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マジックファンタジー  作者: ごあごあ
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旅立ちの朝

 この日。この朝。そう、この日のこの朝をずっと待ってた! ニワトリが鳴くより早く、俺はくーって叫んだ。

 

 親がびっくりして起きて怒りに来るって?

大丈夫、親も親でこの日が待ち遠しくてどうやら寝れなかったようだ。もうすでに朝ご飯の匂いが漂っているから。

 

 一体全体今日が何の日かというと、今日は俺の15才の誕生日。この村では子供が15才になると、魔法の道具が一つ渡されると共に冒険に出ることが許されるのだ。

 

 魔法の道具は自分で選ぶ。けど、それがどんな効果かは選んだ後に分かるのだ。なぜ、能力が選んだ後に言われるかはなぞだ。しかし、やっぱり、自分がどんな道具をゲット出来るか楽しみで楽しみで仕方ない。

 

 え、道具なんか何個もゲットしたら良い? いえいえ、この道具はとっても貴重でね、そんな1人が数個も持てるものじゃないのですよ。だから、当然この魔法の道具を盗んで売ろうとする盗人達もこの世にはたくさんいるのだ。

 

 冒険の目的? うん、それはね、色んな薬草や、魔法の道具を作るためのレア鉱石、魔獣のツノや爪、そしてなんといっても、神々の魔石を集めることだ。

 

 この神々の魔石というのがどうやらすごいらしく、全世界に12個しかないらしい。これを持ってると凄い能力が使えるようになるとか、魔法の道具を何個も作れる魔力があるなどの噂から女の子にめっちゃモテるなど、それ関係あるのか? みたいな噂までたくさんの噂があるが、なにせ、所持者が少ないため、正確な情報が分かってないそうだ。まあ、冒険する目的はざっとこんな感じだ。親がせっかく朝ご飯作ってくれているのは申し訳ないが、今はそんなどころじゃない。行ってきまーすという声と共に家を飛び出して、魔法の道具が貰える所までダッシュした。


「失礼します、今日、魔法の道具が貰える予定の朱雀聖也です」


あれ、誰からも返事がないなと思っていると、うっ……という低い声が聞こえてきた。声の発信源へ駆けつけるとそこには館長が倒れていた。


「どうしたのですか? 大丈夫ですか?」

「まずいことになった……魔法の道具が全て盗賊によって盗まれてしもうた……」

「えっ、は、早く取り返しに行かないと!」

「今、わしの部下が追っている。わしは魔法の道具が返って来ることを願うばかりじゃ」

「俺にも、行かせて下さい! 絶対、力になります!」

「といわれてものぉ、朱雀君に渡せる魔法の道具がないしのぉ……いや、そういえば、一つランク調査中で盗まれてない道具があったかのぉ……」

「ランク調査?」

「おっと、これは道具を選び終わってから言うことなのじゃが、魔法の道具にはランクというものがあるのじゃ。ランクはEX,SS,S,A,B,C,Dがある。もっとも、天然の状態ではEXは存在せん。極レアなアイテムを使って、天然でSSかSの道具を加工したとき、とても低確率でEXになれるのじゃ。SS以外の道具はアイテムを使うことによってランクが最大2つまで上がるのじゃ。だから、天然のランクAはSSにまでなれる。そして、なぜ選ばさせるかというと、魔法の道具を使う者は大切な時に、運でも良いから最高の選択をする必要があるからじゃ。そのために、魔法の道具を選ばさせているのじゃ」

「なるほど。では、ランク調査中の魔法の道具で良いから俺に下さい! 絶対に魔法の道具を取り返してきます!」

「うむ、仕方あるまい。君にあの道具を託そう。能力だけは調査済みじゃ。あの道具の能力は電気に関するものじゃ」


 俺は館長を支えながら、道具のある所まで歩いた。

館長がちょっと待ってろというので、部屋の外で待つこと3分、館長が剣の形をしたアイテムを持ってきた。


「これがその道具じゃ。最後に確認じゃが、本当に盗賊と戦いに行くのかね?危険じゃぞ?」

「はい。子供の夢の象徴である魔法の道具を盗むなんて許せません!」

「よろしい、ここが今、わしの部下と盗賊が戦っている場所じゃ。この場所に向かうと良い」

「ありがとうございます!」


 館長の言われたところに行くと、そこには戦う人々の姿があった。そして、俺がいつも仲良くしてもらってる田中おじさんの姿もあった。田中おじさんは無愛想なためみんなから嫌われているが、良い人だってことを俺は知っている。田中おじさんは冒険中に一緒に冒険してた仲間を失ったショックで村に戻って来て、冒険者をやめ、研究員になったそうだ。おじさんはよく冒険の話をしてくれる。おじさんの話はとても面白く、話を聞くたびに冒険心がくすぐられた。


