変わらない日々
はじめまして。ちゃーもりです。
何となく個人的に好きな感じの恋愛小説書こうかなと思って書いてみました
俺、こと忠前大弥21歳。一人暮らし。
高校を卒業して直ぐに就職をした、そんなに珍しくもない3年目社会人。
そんな俺は会社で課せられた業務をこなす日々をただ繰り返すばかりだ。
うちの会社は特に残業を強要したりしないため、業務を終わらせてしまえば定時で帰ろうが何を言われることも無い。
だから俺は残業をしたくないが一心に毎日業務を時間内に終わらせ定時に帰る。
今日も変わらず業務を終わらせ、デスクの上を片付け荷物をまとめる。
「お疲れ様でした。お先に失礼します」
「うっーす。おつかれしたー」
「おつかれー」
いつもと同じ挨拶を済ませる。気だるそうな声、ハキハキとした声、皆それぞれ。
オフィスを後にし、駐車場へと向かう。赤の軽自動車。それが俺の車。親から譲り受けた車だ。家から会社まで通勤するのには自転車だと時間がかかるし、かといって電車やバスで行こうとすると逆に遠回りになってしまう。
そういった面でもこいつは俺にとっては毎日通勤するのに欠かせない相棒だ。
鍵を回しエンジンをかける。その後は好きな音楽を流しながら車を運転し、車を走らせる。
車を走らせること20分。8階建てのマンションに到着。これが俺の住んでるマンションだ。
このマンションは会社側が独身社員に対して寮代わりとして用意しているものの一つだ。
この制度が導入されたのは最近のことらしく、このマンションに住んでいるうちの社員は俺だけ。
もし、他に住んでいる先輩とかいたら行き帰りの脚代わりにされるのは間違いないだろう。
そうなっては社内だけじゃなく、車内の中でも気を使わないといけなくなるのでそこら辺はほっとしている。洒落じゃないからな。
車を駐車場に停めた後、家に帰れば玄関を開け、まずリビングのソファーに座りひと休憩。
正直、この時間が一番幸せだとさえ思える。誰にも邪魔されることも無く自分だけの世界に入れる。
まぁ、そこまでは一人暮らしの人と大して変わりはしない日常だ。
そう、ここまではな。
そろそろ他の人とは少し違うかもしれない日常が始まる。
ガチャ
玄関の鍵が開く音が静かな部屋に響く。
来た。
そしてリビングの扉が開きその人物の第一声。
「大弥ぁ…フラれたぁ…!!」
やっぱりな。来ると思った。てか、第一声がそれかよ。
リビングの扉から顔を出し、そのままソファーにダイブしてくる女性。
それをヒラリと交わしながら俺はソファーから立ち上がる。
こいつは桜田葉月。
ショートカットに少し気の強そうな顔立ち。
彼女は小中高と同じ学校で高校1年の時に同じクラスになってからというもののつるむようになった腐れ縁だ。
失恋の度……というかしょっちゅう……いや、ほぼ毎日と言っても過言ではないほどに俺の家に来ては入り浸る女。
今日も、仕事中にメッセージアプリに『酒』とだけ送られて来て何となく察してしまった自分が悲しい。
こいつはこれまでも数人の男と付き合ってきたが、そういう事をする前にだいたいすぐに別れてくる。
理由は明確。こいつが俺の家に来るから。
男側からすればこの時点で面白いものではない。
それだけでは無い。彼氏との会話にも高確率で俺の名前が上がるらしい。
そりゃあ振られて当然。
かく言う俺も女性と付き合った回数なんてほんの数えれる程度だし直ぐに別れてしまっているが。
「んで?別れた理由は?…まぁ聞かなくてもわかるが…」
「私がアンタの家に来るのが気に入らないって……別にそういう関係じゃないしただの友達だって言っても聞いてくれなくて…」
いつもと同じだ。容姿とスタイルはそれなりにいい。が、どこか男勝りな所がありガサツな性格。しかも、相当な頻度で俺の家に入り浸る始末。
『一々開けてもらうのも面倒だから合鍵貰っていくね』と俺の家の合鍵も持って行ったため、それからというものの俺が仕事から帰ると既に家に居ることもしばしば。
そして、彼氏に振られた時は決まって俺の家に来る。
「そうだと思った。お前何回目だよ…」
「高校卒業して3回目……」
容姿はそれなりにいいもんだから言い寄ってくる男もそれなりにいる。
最早、その男たちが可哀想である。
「まったくさ……そろそろ俺からも卒業しなくていいのか?」
「そんな事したら誰に愚痴を聞いてもらえばいいのよ」
愚痴を言う為だけに俺んとこ来てんのかよ…確かに会話の半分近くが愚痴だが…。
「園崎さんがいるだろ」
園崎さん。彼女は渚の親友であり俺とも高校も一緒だ。
「あの子は純粋なのよ。愚痴で穢したくないわ」
俺は穢れてもいいってか…。
そうこうしてるうちに、渚はすくっと立ち上がりキッチンの方に向かっていく。
そして冷蔵庫から買いだめしておいたビールを取り出してくる。
