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神となった異世界人は、異世界の知識をもって世界を繁栄させる。  作者: 千寿
第一章 異世界の国エルドラ王国編
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初依頼、魔素の森③

 周囲を警戒していたダリアが、それにいち早く気づいた。

 地表は暗く、空はまだ赤黒く染まる時。

 森の方角から漆黒の矢がハヤト目掛けて飛んできた。



「っ!あぶない!」



 すんでのところでダリアに押し倒される形で矢を交わした。

 ミリスは状況を察し、魔道具の光を消し腰を落として身構える。



「何が……」


「しっ、静かに。そのまま伏せていてください。何者かに狙われています。」


「!?……多分、魔法ではなかったよ、痕跡がない。」


「いえ、恐らく魔法は使われています。それも内魔力での身体強化でしょう。気配はありませんが森の方から撃たれました。」


「そんな遠くから!?」


「恐らくはどこかの機関に所属する暗殺者でしょう。」


「二人とも無事ね?ここじゃ相手に分があるからどうにかして駐屯地に戻るわよ。」


「それなら僕が魔法で穴でも掘りましょうか?」


「それが一番早いかもね、でも魔力持つ?」


「それは大丈夫ですけど、今から魔法を作ることになるので時間稼ぎお願いします。」


「ハヤトくんはサラッとすごいこと言うのね、分かったわ時間は何とかする。でも、相手が未知数だからあまり期待しないでね?」


「なるべく急ぎます。」



 ハヤトがイメージするのは穴というより、塹壕。緩やかなカーブを数回描き、駐屯地へ向かう掘り下げた塹壕。

 駐屯地まであと三百メートルも無いくらい。全力で走れば一分もかからないだろう。



「《我が前に道を示せ!》」



 発動は一瞬、効果は即時、だが維持はせず、走り抜けた先から左右に寄せられた土は塹壕に崩れ落ちる。


 開けられた道はすぐ閉じ、舞い上がる土煙によって視界をふさぐ。


 いくら優れた狙撃者であろうと、相手のいる場所さえ分からなければ撃たれようもないとの判断をしたからだ。

 ただ、自らの魔法で土に押し潰されるかもしれない。(いささ)か逃げるためだとはいえリスクが高すぎる。アドレナリンというのは恐ろしいものだ。



 相手の狙撃より自らの魔法で生き埋めにされそうになりながら何とか駐屯地の門まで走り抜けると、何がとかと陣形を整え終えそうな騎士と、バラバラながら武器を手にとり駆け出す冒険者が門の内側で待ち構えていた。



「そこのお前たち!止まれ!これは何事か!」



 展開している部隊の隊長であろう人物が、制止の声をかける。



「待たれよ!私はドレアス第一騎士団所属、騎士ダリア。今は任務によりこの地に来ている。」


「私は冒険者組合所属、特認試験官のミリス。こっちの彼は冒険者ハヤトよ。身元の保証は冒険者組合とドール・ドレアス様が保証しています。」


「そんなもの達がなぜ大規模な魔法を使いここを目指す!普通に入ればよかろう!」


「僕が何者かに狙撃されました、すんでの所でダリアに助けてもらい、逃げるために土魔法を使いました。」


「狙撃だと?どこから狙われた?」


「おそらく森です。魔法の類も感知出来なかったので凄腕の暗殺者でしょう。それよりも、まず中に入れていただきたい。詳しい説明はそこでします。」


「致し方あるまい、その話が真実ならば助けぬわけに行かないか……。だがしかし、まだ疑念が晴れた訳では無い、一人ずつだ、中に入れ。」


「分かりました。ハヤト様、お先にどうぞ。」


「うん、ありがとう。では僕から入ります!」


「悪いが一時的に拘束させていただく、冒険者組合に確認が取れ次第解放する故。」



 門の中へ入ると、腕を後ろ手に縛られ、武器となる杖と短剣を回収された。


 次はミリス、最後にダリア。


 ミリスは冒険者の中に見知ったものが多く、即解放。ダリアも同じく証明が容易かった為拘束すらされることは無かった。


 問題はハヤト。

 王都での知り合いは愚か、この世界に来てまだふた月ほど。

 ドールがいるドレアス領は遠く、冒険者組合の組合長は王都にいる。

 魔法の師でもある老師もまた王都にいる。

 何が言いたいかと、身元を証明できる人物がいても早くても一日はかかるということ。

 それに、何者かに狙われている状態。この場に結託しているものがいないとも限らない。


 監視付きとはいえ、なんとかダリアが近くにいてはくれるがずっと守られていることは出来ない。


 駐屯地中は夜通し警戒モード。

 既に中にいたものも身元の確認が行われた。


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