「おじさん!」とおじさんに呼びかけた。

「バカやろう!なんでここに来たんだ!?」

「助けになるかと思って来ました」

「何を言ってるんだ、お前みたいな未熟者が来るところじゃない。相手はこの辺りを牛耳ってる盗賊団コブラだぞ。お前なんて足手まといにしかならん!」


 大丈夫、もう15才だと言おうとしたとき、俺のほうに石が飛んできた。俺はとっさに避けた。


「ほら、言わんこっちゃない。とりあえず、危ないから俺のそばに来い!」


 言われた通り、おじさんのそばに向かった。


「お前、魔法の道具の使い方を知ってるか?」

「あっ、知らないです」


 そういえば、魔法の道具の詳しい使い方を聞いたことがなかった。


「ったく。この道具を使ったらどうなるかイメージするんだ。お前の道具は剣だろ。イメージしながら剣をふれ!」


 すーっと深呼吸をし、俺は電気が相手を襲うイメージをして、近くにいる盗賊に向かって剣を振った。

「サンダー!」


 すると、剣から物凄い量の電気が放出されて、相手を襲った。相手は寸分の差で俺の攻撃を避けた。横でおじさんが驚いた顔をしている。


「なんて量の電気だ。お前の道具は相当強いに違いねぇ」


 その言葉を聞いて、少し嬉しくなり剣を見入った。そのすきに敵が移動した。


 顔を上げた時には、さっき敵がいたところを見ても敵がいない。敵はどこかと辺りを見渡した時だった。

 

 横からぼわって音が聞こえた。突然のことで判断が遅れた。さっきの敵が炎を放ったようだ。

 

 だめだ。この量の炎をくらえば確実に死ぬ……焦りにより思考が色々交差し、体が固まる。剣を振ろうとするも、もう間に合わない。


 その時だ。おじさんがさっと飛び出して、俺を庇ったのは。


「おじさんっ!」


 おじさんは倒れた。俺はおじさんの元にしゃがみ込む。


「おじさんっ…本当にごめんなさい…俺のせいで…」

「言うな。ごめんなんて。俺が好きでやったことだ。誕生日のやつが誕生日に死んで良いはずがねぇ。それに……」


 おじさんはごほっごぼっとむせた。俺がおじさんっと言おうとした言葉を遮って、おじさんは続けた。


「それに、俺はもう二度と見たくないんだ…… ダチがそばで死んでいくのを……」


 おじさんはポケットから何かを取り出し、俺に渡した。


「15才の誕生日おめでとう」


「おじさん……」


「これはユニコーンのツノ。神々の魔石を除けば、最高レアの素材だ。これを使ってお前の剣を強化してくれ。そして、俺が見れなかった世界を…お前の剣に俺を乗せて、お前が見…」


 また、ごほこぼとむせるのを最後におじさんはもう喋らなくなった。


「おじさん!!」


 涙が溢れて止まらなかった。そして、敵に対する怒りが心を占めた。


 炎を放った敵を探す。あの敵がすぐに近くで戦っているのを見つけた。


 「お前だな…… おじさんを殺したのは…… お前なんか、死んじまえ!  サンダー!」


 相手は不意をつかれて少し動揺はしたが、俺の攻撃をすんなり避ける。


 「なんだ、死んでなかったのか。お前が非力だっただけだろ。そのジジイが死んだのは」


 相手は気味悪く笑い、そう言い、炎を俺に向けて放とうとする。


 ヤバイ。このままだと俺も死ぬと思った時だ。


「撤退! 隊長がやられた!」


 どうやら、味方が敵の隊長を倒したようだ。炎使い野郎はちっという舌打ちとともに撤退していった。

 

 俺は間一髪で無事生き残ったもののおじさんが死んだ悲しみと疲労でその場に倒れてしまった。


 意識が戻ると横に館長がいた。館長は俺が起きると、気がついたようじゃなと言った。


「あの、俺のせいで…… おじさんが……」

「お前さんを止めなかったわしにも責任がある…… 今は少し休憩するがいい」

「はい……」

 消え入るような声で俺はそう言った。

「そうじゃ、こんな時になのじゃが、お前さんの剣のランクの測定が終わった」

「え……あっ、はい……それでランクは何なのですか?」

「驚くがいい。SSランクじゃ。わしもここ何年も天然のSSの道具は見て来なかった。お前さんの道具はとてもレアなものじゃ」

「そうですか……」


 俺はおじさんが死んだショックのため素直に喜べなかった。


 こうして、15才の誕生日は終わった。


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