「考えたって仕方ない。さぁ、今日はパァーっと飲むわよ!」
「今日はじゃなくて今日もだろ」
家に来ては俺が買っておいた酒の半分はコイツが持っていく。まだ飯すら食っていないというのに。
全く困ったやつだ。…けど、どこかほっとけないのも事実。
「細かい事は言わない!さぁ飲むわよ!」
「飲みすぎんなよ」
というかもう、缶開けてるし…俺飯どころか……風呂にも入ってないんだけどなぁ…。
そう思いながらも、冷蔵庫からつまみになりそうなものを取りだし机に並べる。
〜3時間後〜
「でさぁ〜アイツがねぇ…」
かれこれ3時間近くコイツの愚痴話に付き合わされている。
もう完全に出来上がってしまっているわけだ。
「ちょっろぉ…ひろやぁ…きいてるろぉ?」
「聞いてる。聞いてる」
机の上には缶ビールが7本。その内4本が葉月の飲んだものだ。決して酒に弱い訳では無いのだが、ご覧の通り呂律が回りきっていない。いっつも1人で馬鹿みたいに飲んで潰れる。俺の酒で。
「でもなんやかんや言ってアンタと居るろきのろうが楽しいのよれぇ…」
そう言いながらはにかむ。酒が回って頬が高揚しているのを含めたとしても、見蕩れてしまうような笑顔。
この笑顔を数年と見てきたが、どこか落ち着く。
「そろそろもういい時間なんだし、シャワーでも浴びて寝ろよ。どうせもう泊まりは決まってるようなもんなんだし」
「しゃわーはあしたのあさでいいわぁ……どーせあしたはやすみなんだしぃ…」
言葉にも完全に力が入っておらずぐでーっと机につっ伏す。
金、土もしくは祝日前にこいつが来た時は泊まってくのも最早お約束。
それをいいことに自分用のシャンプー、トリートメント歯ブラシもこの家に置いている。流石に着替えは置いていないがその内持ってきそうで怖い。
はたから見たら半分同棲してるようなもんだ。
ほんの数秒後、葉月が静かになっていた。これはもしやと葉月の方に目をやる。するとそこには気持ちよさそうに寝息をたてながら机で眠っている姿が。
「やれやれ……こんな所で寝てると風邪引くぞ」
「んぅー…すぅ…」
わかってはいたが起きない。まったく…コイツの介抱も大変だ。だが、これもまたいつもの事なので慣れてはしまったが。
「よっこいしょっと」
このままここでねかせるわけにもいかないので寝てしまっている葉月を机から引きずり出して、寝室までおぶる。そのままベッドにそっと寝かせ毛布を被せてやる。
こんなに無防備なら襲われても仕方ないんじゃないかと思ってしまうが、コイツが俺を信頼してくれてる証拠でもある。
ほんと黙ってりゃそこそこ可愛い女の子なんだけどなぁ…。
「さて…俺もシャワー浴びるか」
葉月を起こさないように静かに収納から寝巻き代わりのジャージを取り出し風呂場へと足を進める。
ーー
酒くせぇ……
シャワーを浴び終えリビングに戻ると、アルコール臭が鼻をつまむ。
こりゃあ片付けないと落ち着いて寝れそうにないな……。
俺のベッドは葉月が占領してる為、俺はソファーで寝ることを余儀なくされるわけだが酒臭い中寝るのは気が引けてしまう。
寝ている渚をわざわざ起こして片付けさせるわけにもいかず、空き缶つまみの袋などを分別しそれぞれのゴミ箱へ放り込む。
本音を言えば叩き起して片付けさせたい気持ちはある。
が、酔って寝ているアイツは朝まで起きないのもわかっている。だから起こそうとするだけ無駄。
とりあえず机上を片付け終え時計を見ると既に0時を指していた。
俺も明日は仕事は休みなので時間を気にせず寝ることができる。
休みとは言いつつも、葉月が起きた所で家に帰るのかどうかは怪しい。
つまり、そのまままた家に居座る可能性もゼロではない。
あぁ…俺の休み……。
とはいいつつも恐らく葉月が起きてくるのは俺よりもあとになる。
アイツが起きて来る前には朝飯を準備しといてやろう。
朝起きてから朝飯何を作るか考えるのも面倒だ。だったら今のうちに決めとこう。
ある程度の材料は買いだめしてあるから冷蔵にあるもので済ませれるはずだ。
「さて…冷蔵庫の中はと……」
朝飯に使えそうなのは…卵…納豆……それに味噌としじみか。
米は冷凍してあるのがあるからそれを使うとしよう。となれば、卵焼きと二日酔いに良いと聞くしじみの味噌汁にでもするか。
さて…朝飯も決まった事だしぼちぼち寝るとしますかね。
そういや毛布出してねぇや。
毛布を出し忘れたのを思い出し、寝室のクローゼットから予備の毛布を取りだしてソファーまで運ぶ。
ソファーに寝っ転がって毛布をかぶり目を閉じると徐々に眠気が襲ってくる。
とりあえず明日は葉月に振り回されないことだけを祈ろう………
暇な時に気が向いたらぼちぼち書いてるので投稿頻度は遅めかもしれません。
やれる限り続けていこうとは思いますのでよろしくお願いします