて五つあり、上二つがコース料理となっている。(今回は二番目のランクのコース料理になっている。)

 一番安いのがパンやスープ、サラダといった単品料理。

 その次がサラダ付きパスタ、最後がいわゆるプレート物。主食はパン、米、芋。メインはパスタやグラタン、肉料理などその日のメニューから選ぶ。スープは二種類から選ぶことができ、サラダを含めた四品になる。

 もちろん、仕入れの状況で変わることがあるのでその都度、給仕スタッフに聞く方が良い。


 そんなわけで、前回ろくに楽しめなかった食事を楽しみにしていたミリスは、昼食の時間になるまで軽くお酒を飲み待っていたという。

 しかし、時間になれど二人は来ず、ついに我慢しきれなくなり部屋まで二人を連れ出しに戻ってきた。



「ほら二人とも何してるのよ!早くご飯を食べに行くわよ!」


「もうそんな時間か、気づかなかった。」


「ハヤト様はずっと集中しておりましたから。」



 時刻は午後十二時半。

 食堂車には昼食を食べるべく、ほとんどの席が埋まっている。

 ミリスが席を確保していなければ、食事はかなり遅くなっていただろう。

 ミリスが確保していた席に座ると、給仕スタッフがナフキンやナイフやフォークなどの食器類を並べ始める。

 予めミリスがチケットを提示していたため、タイミングを見計らっていたらしい。


 料理ははや過ぎず遅すぎずの良いタイミングで出され、どれをどう食べれば良いか説明をしてくれるので気楽に食べられていい。

 料理費もちろんだが、パンも暖かい物が出されるので厨房で作っているのだろう。

 この列車のどこにそんなスペースがあるのか不思議で仕方がない。


 後に聞くと、食堂車は一車両だが厨房は半車両程のスペースがあるらしく、厨房を挟んで食堂車の反対側に個室があるようだ。

 個室の客は大抵、部屋で食事をとるのでこのような作りにしているという。

 トイレは水周り関係なので場所で言う厨房の隣の位置にある。


 もっと料理について感想とかあるだろうと思っているのだろう。しかし、隣で必死に食べるミリスを見てからは美味しさの感動がなぜだか減ってしまったのだ。

 料理は逃げないのにあんなにも必死にならなくても……。それに目的地に着くまで三日あるのだ、少なくともあと五食は食べられる。

 僕は給仕の人がミリスのがっつきぶりを見て、思わず苦笑いをしてしまっていたのを見てしまった。

 プロであるはずの人が思わず苦笑いをするのだ、それほどまで衝撃的だったのだろう。



 昼食は午後二時になる頃には終わっていた。

 今は最後にでてきたデザートと紅茶で一服している。

 昼食なのでそこまで量は多くなかったが、コース料理は不思議とお腹がいっぱいになる。



「ふぅ……、美味しかったぁ〜。」


「ハハハ……、それは良かった。」


「なによ、ハヤトくんは感動が薄いんじゃない?」


「いやー、あれだけ必死に食べるミリスさんを見てるとねぇ……。なんというか」


「え、そんなにやばかった?」


「ミリスはもう少しマナーというものを勉強した方がいいのかもしれませんね。かなりの視線を集めていましたよ?」


「うっ……。いいじゃん、ちょっとくらい。」


「アレがちょっと、ねぇ……。ダリアはどう思う?」


「さすがに見るに耐えませんでした。もう一度食事のマナーを一から教えなければならないでしょう。」


「あははははぁ……、マジ?」


「「マジ(です)」」

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