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神となった異世界人は、異世界の知識をもって世界を繁栄させる。  作者: 千寿
第一章 異世界の国エルドラ王国編
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初依頼、魔素の森②

 ハヤトの魔法で脳天を貫いた魔獣を頭を下にして木に吊るし、その下に穴を掘ってあらかた血を抜く。

 そうすることで肉が痛みにくくなるし、持ち帰る際、血抜きした分軽くなる。


 血抜きにはしばらく時間がかかるが、途中ハヤトが思いついた魔法のおかげで素早く血を抜くことに成功した。

 太い血管にある程度の勢いをつけた水を流し続けることで血抜きは素早く終えることこそ出来たものの、勢いを誤ってしまい近くにいたハヤトは血塗れになってしまった。

 直ぐに火と水魔法で生み出した温水で体や衣服を洗ったが、染み付いた臭いまでは取れない。

 さすがに血の臭いが染みた服を着て森で狩りをしては魔獣に気づかれるし、メンバーに迷惑になる為、駐屯地に戻ってからは二人とは別行動になった。


 ハヤトは午前中に設営したテントで着替え、その間に二人はイノシシの魔獣を組合が経営している解体屋に持っていく。

 解体には時間がかかる為、木札を渡され後で交換となる。

 待ち合わせ場所の組合前には丁度のタイミングで三人が揃った。



「あの魔法は慣れるまで控えた方がいいよ。毎回血を被ることになるから。小型の魔獣で練習してからの方が、絶対にいいよ。」


「分かってます……、もっと小型で試して改良します。」


「魔法自体は便利だから、ちゃんとした形にさえ出来れば冒険者相手に売れると思うよ。だから元気だして?」


「ありがとうございます、ミリスさん。とりあえず、もう一度森に行きましょう……。次は出来れば食用じゃ無いやつがいいです。」


「なら森の奥かなぁ、さっきの何倍かは時間かかるから、気をつけて行動しないと途中で気づかれちゃうよ。その場合はそっちを優先するけどそれでもいい?」


「その時な諦めます。」


「りょーかい、なら行こっか。」



 再び森に入り、歩くこと三十分ほど。

 その間に何度か魔獣と接敵しそうになるも、事前に気づき避けることで鉢合わせることはせずに済んでいる。



「それにしても、この森ってどれくらいの広さがあるの?」


「縦が10km横が3kmと言われています。さすがに王都側からだけでは管理仕入れないので、近くにある街と合同で管理しています。その気になればこのまま突き進めば、その街側から来た騎士や冒険者と会うことがあるかもしれません。」


「かなり広いんだね、てか反対側はそうなってるんだ。」


「二人ともそこで待ってて、魔獣がいたから少し見てくる。」



 ミリスは斥候の役を引き受け、先程から魔獣がどのタイプなのか調べに行っている。



「ただいま、食用じゃないやつだったから行こうか。見た目もかなり気持ち悪いやつだからぱぱっとやっちゃってね。」



 向かった先にいたのは巨大な昆虫。全長は約4mほど。

 恐らくメスのカブトムシだと思われるそれは、へし折ったであろう気に頭を押し付け蜜を吸っていた。

 周りには同じように蜜を吸われた木が数本倒れていた。



「あー、これはちょっと気持ち悪いね。デカすぎるし逃げられないようにしないとな。」



 昆虫の魔獣はハヤト達に気づく気配もなく、蜜を吸うのに夢中だ。

 ハヤトは道中練り上げた内魔力を魔獣の周辺に向けて放出した。



「《彼の者を大地へと縫いつけろ!》」



 魔獣の周りの大地が盛り上がり、生き物のように魔獣に襲いかかる。

 大地へと縫いつけるように巻きついたそれは、役目を果たしたと動かなくなった。

 自らの状況に混乱している魔獣は直ぐに抜け出すことが出来ずにもがいている。



「こいつは硬そうだな……」


「《水刃よ、彼の者を切り裂け!》」



 ハヤトが右腕を手刀の様に上から下へ勢いよく振り下ろすと、指先の辺りから発現した水の刃が側面から魔獣の首を切り裂いた。

 魔獣の首(?)、接合部を一刀両断とは行かなかったが、半分以上を切り裂くことが出来た。

 中から気持ちの悪い液体が溢れ出てき、魔獣の身体がピクピクと痙攣している。

 魔獣に当たらなかった水の刃は地面と木の枝を切り裂いていた。切れ味は抜群のようだ。



「さすがに真っ二つとはいかないか。」


「もっと魔力を込めればできるとは思いますけど、今のままそれをやると下手したら動けなくなりますね。」


「無茶をしなくても一撃で倒せたのですから、問題はないでしょう。早速魔石と羽根をを回収しましょう。このタイプの魔獣の魔石は首の付け根にあることが多いです。取り出し方は首を切り離して、胴体側の切り口の中心部を切っていけば見つかります。羽根は覆っている甲殻を付け根から切り離せば簡単にとる事が出来ます。外傷がないのでこの甲殻も採取しておきましょう。」



 ダリアに説明されるがまま必死にハヤトは採取をする。魔道具屋で買ったマルチツールを解体用ナイフで切り刻んで魔石を探した。

 幸い、込める魔力量を増やすとナイフのサイズも大きくできたので、手や腕を死骸に突っ込む真似をしなくて済んだ。

 蟲系の魔獣の魔石は黄色系の色をしている。

 透明度が高くなるほど、純度が高く価値も上がる。

 蟲系の場合、黄金色や琥珀色の透明が最上級である。

 今回は残念ながら濃い緑色だったため、質はそこまでだったが、十センチ程のサイズとなる為そこそこにはなる。

 切り取った羽根は丈夫だが、薄いため同じく切り取った羽根を覆っていた甲殻の間に挟んで持ち帰ることにした。


 解体が終わる頃には空は赤く染まり始め、急いで戻らねば暗闇にやってしまう。



「さ、採取は出来たわね。日も落ちてきたからさっさと戻るわよ。さすがに日が暮れると森の中は移動出来ないからね。」



 帰り道は幸い、魔獣のせいで迂回しなければならない事はなかった為、来た時よりは短い時間で森から出ることが出来た。

 入ってきた門からは離れていたため、柵沿いに歩き門を目指す。

 門までは五分くらいで着いたが、日はすっかり落ちきり辺りは薄暗くなっていた。

 門には篝火が置かれていたが、駐屯地までの道のりは持参した道具で賄わなければならない。

 これは、光につられて魔獣が駐屯地まで来ないための処置だ。

 駐屯地自体、木の柵というか壁で森側を覆っているためそこまで光は漏れていない。



「火の魔道具を使うから、あまり私から離れないでね。」



 魔道具が照らす範囲は直径五メートルほど。端になるほど光は薄いので明かりという意味では三メートルくらいになるだろうか。



「森がなければまだ明かりはいらないんだけど、こればっかりはエゴよね。」



 羽根と甲殻を背負う形で運んでいるハヤトは静かにミリスの背中をついて行った。


 重さは見た目ほどはないが、サイズが大きいためすごく持ち運びにくい。魔石はミリスのカバンの中にしまわれている。

 そしてダリアは周囲の警戒をしていた。

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