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相沢優香と行くカラオケ④

渋々端末を操作して俺が歌えそうな歌を探す。俺のカラオケレパートリーなんて10割アニソンかアイドルソングだから、友達と一緒の時は持ち歌がないに等しい。オタクの友達がいるならアニソンでもいいかもしれないけど、俺にはいない。


あと、アニソンだとバレない曲を選んでも映像がアニメだったというトラップもある。中学の頃、とカラオケに来たときそのトラップに嵌まってしまい、「お前このアニメ好きなん?」と友達に聞かれたことがあった。


コテコテの萌えキャラが映ってるアニメ映像を前に、俺は「・・・これアニソンだったんだー知らなかったー」としらを切る他なかった。カラオケとはまさに陰キャを殺す罠だと言える。




「ねえ、まだ~?」


「ごめん、もうちょっと待って・・・」


 


アニソンを歌うのは気が引けるけど、相沢はオタクだし、あまり気にしなくてもいいのかな。だとしたら、部屋でよく口ずさむ、子供の頃に見てたアニメの主題歌を歌おう。『とっとこかいけつ!ゾロ太郎』。キツネとハムスターを足して2で割ったような動物と人間の子供が絆を深めていくアニメである。放送開始から20年近く経った今でも人気の歌で、アニソンランキングでは常に上位だ。




「あ、これゾロ太郎のオープニングじゃん」


「相沢も知ってたんだ。これ俺らが生まれたくらいにやってたアニメだし、知らないかと思ってた」


「お兄ちゃんが見てたからね。あたしも一緒に見て、おもちゃとか買って貰ってたの」


「お兄さんいるんだ」


「うん。今は社会人で、アニメは全然見ていない」




そう言った相沢さんの顔は、少し寂しそうだった。彼女のアニメ好きは、兄と一緒にテレビを見ていたのが原点なのかもしれない。




「・・・あ!歌、始まってるよ!」


「やべっ!・・・とっとこ解決!ゾロ太郎!」




結局、料理が来るまでお互いもう一曲ずつ歌って、凄い盛り上がった。今日まで、カラオケに苦手意識を持ってたけど、今日でその苦手意識はなくなった。




・・・そうか。俺はカラオケそのものが嫌いなんじゃなくて、好きな歌が歌えない空気が苦手だったんだ。相沢のおかげで、その事実に気付くことができた。時には、苦手なものをそのままにせず、挑戦して気付かされることがある。視野の狭い俺にとって、それはとても大事な発見だった。

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