ギルド長
訓練場でダリアに膝枕されていたハヤトは、起き上がり土を払い、ミリスの言付け通り、組合長室に向かった。
「それにしても、ミリス?さんとダリアが同期だったなんて驚いたな。」
「同期と言っても、私が騎士になってミリスは冒険者になりましたから。会うことは滅多いないです。」
「僕はてっきりダリアは友達がいないのかと……」
「なっ!何故ですか!」
「だってほら、他人を寄せつけない雰囲気というか、騎士団でも訓練中みんなからビビられてたし?」
「わ、私にも友達くらいいます。……三人ほど。」
「うん、聞いてて悲しくなってきたよ。ごめんね?」
「謝るなら憐れまないでください……、それに着きましたよ。」
「う、うん。そうだね、入ろうか。」
コンコンコンと組合長室のドアをノック。
「入りたまえ。」
「失礼します。」
許可を取りドアを開けてはいると、そこにはクマがいた。
本当の意味のクマではなく、比喩表現的な意味でのクマだ。
ドールほどでは無いが骨格と筋肉が膨らんでおり、左目には縦の切り傷の痕が目立つ。
一瞬、ここ組長室と間違ってない!?と思ったほどだ。
まぁ、冒険者組合の長だから、ある意味組長なのだが。
「ん?どうした?入って構わんよ。」
「あぁ、失礼しました。お邪魔します。」
「すまんね、わざわざ。君のことは国の方からも報告は受けているよ。正直、冒険者組合に来てくれてほっとさえしている。」
「どういうことですか?」
「簡単に言うと、君を欲しがる組織はいくらでもある。国の組織や我々冒険者組合のような国際的組織、それこそ犯罪者の組織もだ。だから、君には護衛が着いているし、取り合いによって流血沙汰を避けるためにも君の自由意志優先されている。」
「なるほど……。それって異世界人だからですよね?」
「まぁ、その通りだ。異世界人のこれまでの功績を考えれば必然だな。」
「僕は記憶がいくつか思い出せないままなので役に立つとは思えないんですけどね。」
「だが、徐々に戻ってきてはいるんだろ?」
「一応は」
「なら問題は無いな。話が逸れたな、早速だが冒険者組合は君を冒険者として登録することに異論はない。」
「おぉ、よかった。」
「だがしかし、異世界人である君には色々と厄介事が降りかかるだろう。そのためにこちらから信用出来るやつを用意する。初めは仮でいいからそいつとパーティーを組んでくれ。」
「それなら問題ありません。護衛として既に私がいますから。」
「む……。だがしかし、君は騎士団の所属だろ?上官に命令されてその全てを跳ね除けられるとは思えん。ハニートラップなどでいつ引き抜きをするかもしれん相手を傍に置くのはリスクが高すぎる。」
「問題ありません。例え騎士団がハヤト様を利用しようとしても、私はハヤト様を優先すると決めています。そのためには騎士団を敵に回すことも厭いません。これは上官であるドレアス様からお許しも得ています。」
「だがしかし、言葉だけでは……」
組合長の言葉を遮り、待ってましたと言わんばかりに羊皮紙を取り出した。
「こちらに書面で用意しています。」
「随分と準備がいいじゃないか……。」
(組合長さん、こめかみがぴくぴくしてますよ……)
「それに私は過去に冒険者登録しているので、冒険者活動にも問題なく参加できます。」
「ぐぬ……」
「もう諦めなよ組長」
ハヤトたちの後ろにミリスがいつの間にか居た。
「ミリスか、部屋に入る時はノックくらいしろといつも言ってるだろ。それに組合じゃない、組合長だ!」
「もう、細かいこと言ってるから子供たちから嫌われるんだよ?」
「それは関係ない!それに大事なことだ、俺は組織の長としてここにいるのだから。」
「その護衛なら大丈夫だってずっと言ってるのに聞かないからよ。」
「はぁ……全く疲れる。もういい、ならお前が責任をもって世話をしろ!これから暫くはこの三人でパーティーを組んでもらう。これは組合長命令だ。」
こうして、組合長の精神的疲労からパーティーメンバーが決まった。
(あれ。僕蚊帳の外じゃね?でも、ダリアは満更でもない顔してるしこれでいいのか?)
「あのー、男女比率というかそこら辺は……」
「それはもうパーティーメンバーでの話だ。俺には関係ない、自分たちで話し合って決めることだ。もう今日は疲れたから終わりだ、また明日組合に来い。以上だ。」
現在のパーティーメンバー
リーダー(?)ハヤト
メンバー、騎士ダリア、組合職員ミリス。
パーティー名、未定




